CO2濃度が過去最高を更新、再エネ投資が同時加速─560億ドルの気候テック投資ブーム

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで720名以上、Linkedinニュースレターでは1,120名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。
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🇯🇵Climate Curation vol. 180 音声概要 [7:44 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 180 audio summary in English [6:53 min.]
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にChatGPT、Claude Haiku 4.5 などの生成AIツールを使用しています🙂
*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #174】をご覧ください。
🏆 カーボン・キャプチャー技術でノーベル賞受賞の日本、気候変動が農業を大きく変える[10/15 Japan Climate Curation #174]
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🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要 : Japan Climate Curation vol. 174 [6:57 min.]
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🌍 CO2濃度が過去最高を更新、温暖化加速への懸念 [10/15 The Guardian]
国連データによると、2024年の大気中CO2濃度は424ppmに達し、1957年の計測開始以来最大となる3.5ppmの増加を記録しました。化石燃料の継続燃焼と記録的な山火事が主要因ですが、科学者たちが最も懸念しているのは、自然の炭素吸収源の機能低下です。毎年排出されるCO2の約半分は海洋に溶け込むか植物に吸収されてきました。しかし、温暖化した海は吸収能力が低下し、高温乾燥化した陸地では植物の成長が阻害されています。この吸収源の弱体化によって大気中に留まるCO2が増加し、さらなる温暖化を招く危険な悪循環が形成される可能性があります。メタンと亜酸化窒素も同時に記録的水準に達し、複数の負のフィードバックループが同時進行する危機的状況です。
【2】温暖化する地球を見下ろす 気候変動の15の陰影 [10/17 中日新聞]
2024年の地球平均気温は過去最高を記録し、パリ協定の目標である1.5度上昇を既に超えました。北極圏は最も急速に温暖化が進んでおり、北半球の先進国から排出された二酸化炭素がその地域に滞留しています。一方、海面上昇は年3.58ミリのペースで加速し、異常降雨や洪水、山火事が多発しています。メタンの排出量も急増し、温室効果は二酸化炭素の30倍に達しています。科学者の警告は正当でしたが、便利で豊かな生活を求める人々の欲望が対策を困難にしています。
👆ビジュアライゼーションでぐいぐいと気候変動と温暖化がもたらす地球の厳しい現実を示す特設サイト。決して楽しい内容ではないものの、知っておきたい、じっくり目を通しておきたい情報が満載です。カーソルを動かすことで地球の裏側も見ることができます。
【3】🌍 世界の再エネ発電量、石炭火力を上回る 日本出遅れ 25年上半期 [10/15 毎日新聞]
2025年上半期、世界は歴史的な転換点を迎えました。再生可能エネルギーが初めて石炭火力を発電量で上回り、太陽光は前年比31%、風力7.7%の大幅増加を記録しています。世界経済成長に伴う電力需要増加分を再エネだけで賄う状況が実現し、中国は世界の太陽光増加の55%を占め、インドも記録的ペースで拡大しています。一方、日本の現状は対照的です。OECD加盟国の中で日本の石炭依存度は32%と最も高く、太陽光・風力の比率も12%にとどまっています。送電線容量制約による「出力抑制」で太陽光は0.4%減少し、世界的な再エネ加速の波に取り残される危機的状況にあり、抜本的なエネルギー構造転換が急務とされています。
*国内でも今回のレポートを受けた報道が先週末以降多く掲載されていてよかったです。再エネにネガティブなイメージで話題になることが多い今だからこそ、知っておきたい情報と思いました🙂
【4】💰 気候技術投資が急加速 560億ドル、昨年1年分を上回る [10/15 Bloomberg Green]
2025年1~9月の気候技術投資が560億ドル(約8.4兆円)に達し、2024年通年の510億ドルを上回りました。3年間の低迷から急転回した背景には、データセンターの爆発的な電力需要があります。クリーンエネルギー、電池、EV分野で中国のCATL・BYDやスペインのIberdrola等が大型調達を実施。機関投資家も積極参入し、Brookfieldが200億ドル、JPMorganが100億ドルの気候技術投資を発表するなど、エネルギー独立性と国家安全保障の観点から注目が集まっています。ただしトランプ政権による再生可能エネルギー政策の転換により、2026年以降の投資継続性については不透明感が残ります。
【5】🌍 気候投資が21世紀の成長機会 スターン経済学者が強調 - 化石燃料成長は「自己破壊的」=政策転換を呼びかけ [10/13 The Guardian]
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済学者、ニコラス・スターン氏は、気候投資が21世紀唯一の経済成長の機会だと主張しています。再生可能エネルギーと電動車などのクリーン技術のコストが急落し、過去10年で太陽光は80%、風力は73~57%削減されたことで、経済成長と気候対策を同時実現できると指摘。健康で生産性の高い社会が実現すれば、世界経済の成長率向上と数百万人の貧困脱却につながるとしています。一方、化石燃料による成長は「自己破壊的」と警告。大気汚染による年間数百万人の死亡や、気候災害の急速な悪化を背景に、政策転換の重要性を強調しています。トランプ大統領やファラージュ氏ら気候対策に懐疑的な政治指導者に対しても、科学的根拠による理性的議論の必要性を述べています。実際に英国のネットゼロ部門は全体経済の3倍速で成長しており、政策転換が経済成長につながる現実を示唆。スターン氏は「不作為は壊滅的」と述べ、各国の急速な政策変更を求めています。*2006年に「気候変動の経済学(通称「スターン報告」)」を取りまとめたことで知られるスターン氏の新著『21世紀の成長物語:気候変動対策の経済と機会』が11月5日に出版予定(Kindle版:165円)
【6】⚡ 再生可能エネルギー投資ラッシュが加速 トランプ政権の規制も追い風に - 連邦補助金の終了前に企業が太陽光・風力・蓄電池プロジェクトで競争 [10/14 The New York Times]
トランプ政権が再生可能エネルギーの税制控除を廃止し許認可を厳格化しているにもかかわらず、企業は税制控除失効前に太陽光・風力・蓄電池プロジェクトの工事を急加速させています。連邦税制控除の対象となるには2027年7月までに工事開始が必須で、企業はまだ必要としない設備を前倒し購入。今年の米国グリッド追加容量の93%を再生可能エネルギーが占め、2027年まで記録的な容量追加が見通されています。ただし大規模企業のみが莫大な先行投資に耐え、資金不足の小企業プロジェクト買収が加速。洋上風力は政権の業界攻撃により事実上の終焉状態です。2028年以降、許認可削減と工事遅延の影響が本格化する見通し。ガスや原子力発電所建設には数年要するため、供給不足からエネルギー価格が上昇し、電気代値上げが懸念されています。政権の規制強化は短期的なブーム後、長期的な経済負担をもたらす可能性があります。
【7】2025年の「気候テック企業10」、難航した選出の舞台裏 [MITテクノロジーレビュー]
MITテクノロジーレビューが2025年版「気候テック企業10」を発表。トランプ政権による気候政策撤回と関税政策の不確実性から、従来の15社から10社に厳選した。
選出企業と特徴: 中国からナトリウムイオン電池のハイナ・バッテリー・テクノロジーとスマート風力タービンのエンビジョン・エナジーを採用。ドイツの電動トラック大手トレイトン、スウェーデンのクリーン・セメント製造セムビジョンはEUの厳格な排出規制対応企業。米国からはバッテリー材料リサイクルのレッドウッド・マテリアルズが関税上昇で優位性を獲得。AIデータセンター需要に対応する地熱発電のファーボ・エナジーと次世代原子力のカイロス・パワーも選出。レッドウッド・マテリアルズはマイクログリッド事業を新設し、地域の電力需要に対応。さらにレアアース再生のサイクリック・マテリアルズも含まれる。
選出基準: 温室効果ガス大幅削減と気候変動対応能力を重視。資金調達・製造・製品提供で実績を確立した企業のみを採用。化石燃料企業と問題のある労働慣行関連企業は除外。米国以外の地域、特に中国やEUの企業探索を強化し、地理的多様性を確保した厳格な選出プロセスが実施されました。
【8】ビル・ゲイツ特別寄稿:それでも気候変動対策に私が投資し続ける理由 [10/10 MITテクノロジーレビュー]
パリ協定の目標達成が難しい理由は、ゲイツの見方では政治や企業の責任ではなく、ゼロカーボン実現に必要な技術的ツールが未だ不足し、多くが高価だからである。ただし彼は悲観的でなく、人類のイノベーション能力を信じている。重要な指標は「グリーン・プレミアム」—クリーン技術と従来技術のコスト差だ。太陽光発電はすでに安く、持続可能な航空燃料は割高という具合に、部門ごとに戦略が異なる。発電・製造・輸送・農業・建物冷暖房の5部門に集中投資し、グリーン・プレミアムを削減することが急務。自ら主導するBreakthrough Energyは150社以上を支援、市場競争力を持つ企業成長を実現している。政策変化に左右されない、世界規模のイノベーションエコシステム構築が、次の10年間の排出量急速削減を可能にするという楽観的ビジョンを示しています。
【9】📺[アーカイブ]未来を拓く再エネ戦略:実践者と専門家が語る課題と突破口 [10/12 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)]
企業の脱炭素化と再生可能エネルギー拡大をテーマにしたセミナーのアーカイブ動画が公開されました。大和ハウスやUPDATERなど先進的な企業の実践報告と、東京大学などの研究者による議論を通じ、日本の再エネ導入の課題と解決策が明らかになります。世界的なコスト低下を背景に、地域との共生を重視した太陽光導入、地産地消やコスト削減戦略が実践的に解説されています。このアーカイブ動画では、企業・研究機関・自治体など多様なステークホルダーの連携が脱炭素化実現にいかに重要かが、実事例を通じて理解できます。
【10】🚢 米国圧力で海運気候協定採択が1年延期 - トランプ政権が直前で転換、「グリーン詐欺税」と攻撃 [10/17 Financial Times]
トランプ政権の強力な圧力により、UN支援の海運業界気候協定「ネット・ゼロ・フレームワーク」の採択が1年延期されました。4月に多数国が仮合意した本協定は、5,000トン以上の船舶に炭素価格を課し、2030年から年間最大150億ドルの収益を生成する予定だった。国際海事機関の会合では、米国と同盟国が前例のない二国間圧力戦術を展開し、外交官から「暴力団のような行動」と非難されました。IMO事務局長は「異常な会合」と評価。投票は57対49対21で延期が決定し、EUも分裂しました。海運業界は世界貿易の80%を占め、気候変動排出の3%を占めるため、協定の延期は気候変動対策に大きな打撃となります。産業界も投資判断に必要な「明確性」の欠落に失望しています。
*10/17に愛知県名古屋市にあるステーションAiにて「GX・脱炭素経営の解像度を高めるためのニュースの読み方」というテーマの勉強会でお話する機会をいただきました(愛知県GXアクセラレーションプログラム /環境エネルギーイノベーション(E&E)コミュニティ)。参加いただいたみなさま、ありがとうございました。イベントレポートを公開いただいたので共有します🙂。
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、LinkedInで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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