Vol.198「ネットゼロは死んだ」、EU炭素価格は急落――それでも蓄電池コストは27%減、Googleは20年分の再エネを契約

「ネットゼロは死んだ」という見出しが飛び交う一方、蓄電池コストは27%急落し、Googleは20年分の再エネを契約する——見出しと実態が真逆を示す複雑な状況を、今週も改めて実感しました。少しでも参考にしていただければ幸いです:)
市川裕康 2026.02.28
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⭐📰 今週のニュース・トピックス】

  • 🛢 米国は「産油国」になりつつある [FT]

  • 📉 「ネットゼロ」は死んだ [Bloomberg]

  • 🇪🇺 EU炭素価格が急落 [S&P Global]

  • 🌱 世界のクリーンエネルギー転換は止まっていない [NYT]

  • ☀ 米国2026年の新規電力容量の9割超がクリーンエネルギーに [Canary Media]

  • ⚖ 米最高裁の関税無効判決 [Bloomberg]

  • 米エネルギー省、原子力拡大計画 [Heatmap]

  • ⚡ Google、AIデータセンター向けに20年分のクリーン電力 [Heatmap]

  • 🔋 大型蓄電池コスト急落 [Bloomberg]

  • 中国の再エネ世界シェア [PIVOT]

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👉*先週号『Vol.197:規制の法的根拠が消えても排出量は下がる―共和党支持者47%が反発、IEA圧力・最高裁・変圧器企業1.4億ドル調達が示す脱炭素の新局面』[2026/2/21]を見逃した方はこちらから

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  • トランプ政権の気候規制撤廃は、米国経済と公衆衛生に深刻なダメージを与えつつあります。EV税控除の廃止やクリーンエネルギー補助金の撤回により、GMやフォードなど自動車大手3社は合計500億ドルの評価損を計上しました。バッテリー・EV・重要鉱物分野では220億ドルの投資計画が消滅し、製造業雇用は減少しています。クリーンエネルギー製造税控除の廃止だけで200万人以上の雇用が危機にさらされるとの試算もあります。一方、中国が新興国市場に安価な太陽光パネルを供給し続ける中、米国は自らその競争から離脱しつつあります。FTのラナ・フォルーハー氏は、この政策転換が将来的に他国からの報復関税や金融制裁を招くリスクも指摘しています。

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Javier Blas
@JavierBlas
COLUMN: Net zero by 2050 is effectively dead: Oil, natural gas and coal will remain crucial for meeting the world's energy needs.



But that doesn't mean the end of renewable energy. Solar, in particular, is thriving, and will continue to boom.



@Opinion bloomberg.com/opinion/articl…
Net Zero is Dead. Long Live Renewable EnergyIn diplomacy, words matter. When the world’s richest nationswww.bloomberg.com
2026/02/25 17:48
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  • 「ネットゼロ」という概念は事実上の死を迎えつつあります。2024年のG7エネルギー閣僚会合では15回言及されていた「ネットゼロ」という語が、2026年の会合ではわずか1回に激減しました。IEA事務局長ビロル氏も直近の演説で「気候」を2回しか言及せず、「エネルギー安全保障」を8回強調するなど、政策の重心は明確に移っています。現在の世界の石油需要は日量約1億500万バレルと過去最高水準にあり、2030年ネットゼロ目標の達成は不可能な状況です。ただし再生可能エネルギーの成長自体は継続しており、電力が最も成長の速いエネルギー形態として再エネがその増分を担い続けます。ネットゼロの死は脱炭素の終わりではなく、目標設定の現実化を意味しています。

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  • EU排出量取引制度(ETS)の改革を求める加盟国の声が強まり、EU炭素価格(EUA)が1月中旬から20ユーロ超下落し、2月26日時点で約70ユーロまで落ち込んでいます。イタリアは欧州委員会にETSの一時停止を要求し、ドイツ・フランスを含む13カ国が「産業の友」連合として無償割当の段階的廃止延期や輸出企業への支援強化を求める共同声明を発表しました。背景には、脱炭素コストの上昇による欧州産業の競争力低下への懸念があります。欧州委員会は2026年第3四半期にETSの見直しを予定しており、無償割当の扱いや炭素国境調整メカニズム(CBAM)との整合性が焦点となります。「脱炭素によって脱工業化を招いてはならない」との主張が加盟国間で広がっています。

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  • トランプ政権の気候政策撤退やEUの天然ガス輸入増など、脱炭素の政治的機運は世界的に後退しているように見えます。しかし実態は異なります。2024年に世界で新設された電力容量の92.5%が再生可能エネルギーであり、2025年もさらに拡大したとみられています。EVの世界販売は過去10年で約30倍に増加し、中国・EUでは新車の半数以上を占め、1月にノルウェーで販売されたガス車はわずか7台でした。オーストラリアでは再エネの急普及により電気料金が一部地域で3分の1低下し、電力の無償提供を宣言した地域もあります。中国の排出量はピークを越えた可能性があり、インドは中国と同等の経済発展段階において石炭消費量を6分の1に抑えながら転換を加速しています。前UNFCCC事務局長フィゲレスは「気候の政治より気候の経済の方が重要」と指摘しており、安価な太陽光・蓄電池と各国のエネルギー安全保障ニーズが転換を牽引しています。2026年には世界のグリーンエネルギー投資が軍事費を上回る可能性があります。

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Canary Media
@CanaryMediaInc
The U.S. is set to build a lot of power generation this year — and solar is on track to make up half of it.

canarymedia.com/articles/clean…
Chart: US to overwhelmingly build clean power in 2026A federal agency says solar, battery, and wind additions wilwww.canarymedia.com
2026/02/28 03:46
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  • 米エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2026年に米国で新設される電力容量は過去最大の86GWに達する見込みで、そのうち太陽光が51%、蓄電池が28%、風力が14%を占めます。トランプ政権が再エネ規制を強化する中でも、電力セクターはコストの低さや建設スピードを理由にクリーンエネルギーを選び続けています。石炭はゼロ、天然ガスはわずか7%にとどまります。カリフォルニア州では太陽光がまもなくガス発電を抜く見通しです。AIデータセンターの急増する電力需要が太陽光建設をさらに後押ししており、政治的混乱後も米国は数十GWの新規再エネ設備を備えた状態で次のステージを迎えることになります。

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  • 米連邦最高裁が2月20日にトランプ政権の包括関税を違憲と判断し、太陽光パネルや蓄電池の輸入関税が引き下げられました。蓄電池については米国が2025年前半だけで約100億ドルを輸入しており、コスト低下は国内プロジェクト開発者に恩恵をもたらします。ただし風力設備・EV・EV用電池への関税は判決の対象外で据え置かれています。トランプ政権は判決後直ちに新たな15%の包括関税導入を発表(当面10%で発動)し、大規模蓄電池への安全保障関税も検討中です。中国の蓄電池輸出企業は短期的に恩恵を受ける一方、日韓企業は10%関税水準では有利になるものの、15%到達時には優位性が消滅する見通しです。関税政策の流動性は続いており、エネルギー転換への影響は不確実なままです。

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  • 米エネルギー省とウェスティングハウス社が、30年以上ぶりとなる大規模原子炉建設計画に向け、電力会社や開発業者との協議を開始しています。計画では8〜10GWのAP1000型原子炉を一括調達し、コスト削減と建設期間の短縮を目指します。政府・民間の混合資金を活用し、4〜5社のパートナーが各2基を購入する見込みです。トランプ大統領は2030年までに10基の着工、2050年代半ばまでに原子力発電量を現在の約100GWから400GW超へ4倍化する目標を掲げています。1970年代のフランスの集中建設モデルを参考にしており、GEヒタチ(GE Hitachi Nuclear Energy)との協議も並行して進んでいます。

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  • 電力会社AESがGoogleとテキサスの新データセンター向けに20年間の電力購入契約(PPA)を締結しました。AESは発電設備の開発・所有・運営に加え、土地確保と系統接続も一括で担います。同施設は2027年稼働予定で、供給電源の種別は非公表ながら「クリーン」と明言されています。Googleは同日、ミネソタ州の別のデータセンターでもXcel Energyと1.6GWの太陽光・風力および長期蓄電設備(Form Energy製鉄空気電池300MW)の供給契約を発表しており、「自前電源」モデルによるAIインフラ整備を本格化させています。一方、EV大手RivianはEnergyHubと提携し、150以上の電力会社ネットワークを通じてEV充電を仮想発電所(VPP)に統合する取り組みを開始しました。またマイクログリッド企業Scaleは「電源付き土地」スタートアップのReloadを買収し、データセンター向けの系統接続待ち問題を回避する「即時電化可能サイト」事業を強化しています。

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Bloomberg Green
@climate
Battery storage costs fell more than a quarter to a record low last year, improving the economics of projects to pair the equipment with renewables and which can help tackle curtailment of solar and wind bloomberg.com/news/articles/…
Costs of Big Batteries Are Tumbling and Can Boost Clean PowerBattery storage costs fell more than a quarter to a record lwww.bloomberg.com
2026/02/18 23:10
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  • BloombergNEFの最新報告によると、4時間型蓄電池プロジェクトの均等化発電コスト(LCOE)が2025年に前年比27%下落し、78ドル/MWhと過去最低を更新しました。2035年には58ドルまで下落すると予測されています。コスト低下の主因は電池セル価格の下落、設計の改善、競争激化であり、BNEFの当初予測(11%減)を大幅に上回りました。蓄電池は昨年の主要エネルギー技術の中で唯一コスト低下を達成した技術です。定置用蓄電設備の導入量は2026年に33%増の122.5GWに達すると予測され、欧州・中東・アフリカ・中南米が牽引します。コスト低下により太陽光・風力との併設案件の経済性が向上し、化石燃料ピーク電源の代替が加速する見通しです。

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  • 中国は太陽光パネルの製造工程の約7〜8割、蓄電池・EVの約7割、レアアース精錬の9割以上を握り、再エネサプライチェーンを川上から川下まで垂直統合しています。AI開発競争において電力確保が最重要課題となる中、中国は世界最大の再エネ設備と石炭火力の併用で米国より有利な立場にあります。新興国では安価・短納期の中国製再エネへの依存が深まり、デカップリングは非現実的です。一方、中国政府はポリシリコンなどの過剰供給是正に向け、生産調整・輸出許可制などの「3点セット」政策を打ち出しており、世界市場の供給体制に影響を与える見通しです。日本企業はペロブスカイト太陽電池や洋上風力など独自の技術的強みで棲み分けを図る戦略が求められます。

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🎟気になるイベントなどのお知らせ

  • 最高気温が40℃以上の日の名称に関するアンケートについて

気象庁
@JMA_kishou
【報道発表】(R8.2.27)最高気温40℃以上の日の名称について、名称を定めるにあたり、広く国民の皆様からのご意見を募るため、アンケートを実施します。 #いのちとくらしをまもる防災減災

jma.go.jp/jma/press/2602…
最高気温が40℃以上の日の名称に関するアンケートについて | 気象庁descriptionwww.jma.go.jp
2026/02/27 16:01
36766Retweet 78720Likes
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