自分ごと化する気候変動対策:マイクロGXからネットゼロ・ダッドまで

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで770名以上、Linkedinニュースレターでは1,090名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 142」の概要
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日本企業の76%が排出削減目標を達成する見込みで、世界平均の61%を上回る;柏崎刈羽原子力発電所は技術的には準備完了だが知事の承認待ち;専門家は再生可能エネルギーを50%に制限するエネルギー計画を批判;北海道で初のCCS(二酸化炭素回収・貯留)サイトが指定される;海洋温暖化により海藻生産が70%減少;トヨタは静岡県の未来型都市「ウーブン・シティ」の第一段階を完了;生物多様性の喪失がスズメを脅かす;スーパーホテルは全173拠点でネットゼロ排出を達成。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
今週は米トランプ政権の動きや独選挙、大企業、大手金融機関などによる気候変動対策を後退させる報道が相次ぎ、また気候変動の影響がもたらす様々な被害に関するニュースも数多くある中で、どのような記事をピックアップするか逡巡してしまいました(いつもそのような状況ではありますが、特に昨年末からはそう感じる機会が増えています)。
CO2排出量を減らすという主語おの大きな気候変動対策はどうしても国や大企業が主体となり、なかなか自分ごと化することが難しい側面があります。一方で、連日話題となっている生成AI関連の新しいサービス登場のニュースなどは、自分の生活や仕事を少しでも効率化できたり、面白かったりワクワクしたり、興味関心がそちらに流れる気持ちがあることも自覚しています。
そんな思いもあり、今週は自分ごと化できるような視点を持ってニュースをピックアップしてみました。1つのきっかけは現在行われているAmazon スマイルSALEにおいて販売されているポータブル電源が44%の割引で販売されていたことです。2023年末のブラックフライデーセールで購入した同じ商品は当時28%引で売られていたこともあり思い切って購入したことを思い出します。たった1年と3ヶ月の間にここまで価格が低下していることに驚かされました。当時ちょうど放映されていたNHKクローズアップ現代の番組『電気代の不安▼住宅用太陽光パネルで“創エネ”暮らしどうなる?』[2023/10/4]を観て検討の上購入したのですが、ささやかながら再エネ・太陽光を考えるきっかけになりました。
以下の記事では「マイクロGX」「ネットゼロ・ダッド」ということばで表現されていますが、自分ごと化できる解決型の技術、アイディア、サービス、ストーリー、そんな視点をより一層大事にしていきたいと思っています。
【1】「マイクロGX」で地方創生 個人の参加も促す 鈴江崇文・グリーンエナジー&カンパニー社長 [2/25 日本経済新聞]
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グリーンエナジー&カンパニーは、地域や個人が主体となる「マイクロGX」を通じて地方創生と脱炭素を同時に実現する新たなモデルを提唱している。
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同社は耕作放棄地や遊休地を活用した営農型太陽光発電や省エネ住宅の販売など、エネルギーの地産地消を促進する事業を展開している。
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「GXはお得である」という経済的メリットを具体的な数字で示すことで、人々がGXを自分事として捉えるよう促している。
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再生可能エネルギーの不安定性を解消するため系統用蓄電池事業に進出し、専門人材育成のため「グリーンエナジー大学」を2025年春に開始予定。
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政府は「脱炭素先行地域」制度を通じて地方の脱炭素化を支援しているが、人材不足や資金調達難などの課題も存在する。
【2】日本における「Net-Zero Dad」現象:エコな家電に熱中する中年男性[2/28 note / 日経COMEMO]
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日本でも「ネットゼロ・ダッド」現象が見られ、環境への関心よりも経済性や技術的好奇心から脱炭素技術を採用する中年男性が増加している。
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EVや太陽光パネル、蓄電池、高断熱窓などへの投資は、2022年以降の電気料金高騰を背景に「省エネ設備への投資」という考え方が広がったことが大きい。
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「EVごはん」(1万4千人以上)や「太陽光発電所ネットワーク」などのオンラインコミュニティで情報交換や経験共有が活発に行われている。
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政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言に伴う補助金政策や、東日本大震災以降の防災意識の高まりが、この現象を後押ししている。
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当初は40〜50代男性中心だったが、現在は女性や他の年齢層にも拡大し、日本の家庭部門の脱炭素化を促進する重要な推進力となっている。
【3】ヒートポンプ愛好家、自宅見学ツアーに見知らぬ人を招待 - 多くの人にとって、ヒートポンプは馴染みがなく intimidating な低炭素技術です。英国のあるプログラムでは、導入を決める前に実物に触れる機会を提供しています [Bloomberg Green]
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英国のチャリティ団体Nestaの「Visit a Heat Pump」プログラムは、人々がヒートポンプを導入する前に実際の設置例を見学できる機会を提供している
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英国では多くの人がガスボイラーを使用しており、政府は気候目標達成のため7,500ポンド(約9,400ドル)の補助金を提供しているがヒートポンプの普及は遅れている
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プログラム開始以来、1,000人以上が見学し、400人以上がホストとして登録、見学後にヒートポンプ導入を考える人の割合は21%から79%に上昇した
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見学者は主にコスト、設置期間、必要な断熱材、騒音、スペースなどについて質問し、「床暖房が必要」といった誤解が解消されている
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実際の体験談として、見学後すぐにヒートポンプを導入した81歳の建築家は、暖かさとシャワーの快適さに満足している
【4】英国のネットゼロ経済は好調、CBI(英国産業連盟)が発表 - 環境分野は英国経済の3倍の速さで成長し、高賃金の雇用を創出しエネルギー安全保障を強化 [2/24 The Guardian]
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英国のネットゼロ経済は2024年に10%成長し、全体経済の3倍の成長率を達成、830億ポンドの価値を生み出し、約100万人を雇用している
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ネットゼロ部門の雇用は全国平均より5,600ポンド高い賃金と38%高い生産性を提供している
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労働党がネットゼロを経済的機会として支持する一方、改革英国党と保守党は経済的に有害だと批判するなど政治的分断が存在する
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英国のロンドン中心型経済と異なり、ネットゼロ企業は中部、ヨークシャー、南西部イングランドを中心に地域全体に広く分布している
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英国のネットゼロ部門は成長しているものの、国際的競争相手はより速いペースで進んでおり、ネットゼロはEU経済への貢献が50%多く、中国のGDPの10%を占めている
【5】中国、クリーンエネルギーで途上国を再編 - エネルギー貧困、高額な化石燃料、安価な太陽光に直面し、発展途上国は足で投票している [2/25 Bloomberg]
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中国は世界の太陽光パネルの4分の3を生産し、クリーンエネルギー革命の主要プレーヤーとなっている
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先進国の保護主義的関税により、中国製パネルの輸出先は発展途上国に移行している
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パキスタン、ブラジル、サウジアラビアなどの国々では、中国製パネルにより電力供給の3〜13%をカバーできるようになっている
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2024年には世界で599ギガワットの太陽光パネルが設置され、製造能力はさらに拡大している
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エネルギー貧困と高価な化石燃料に直面する発展途上国は、安価な太陽光発電を選択しており、中国の地政学的影響力を高めている

image credit: Bloomberg
【6】中国製EVs、ガソリン価格高騰でナイジェリアに浸透 - 電気自動車の運転コストが燃費の悪いガソリン車より安価に。ただし問題点も:アフリカの同国はすでに不安定な電力供給に苦しんでいる[2/26 Bloomberg Green]
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ナイジェリアでは2023年にガソリン補助金が廃止され価格が5倍に高騰したため、EVが経済的選択肢として注目されている
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EVの運用コストはガソリン車の約5分の1(1日4,000ナイラ未満 vs 18,000-20,000ナイラ)だが、国内の電力供給は不安定で人口2億人に対してわずか4ギガワットしか発電していない
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少なくとも10のディーラーが中国製EVを販売しており、Saglevは中国のDongfengと提携して年間最大2,500台を国内で組み立てる計画である
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太陽光発電容量が急増しており、2030年までに21.5ギガワットに達すると予測され、すでに2024年には約1.5ギガワット相当のパネルが中国から輸入されている
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貧困率が高いナイジェリアでEVの普及を促進するため、企業は二輪EVに注力し、銀行は5年間の支払いローンを提供、政府はEVの付加価値税免除などの支援策を実施している
【7】【3/5開催】国際シンポジウム - 脱炭素への大競争と自然エネルギー [自然エネルギー財団]
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「REvision2025:脱炭素への大競争と自然エネルギー」は2025年3月5日に開催され、IRENAのガウリ・シン事務局次長を含む世界のエネルギー専門家が太陽光発電拡大など自然エネルギーの国際動向を議論する
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第1セッション「自然エネルギーは地方創生の鍵」では、業務スーパー創業者の沼田昭二氏が地熱発電プロジェクト、石狩市の洋上風力プロジェクトなどの事例を紹介する
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第2セッション「洋上風力発電:加速への条件」では、シーメンス・エナジーやMHIべスタスジャパンの代表が世界的に逼迫するサプライチェーンの日本での確立について議論する
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第3セッション「産業脱炭素化の牽引力に:鉄鋼のグリーン市場を創る」では、クライメート・グループのサミーン・カーン氏などが鉄鋼業脱炭素化の戦略を議論する
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シンポジウムは東京のイイノホールで開催され、参加費は無料(要事前登録)で、日英同時通訳が提供されます。
【8】Media is Hope AWARD 2024下半期・年間賞 表彰式を開催しました! [2/28 Media is Hope]
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「Media is Hope AWARD 2024」は2025年2月25日に国連大学で開催され、気候変動やSDGsといった社会課題解決へ貢献するメディア/ジャーナリスト12組を表彰した
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賞は下半期・年間の個人賞と媒体賞に加え、ソリューションジャーナリズム賞、調査報道賞、シリーズ継続賞、特別賞など多様なカテゴリーで構成されている
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受賞者には日本経済新聞社、朝日新聞社、J-WAVE、日本農業新聞、ウェザーニュース、NHK、中海テレビ放送など多様なメディアが含まれ、気候変動を「生活に密着した身近な問題」として伝える工夫が評価された
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表彰式ではトロフィー授与後にトークセッションが行われ、受賞者たちが気候変動の発信を「届ける」「継続する」ための課題と、その克服法について共有した
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Media is Hopeは視聴者/読者などメディアではない人たちが社会課題に尽力するメディアやジャーナリストを応援する必要があるという理念に基づいて活動しており、この賞もその一環として位置づけられている
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、LinkedInで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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