2030年代エネルギー戦略 - 環境白書、核融合実証から洋上風力EEZ拡大まで

政府が2030年代の核融合実証を国家戦略に位置づけ、洋上風力ではEEZ活用で海域が大幅拡大するなど、脱炭素へ官民挙げた取り組みが進んでいます。
市川裕康 2025.06.07
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation #155」の概要

  • 政府は2024年に30件の職場での死亡事故を受けて、50万円の罰金を伴う新たな熱中症対策法を施行し、同時に600億円の気候技術スタートアップ支援プログラムを開始した。しかし、中国が主要分野を支配している状況にある。中国は2021年以来最大のLNG輸入国となり、BYDが日本の180億ドル規模の軽自動車市場をターゲットにしている。また中国の自動車メーカーがタイ市場でのシェアを24%に倍増させる一方、日本ブランドは90%から65%に落ち込んだ。日本は77GWの潜在能力と10倍の容量改善を約束する地熱技術革新で対応しているが、それでも外国企業が蓄電池市場の半分以上を支配している。ガス業界は2050年目標を90%から50-90%のe-メタンに現実的に調整した。一方で、日本のEV普及率が1%にもかかわらず、7,000ドルの一人乗りEVが2,250件の予約を獲得している。

*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂

***
  • 令和6年版環境白書は、気候変動、生物多様性の損失、汚染という「3つの世界的危機」に対し、経済社会システム全体を変革する必要性を強調。その処方箋として「炭素中立(ネット・ゼロ)」「循環経済(サーキュラーエコノミー)」「自然再興(ネイチャーポジティブ)」を統合的に推進する「循環共生型社会」の構築を掲げた。ビジネス分野では、GX(グリーントランスフォーメーション)やESG金融を通じて環境価値を経済成長につなげる「新たな成長」を志向している。

  • 🎧音声概要 [7:14]:

  • 政府は4日、核融合発電の国家戦略を改定し、「世界に先駆けた2030年代の実証」を明記した。石破首相は官民の研究開発力強化とイノベーション拠点整備を表明。内閣府にタスクフォース設置し、法制度・予算・人材育成の課題を包括的に検討する。AI普及に伴う電力需要拡大で実用化の必要性が高まる中、米中が30年代実証を目指すなか日本の開発競争での優位確保を狙う。

  • 核融合スタートアップのEX-Fusionが約26億円を調達し、企業価値が121億円から161億円に上昇した。同社はレーザー方式で2030年に発電実証、2040年頃の商用化を目指す。国内核融合新興4社の企業価値は合計1000億円超に達し、世界全体では2024年に累計71億ドルの資金調達を記録。政府が2030年代の発電実証を国家戦略に位置づける中、投資マネーの流入が活発化している。

  • 日本の排他的経済水域(EEZ)内での洋上風力発電設備設置を可能にする改正法が6月3日に成立。これまで領海内に限られていた設置海域が大幅に拡大される。国が風況や海底地盤などの条件が適した区域を指定し、事業者の計画案提出を求める仕組み。英国の2段階方式を参考に、仮許可後に利害関係者との調整を経て最終許可を行う。世界第6位の面積を誇る日本のEEZを活用し、浮体式洋上風力の大規模展開が期待される。

  • 電力需要管理がついに脚光を浴びている。AI・データセンターの急成長により電力需要が急増する中、従来の大型発電所建設は規制やコスト面で困難に。そこで注目されるのがVirtual Power Plants(仮想発電所)だ。電気自動車、太陽光パネル、蓄電池などの分散型エネルギー資源を統合管理し、ピーク需要時の電力供給を支援する。市場規模は2025年の350億ドルから2035年には1270億ドルへ成長予想。Con Edisonは12億ドルの設備投資を2億ドルの分散型資源で代替した事例もある。

  • 英国政府が炭素取引制度の大幅見直しを検討している。現在は企業がCO₂を排出すると罰金のような費用を払う仕組みだが、新制度では大気中のCO₂を除去した企業にクレジットを発行し、排出企業がそれを購入できるようになる。つまり「減らす」のではなく「取り除く」ことでもペナルティを相殺できる仕組み。しかし専門家は「企業が排出削減の努力をやめてしまう危険性がある」と懸念している。

  • 三菱商事などが次世代地熱発電開発に参入。従来の1000-1500mより深い地下2000m超の地層から熱回収し、温泉地以外でも開発可能に。米クエイズ・エナジーはミリ波技術で3000-2万mの掘削を実現、1本の井戸で従来の最大10倍の発電能力を実現。東洋エンジニアリングもインドネシアでクローズドループ方式を実証予定。AI向けデータセンター需要拡大で安定電源としての期待が高まっている。

  • ネパールは世界で最も急成長するEV市場の一つとなっている。新車販売におけるEVの割合は65%で、これは米国の9%を大きく上回る。2021年7月の政府によるEV輸入関税・物品税の大幅削減が主な要因で、3輪車の採用率は1%未満から83%まで急上昇した。ネパールでは燃料が高価なため、EVの運用コストは従来車の10分の1以下となる。水力発電主体のため充電もクリーンで、2030年までに私用車のEV採用率90%を目指している。

  • 中国BYDが2026年後半、日本の軽自動車市場に参入予定。年間180億ドル規模で日本車市場の約40%を占める同分野で、トヨタ・ホンダ・日産の長年の支配に挑戦。低コスト軽EV投入により、現在290万円のドルフィンより安価な価格設定を目指す。日本での外国ブランドシェアは6%未満で、消費者の国産志向や中国ブランドへの不信が課題。年間15,000台販売を目標とし、店舗数を現在の61から100に拡大予定。

  • 職場での熱中症対策が6月1日から企業に義務化された。2024年の職場熱中症死傷者は過去最多の1257人、死亡者31人という深刻な状況を受けた措置。企業は連絡体制整備、医療機関搬送手順策定、職場周知が必要で、違反すれば6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。対象は暑さ指数28以上または気温31度以上の環境での長時間作業。帝国データバンク調査では、義務化された報告体制構築は15.2%、緊急連絡先周知は13%の企業にとどまり、対策強化が急務。

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【イベント登壇・参加のお知らせ】

  • 6月11日(水)FDSF PEST Conference 2025~政治・経済・社会・テクノロジーの国際情勢を踏まえたサステナブルファイナンスの現状と展望~』(主催:一般社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブ / 協力:Archetype Ventures)にモデレーターとして登壇の機会をいただきました。*いよいよ来週開催です。当日参加される方はぜひお声掛けいただけたら嬉しく思います。 / 詳細・お申込(無料):https://fdsf.jp/conference/2025

  • 6月20日(金)18:30 - 20:30 / 開催場所:STATION Ai『【GX】共創から生まれる未来の脱炭素経営 / 愛知県STATION Ai開催!』(主催:CIC Tokyo環境エネルギーイノベーションコミュニティ )/ 詳細・お申込(無料):https://decarbonizing-management.peatix.com/

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  • ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋

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