EPA排出データ停止も米民間投資継続、中国クリーンテック「GDP10%」の現実

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで710名以上、Linkedinニュースレターでは1,120名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。少し分量が多いかもしれませんが、skim (ざっと斜め読み)も含め、お好みに応じてご活用ください🙂
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🇯🇵Climate Curation vol. 176 音声概要 [8:02 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 176 audio summary in English [5:29 min.]
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂
*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #170】をご覧ください。
🚀 政府、スタートアップ規制を見直し 環境投資拡大へ 万博でサステナ構想アピール [9/19 Japan Climate Curation #170]
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🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要 : Japan Climate Curation vol. 170 [7:02 min.]
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🇺🇸 米環境保護庁(EPA)、企業からの排出データ収集を中止 [9/12 The New York Times]
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米環境保護庁(EPA)は、2010年から継続してきた温室効果ガス報告プログラムの停止を提案しました。全国約8,000の石炭火力発電所、石油精製所、製鉄所などの大型産業施設による排出データ収集を終了するものです。ゼルディンEPA長官は「官僚的な障害」と述べ、今後10年で企業に最大24億ドルの節約をもたらすと主張。一方、批評家は排出源を追跡できなければ削減もできない**ため、気候変動対策に重大な支障をきたすと警告しています。このデータは国連報告や民間企業の投資家向け報告に活用されていました。
【2】🇨🇳 中国の新気候目標を憂う必要なし - クリーンテック産業の勢いが平凡な公約を上回る[9/18 The Economist]
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世界最大の排出国である中国は年間126億トンの二酸化炭素を排出し、世界全体の約3分の1、アメリカの3倍に相当します。新たな目標では温室効果ガス削減目標として10-15%程度の控えめな数値が予想されています。実際、2025年上半期には排出量が前年比1%減少するなど、既に削減の兆しが見えています。しかし、電力の60%を石炭に依存する現状から、エネルギー安全保障を理由に急激な脱炭素化には慎重な姿勢を示しています。一方で注目すべきは、クリーンテック産業の急速な成長です。太陽光発電、電気自動車、バッテリーがGDPの10%を占め、2025年上半期だけで256ギガワットの太陽光発電を追加**するなど、政府目標を大幅に上回る実績を上げています。
【3】🇦🇺 オーストラリア、2035年温室ガス削減目標を強化 [9/18 BBC]
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オーストラリアは2035年までに温室効果ガス排出量を2005年比で少なくとも62%削減する新たな目標を発表しました。これまでの2030年までの43%削減から大幅に引き上げ**られた形となります。アルバネーゼ首相は「科学に基づく責任ある目標」と説明し、国連総会で正式発表予定です。一方で、政府委託の報告書では既に1.5度の温暖化に達しており、より極端な気象条件への警告も示されています。野党は「コストと信頼性の面で失敗」と批判していて、国内の気候政策は依然として分裂した状況が続いております。
【4】🇺🇸☀️ 米太陽光業界、大統領の敵視政策にもかかわらず活況 投資拡大が続く[9/16 The Economist]
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トランプ政権が太陽光発電業界に敵対的政策を展開する中、アメリカの太陽光産業は予想以上の活況を呈しています。ラスベガスで開催された再生可能エネルギー会議RE+では、業界関係者3万7千人が集結し、投資拡大への意欲を示しました。2025年は前半12ギガワット、後半21ギガワットの太陽光発電容量追加が予定されており、エネルギー分野のビジネスインテリジェンス・コンサルティング企業であるWood Mackenzie(ウッドマッケンジー)は「トランプ・バンプ」現象を予測しています。投資急増の背景には、税額控除期限前の駆け込み需要と、AI・データセンター普及による電力需要増があります。
【5】🗺️ 【独占】気候テック大手が脱炭素化戦略策定へ新連合結成 「クライメートテック・アトラス」立ち上げ [9/18 Heatmap News]
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気候技術分野の主要企業や大学が手を組み、脱炭素化への道筋を示す「Climate Tech Atlas」を立ち上げました。Breakthrough Energy、McKinsey、Stanford大学などが中心となり、1年をかけて80人の専門家と共に作り上げたこの取り組みは、連邦政府への依存から脱却し、民間主導で技術革新を推進することを目指しています。建物から製造業まで24の分野で機会を特定し、39の野心的なプロジェクトも含まれています。投資家、研究者、政策立案者向けのワンストップリソースとして機能し、年間1,000人以上の起業家と面談するElemental Impactなどが活用を予定しています。2006-2012年のClean Tech 1.0の失敗から学び、より現実的なタイムラインでイノベーションを加速させる狙いです。
【6】🇺🇸☀️ 米気候活動家、太陽光推進で全国集会 トランプ政権の攻撃に対抗 [9/18 The Guardian]
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トランプ政権が気候保護と再生可能エネルギーに対する攻撃を強化する中、気候活動家たちは日曜日に全国規模の「Sun Day」集会を開催します。ベテラン活動家ビル・マッキベンが主導するこの行動には450以上のデモンストレーションが予定されており、従来の抗議活動とは異なり、太陽光発電や省エネの約束を強調する内容となっています。トランプ政権は150以上の反環境行動を実施していますが、再生可能エネルギーの成長は続いており、3月には米国のエネルギー生成で化石燃料の割合が初めて半分を下回りました。
【7】📰 気候変動報道賞2025、世界49作品が受賞 国際ジャーナリズム団体が発表 [9/18 Covering Climate now]
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気候変動報道の優秀作品を表彰するCCNow(Covering Climate Now)ジャーナリズム賞2025が発表され、49作品が受賞しました。5年目を迎える同賞には約50カ国から1,200件以上の応募があり、32カ国・地域の118人の審査員が厳正に選考しました。年間最優秀ジャーナリストには、The GuardianのThaslima Begum氏、Noticias TelemundoのVanessa Hauc氏、ナイジェリアChannels TelevisionのAyoola Kassim氏の3名が選出されました。特筆すべきは、日本経済新聞が「サカナクライシス - 相模湾100年史にみる食卓の未来」で初めて日本のメディアとして受賞したことです。同作品は気候変動による日本周辺海域の魚種変化を130年間のデータで分析し、データジャーナリズムの優秀例として「森林・海洋・自然界」部門で表彰されました。
【8】🇯🇵 国内外のスタートアップ、大阪万博に集結 地球課題の解決へ革新技術 [9/17 日本経済新聞]
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「大気から直接」CO2回収、世界に勝てる…RITEが国内最大級のDAC実証でつかんだ手応え[9/8 スイッチ / 日刊工業新聞]
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大阪・関西万博も10月13日の閉幕が近くなり、最近は駆け込み訪問による混雑ぶりの様子が報道されています。9月17日&18日にはグローバルスタートアップエキスポ2025なども開催され、気候テックスタートアップ企業の出展、投資家、起業家、専門家らが登壇するイベントなども開催されました。そんな中、私も初めての万博を訪問し、『RITE(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構): 未来の森』ツアー、そして最寄りの弁天町駅で展示中の Carbon Xtract社が開発した分離膜を利用して大気からCO2を回収する技術のデモ展示を見学する機会をいただきました。回収したCO2を活用することで、レタス🥬の栽培期間を通常の5週間から3週間程度に短縮できるとのお話を伺い、CO2利用の可能性をとても感じることができました。また、実際に稼働中、或いは実証中のDAC・CCU・CCUS技術の最先端の展示に触れることで、吸収・回収したCO2を貯留・活用する世界観、未来の姿を体感出来ることができました。

【9】🌱🚀💰 気候テック・GX関連ニュース
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「スタートアップに海外資金」へ新ルール 日本独自の慣行見直し [9/17 日本経済新聞]
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海外ファンド・VC、大阪万博で日本進出相次ぎ表明 新興技術に期待 [9/17 日本経済新聞]
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スタートアップ投資、有力VCが日米に150億円 核融合や量子など[9/16 日本経済新聞]
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2030年代に商用炉建設へ/「核融合ベンチャー」とタッグを組む日本企業/世界で過熱する開発競争と巨額マネーの実像 [9/17 東洋経済オンライン]
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Carbon EX、カーボンクレジット等の累計取扱高が130万トンを突破 [9/17 Carbn EX]
【10】🎟️ イベント・キャンペーン情報
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📺4人のおじい奮闘記!~輪島 スコットランド 希望をつなぐ風~ [9月21日(日)午後1時55分~放送 テレビ朝日]
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【9/21-28】クライメート・ウィークNYC [Climate Group]
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【9/15 - 10/10】 東京GXウィーク [9/12 経済産業省]
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【9/27&28】「みんなでつくろう再エネの日!2025」豪華な登壇者や出展、タイムスケジュールを公開!! [9/3 一般社団法人Media is Hope]
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
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