【Climate Curation 2025年の振り返り】政策は後退、技術は加速──「分断と加速の同時進行」で読み解く気候変動の1年

本年最終号となりました。いつもお読みいただきありがとうございます。カバー画像は過去配信分をもとに作成した年次インフォグラフィックです。2025年もどうぞよろしくお願いいたします(来年は1月10日から配信再開予定です)。
市川裕康 2025.12.27
誰でも

こんにちは。新しく登録してくださった皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで740名以上、Linkedinニュースレターでは1,120名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。*英語版Japan Climate Curationは毎週水曜日配信です。併せてご覧ください。

本号をもって2025年の配信は最後となります。一年間ご愛読いただき、心より感謝申し上げます。どうぞよい年末年始をお過ごしください。年明けは2026年1月10日(土)に配信再開を予定しています。

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数分で終わる簡単なアンケートを作成しました。ご協力いただけたらありがたく思います🙇

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*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #184】も併せてぜひご覧ください。

image credit: NotebookLM

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*免責事項:要約、翻訳、編集の際にChatGPT、Claude、Gemini、NotebookLMなどの生成AIツールを使用しています🙂

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【⭐📰👀 Climate Curation 2025年 振り返り&まとめ】

📊 年間概要

配信実績:50回(今回で50本目となります)

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🎯 2025年を象徴する5つのキーワード

1️⃣ トランプ政権の気候政策撤回

年初のパリ協定離脱表明に始まり、EPA気候規制撤回、今後10年のクリーンエネルギー488億ドル予算削減、「気候詐欺」発言まで、米国の気候政策は大きく後退しました。これに連動して金融機関のNZBA(ネットゼロ・バンキング・アライアンス)脱退も加速し、三井住友FG、三菱UFJなど日本のメガバンクも離脱を決定。

2️⃣ 中国クリーンテック覇権の確立

2025年は中国の圧倒的優位が数字で証明された年となりました。「競争相手なし」という表現が繰り返し登場し、西側諸国との技術格差が鮮明になりました。

  • 太陽光パネル:世界シェア 90%

  • 洋上風力:新規設置の 75%

  • クリーンテック産業:GDP比 10% に到達

  • EV攻勢:1,430億ドル 規模

  • CO2排出量:初の減少転換

3️⃣ 1.5度突破の現実化

「1.5度突破まで3年」「2度上昇が現実味」「オーバーシュート時代」など、パリ協定の目標達成が事実上困難になったことが繰り返し報じられました。日本でも観測史上最高の41.8度を記録し、気象庁が「温暖化なしには起こり得ない」と断言する事態に。異常気象、LA山火事、海流変動リスクなど、気候危機が「日常」になりつつあります。

4️⃣ 気候テック投資の大転換

「冬の時代」とも言われた気候テック業界ですが、10月には2025年1~9月の気候テック投資が560億ドル(約8.7兆円)に達し、2024年通年の510億ドルを上回ったとBloombergが報じました。政策の後退とは裏腹に、民間投資は継続・拡大。特に核融合(2035年実証目標)、地熱(1兆ドル市場)、宇宙太陽光、DAC(直接空気回収)などの次世代技術に注目が集まりました。

5️⃣ AI電力需要の爆発

DeepSeekショック、ChatGPT-5リリースなど、AI技術の急速な進化に伴い、データセンターの電力需要が世界的課題として浮上。「2050年電力危機」「8年待ち」といった深刻な状況が報じられ、エネルギー政策とAI政策の交差点が新たな論点となりました。

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📅 月別ハイライト

🌅 第1四半期(1〜3月):激動の幕開け

1月

2月

3月

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🌸 第2四半期(4〜6月):政策と技術の綱引き

4月

5月

6月

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🌻 第3四半期(7〜9月):猛暑と政策転換

7月

8月

9月

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🍂 第4四半期(10〜12月):COP30と新たな展望

10月

11月

12月

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🔍 2025年の特徴的な視点

「分断」と「加速」の同時進行

2025年は、気候変動をめぐる世界が二つの異なる方向に動いた年と言えそうです。

🔻 政策の後退

  • トランプ政権の気候規制撤回

  • 金融機関の脱炭素枠組み離脱

  • 国際協調の困難

  • 気候に関する偽情報の増加

🔺 技術・市場の加速

  • 再エネが石炭を逆転

  • 560億ドルの気候テック投資

  • 中国のクリーンテック覇権確立

  • 次世代技術(核融合・地熱・宇宙太陽光)への期待

「自分ごと化」のトレンド

欧州で急速に広がるプラグイン(バルコニー)・ソーラーパネル、「マイクロGX」「ネットゼロ・ダッド」「セコDGs」など、個人レベルでの気候変動対策への関心が高まった一方、日本人の気候変動対策意識は32カ国中最下位との調査結果も。危機を訴えるアプローチから、電気代高騰など身近な問題を訴求する手法へのシフトも見られました。

「オーバーシュート時代」への突入

1.5度目標の達成が事実上困難となり、「オーバーシュート」(一時的に目標を超えた後に戻す)という新たな概念が登場。これに伴い、気候工学(ジオエンジニアリング)への関心の高まりも見られました。

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📚 2025年に取り上げた主要トピック(回数順)

📰出典媒体内訳

🌐 海外クオリティペーパー(213件・39.2%)

主な媒体: Financial Times, New York Times, Bloomberg, The Economist, The Guardian, Reuters, BBC, Wall Street Journal

Climate Curationニュースレターでは、英語圏の主要メディアを中心に意識的にピックアップしています。特にFinancial Timesは単独で54回と最多を記録。ESG投資、気候金融、政策動向など経済的視点からの深い報道が多い印象です。

🇯🇵 日本メディア(138件・25.4%)

主な媒体: 日本経済新聞, 朝日新聞, NHK, 毎日新聞, 日経GX, 東洋経済オンライン

日本の国内政策、企業動向、エネルギー基本計画など、国内読者に直結する情報源としてピックアップしています。Climate Curationは海外の記事を中心にピックアップし、日本の動向は姉妹ニュースレターであるJapan Climate Curationで取り上げています。

🌱 気候専門メディア(43件・7.9%)

主な媒体: Heatmap News, CTVC, Carbon Brief, Latitude Media, Cipher News, Canary Media

専門性の高い気候・エネルギー報道を提供。特にHeatmap News(18回)は2023年創刊の新興メディアながら急成長し、Climate Curationでも重要な情報源になりました。CTVC(Climate Tech VC)は気候テック投資動向の分析で存在感を示しています。

🏛️ 政府機関(14件・2.6%)

主な媒体: 経済産業省, 環境省, White House, IEA

政策発表、公式統計、国際機関レポートなど一次情報として引用。GX政策、エネルギー基本計画など日本政府の動向は折に触れてピックアップしています。

🔬 シンクタンク・非営利団体(22件・4.0%)

主な媒体: 自然エネルギー財団, 気候ネットワーク, World Economic Forum, Media is Hope, Climate Integrate

研究報告、政策提言、イベントレポートなど専門的な分析を提供。日本の気候変動関連団体の発信も意識的に取り上げるよう心がけています。

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💡 2026年の注目ポイント

2025年の報道から見えてくる2026年の注目ポイント:

  • 中国 vs 西側のクリーンテック競争:技術格差はさらに拡大するか、巻き返しはあるか

  • トランプ政権の気候政策:「ピーク・トランプ」の兆しも報じられたが、実際の影響は

  • 次世代エネルギー技術:核融合・地熱・宇宙太陽光の進展

  • 日本のGX戦略:排出量取引本格化、原発・再エネのバランス

  • AI電力需要:データセンターとエネルギー政策の調和

  • 気候情報戦:偽情報対策と効果的なコミュニケーション

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📝 編集後記

以上、今回は2025年のClimate Curationのバックナンバーを振り返りながら注目トピック、出典媒体、2026年の注目ポイントなどをご紹介してみました。いかがでしたでしょうか?

2025年を振り返ると気候変動・脱炭素・エネルギー・気候テックを巡る動向・トレンドは目まぐるしい変化に溢れる1年だったことを強く感じます。一方でニュースレターの配信・編集という意味では「生成AI」の登場により大きな変化がもたらされつつあることを実感しています。音声概要、インフォグラフィック、要約・翻訳などが簡単にできるようになり、効率化された点には本当に驚かされます。一方で自分の頭で考え、自分なりの視点やことばをもっと大切にしなければ、と反省することもあります。

来年も不確実なことが多そうな1年ですが、引き続き毎週、試行錯誤を継続していきたいと思います。よろしければぜひお付き合いください。ニュースレターをお読みいただき、ありがとうございました。よい年末年始をお迎えください。年明けは2026年1月10日(土)に配信再開を予定しています。

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数分で終わる簡単なアンケートを作成しました。ご協力いただけたらありがたく思います🙇

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  • ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XやLinkedInなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

  • 気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

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では、よい年末年始をお過ごしください🙂🙋

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