⏰ エネルギー政策の振り子現象 - トランプ488億ドル削減・日本原発新設下での気候現実

4年間に渡って信頼性の高い気候・エネルギージャーナリズムを提供してきたCipher Newsが7/16を持って更新停止、というお知らせはとても残念でした。4年間お世話になりました。
市川裕康 2025.07.19
誰でも

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*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4 などの生成AIツールを使用しています🙂

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

  • 中東情勢緊迫化でエネルギー安保への関心が高まる中、2025年参院選では原発・再エネ活用の議論が低調。自民は選挙公約で原発に明確に触れず、野党も原発政策で分裂。国民民主は原発・再エネ積極活用、立憲民主は原発新増設反対・再エネ100%、共産・れいわは原発ゼロを主張。政府は2040年度に原発比率を8.5%から2割程度に引き上げ、エネルギー自給率を1割台から3~4割に向上させる目標だが、実現には30基超の稼働が必要で現状14基では困難。専門家は原発・再エネ両方活用派と再エネ優先派に分かれる。

  • 関西電力が東日本大震災以降初となる原発新設に向け、福井県美浜原発敷地内で地質調査を開始することが判明。2010年に着手したが福島第1原発事故で中止していた調査を再開する。革新軽水炉など次世代型原発を想定し、調査から運転開始まで約20年を要する見込み。政府は第7次エネルギー基本計画で原発を含む脱炭素電源の最大限活用を明記し、2040年度の電源に占める原発比率を2割程度とする目標を設定。既存原発の老朽化が進む中、将来の電源確保に向けた建て替えが急務となっている。

  • 米エネルギー長官クリス・ライトは気候変動を進歩の副産物と位置づけ、前政権の脱炭素政策を批判。炭化水素排除により米国のエネルギー価格上昇と製造業コスト増を招いたと指摘。欧州でも同様の政策が脱工業化を促進。現政権はエネルギー安全保障を重視し、石炭・原子力・天然ガスなど安定電源の増産を推進。特にAI産業の急成長に対応する24時間安定供給体制の構築を急ぐ。エネルギー政策の転換が製造業回帰と経済成長の鍵と主張。

Cipher News
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2025/07/16 23:07
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  • 気候変動対策には数十年の時間が必要だが、人間社会は短期サイクルで動くという根本的な時間軸の不一致がエネルギー転換を困難にしている。トランプ政権の政策転換で政治的振り子が逆方向に振れているが、経済的現実により完全な後退はないとの見方が支配的。専門家らは地球工学などの新たな解決策も視野に入れるべきと指摘。*Cipher Newsは2025年7月16日で発行を停止しました。

  • Bloombergの気候変動ポッドキャスト「Zero」で、ホストのAkshat Rathiがクリーンエネルギー専門家で元エネルギー省融資プログラム事務所責任者のJigar Shahにインタビュー。トランプ大統領の「One Big Beautiful Bill」により、米国は今後10年間でクリーンエネルギー支出を488億ドル削減。Shahは業界にとって「巨大な挫折」と認めつつも、2014年のフラッキング業界復活を例に挙げ楽観視。EV税控除7,500ドルや住宅電化インセンティブは削除されるが、バッテリー、核エネルギー、地熱は保護され、太陽光・風力は2027年まで好調な見通し。業界は石油・ガス業界の2倍の設備投資を行うが、政治的影響力への支出は1/120と著しく不足。米国のEV普及率は2030年に当初予測の50%から37%に低下するものの、プラグインハイブリッド車が主流になると予測。民間ベンチャーキャピタルが再工業化に数百億ドル投資予定で、民間主導の構造は継続し、長期的復活を見込む。

  • 米テスラと中国BYDが日本でのEV店舗拡大を本格化している。テスラは2026年末までに現在の23店舗から50店舗に倍増し、BYDは2025年中に63店舗から100店舗体制を目指す。テスラは欧米・中国での販売不振を背景に日本事業を強化し、オンライン中心だった販売を実店舗展開に転換。CHAdeMO充電規格への対応も開始する。BYDは2026年後半に軽自動車EV参入も計画している。日本のEV市場は停滞が続くが、米中勢の積極参入により競争が激化している。

  • 海面上昇に直面するツバルで、国民の過半数(5,157人)がオーストラリアへの移住を申請した。2100年までに国土の9割が浸水すると予測される中、2023年にファレピリ連合条約を締結し、豪州は年280人を受け入れる。このペースでは35年後に住民がいなくなる可能性があり、国家存続が課題となっている。 ツバル政府は文化のデジタル化やブロックチェーン技術による行政システム構築を進め、25カ国が国家承認継続を表明。

  • クリーンテックが再エネ・EVから産業電化、水処理、山火事予防など多様な分野に拡大。2025年のGlobal Cleantech 100では52カ国18,773社から100社選出。特に水処理分野ではPFAS除去技術やCCUS(CO₂回収・利用・貯留)が注目される。投資額は2024年に約360億ドル、データセンター需要が新たな牽引要因。技術は実用化段階に移行し、実需ベースのビジネスモデルが求められる。日本では政府がGX実現に向け150兆円投資目標を掲げ、つばめBHBが日本企業初のGCT100選出を果たすなど評価向上も、スタートアップ数の少なさが課題。

  • 気候変動によりヨーロッパ南部の人気リゾート地が深刻な変化に直面している。スペインのバルセロナ近郊では頻繁な嵐で砂浜が消失し、6月には南西部で46度の記録的高温を観測。イタリア、ギリシャでも極端な暑さが続き、観光客と住民が苦しんでいる。洪水や山火事も頻発し、従来の夏の楽園が住みにくい場所に変貌。スペイン政府は持続可能エネルギー投資や熱波予測システムの導入を進めているが、根本的解決は困難。南欧住民の間では涼しい北欧への移住願望が高まっている。

【10】👨‍👩‍👧‍👧 7割超の親が「猛暑は異常」、9割超が「原因は地球温暖化」 [7/15 オルタナ]

  • 「医師たちの気候変動啓発プロジェクト」が実施した2024年夏の実態調査で、3-9歳の子どもを持つ親800人のうち7割超が「異常な暑さ」、9割超が「地球温暖化が原因」と回答した。記録的猛暑により子どもの外遊びは週1-2日に激減し、半数以上がテレビ・動画視聴で過ごす「外で遊べない夏」となった。東京科学大学の藤原教授はオランダの研究を引用し、高温時に子どもの脳ネットワーク結合が弱くなりメンタルヘルスに影響すると説明。適切な気候変動対策なしでは2090年代に喘息入院数が最大6.78倍増加する予測も示された。約半数の親が温暖化抑止は個人努力の限界を超え国・政府対応が必要と回答。専門家は気候変動対策を「我慢」ではなく社会システム変革として捉え、日常的な議論の重要性を強調した。

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🎟️イベントのご案内

7月30日、STATION Aiにて開催される「E&E FUKUOKA & AICHI コネクト」は、環境・エネルギー分野のイノベーションを地域を越えて創出することを目指したイベントです。CIC JapanによるE&Eコミュニティが福岡に拡大することを記念し、東京・愛知・福岡をオンラインで結び、スタートアップ、事業会社、行政、アカデミアの多様なプレイヤーが一堂に会します。清水建設や双日などの大手企業とスタートアップの共創事例発表、九州電力の取り組み紹介、愛知・福岡からの革新的なスタートアップピッチなど、実践的なコンテンツが満載です。私もコメンテーターとして参加し、広域連携による脱炭素イノベーションの可能性について議論させていただきます。よろしければぜひご参加ください。*名古屋と福岡にて現地開催&オンライン視聴も可能です。

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  • ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋

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