トランプ脱炭素半減で日欧連携加速、中国エネルギー覇権「競争相手なし」の現実

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで710名以上、Linkedinニュースレターでは1,120名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。
毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。少し分量が多いかもしれませんが、skim (ざっと斜め読み)も含め、お好みに応じてご活用ください🙂
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🇯🇵Climate Curation vol. 175 音声概要 [21:00 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 175 audio summary in English [14:28 min.]
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂
*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #169】をご覧ください。
🔋 日本、蓄電池に巨額投資 テスラが日産EV優位に挑戦 [9/10 Japan Climate Curation #169]
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🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要:Japan Climate Curation vol. 169 [22:29 min.]
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日本の気候変動適応が加速し、記録的な猛暑により熱中症保険への加入が13%急増、PayPay保険で14万8千件に達した。エネルギー移行は複雑な展開を見せ、2023年12月以降、投資家が蓄電池貯蔵に26億ドルを投入した一方で、規則変更案により割り当て容量が1.7GWから800MWに削減される恐れがある。ガス業界幹部は、政府が2030年度までに1%のe-メタン供給を義務化しているにも関わらず、トランプ政権の脱炭素支援縮小により米国のe-メタンプロジェクトに疑問を表明した。市場動向は劇的に変化し、テスラが日本のEV市場で日産を猛追、販売台数を980台に倍増させ、Model 3を手頃な選択肢として位置づけている。豪日エネルギー連携による年間2000万トンの水素需要目標や、エネルギー安全保障のための440億ドルのアラスカLNGプロジェクトの日本による評価により国際協力が強化された。従来の持続可能性は課題に直面し、国連認定にも関わらず静岡の茶草場農家が582人から302人に減少した一方、中国のEVブームにより日本の工作機械受注が781億円に達した。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🇺🇸 トランプ政権で米脱炭素化ペース半減の恐れ 環境政策見直しで分析 [Financial Times]
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トランプ政権の気候政策見直しにより、米国の脱炭素化ペースが今後15年間で半分以下に減速する可能性があります。Rhodium Groupの分析では、年間排出削減率が1.1%から0.4%に低下し、2035年までの削減目標が38-56%から26-35%に縮小する見通しです。主要因として、再生可能エネルギー税制優遇の廃止、石炭発電所から電気自動車まで幅広い環境規制の撤廃、パリ協定からの離脱が挙げられます。AI需要による電力消費増加も懸念材料で、専門家は米国の国際競争力低下と世界全体の気候変動対策への深刻な悪影響を警告しています。
【2】🇨🇳「競争相手はもはや存在しない」中国、グリーンエネルギーで世界をリードする理由 [9/7 The Guardian]
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中国が21世紀のエネルギー戦争で圧勝している。風力・太陽光発電設備の建設量は世界の他国合計の2倍に達し、設備容量1,200GWを政府目標より6年前倒しで達成。風力タービン世界トップ4社は全て中国企業で、太陽電池と電気自動車でも市場シェア過半数を確保。トランプ政権下の米国が気候変動対策から後退し220億ドルのクリーンエネルギー事業を中止する中、中国は多国間協調を重視しEUとの気候政策連携を強化。ただし年間CO₂排出量119億トンで世界の31.5%を占め、石炭投資も10年ぶり高水準。昨年排出量が微減し炭素排出ピーク到達の可能性。
【3】🇪🇺「気候対策は繁栄阻む」米高官が欧州に主張 [9/10 The New York Times]
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米国のライト・エネルギー長官とバーガム内務長官がヨーロッパを訪問し、化石燃料輸出の拡大とEU環境規制の緩和を求めています。両長官は気候変動対策を「イデオロギー」と批判し、AI競争に勝利するため化石燃料が必要だと主張しました。ロシア侵攻後、ヨーロッパは米国産エネルギーへの依存を高めていますが、EU側は2030年までに温室効果ガス55%削減目標を掲げており、両地域のエネルギー政策に関する基本姿勢の違いが鮮明になっています。
【4】🥵 記録的猛暑「化石燃料大手の汚染が主要因」—新研究が関連性を指摘 [9/11 AP]
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過去25年間で55の熱波は人為的気候変動なしでは発生しなかったとする研究がNature誌に発表されました。2000-2023年の213の熱波を調査した結果、180の主要石油・ガス・セメント企業が全事象に有意に寄与していることが判明。これら企業は1850年以降のCO2排出量の57%を占めます。55の熱波は工業化前と比べ1万倍発生しやすくなりました。この研究は化石燃料企業への法的責任追及にも活用される可能性があります。
【5】⚖️ 太平洋諸島の学生が世界気候法を変革 [9/12 The New York Times]
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太平洋諸島の学生たちが2019年の環境法の授業から始めた小さな運動が、世界の気候法を変革しました。海面上昇や災害で故郷が破壊される現実を目の当たりにした学生たちは、気候変動を人権問題として捉え、国際司法裁判所への勧告的意見を求める運動を展開。当初は教授の課外活動として始まりましたが、段階的に国際支持を拡大し、最終的に134か国が共同提案国となりました。2024年7月、ICJは全会一致で気候変動に国際法全体が適用されるとの画期的判断を示し、今後の気候訴訟に大きな影響を与えると期待されています。
【6】🌍アフリカ気候サミットで緑の経済成長に期待高まる [9/8 The Guardian]
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エチオピアで開催されたアフリカ気候サミットで、大陸のグリーンエコノミー躍進への期待が高まっています。20カ国が太陽光パネル輸入で記録を更新し、中国からの設備輸入が60%増加しました。しかし6億人が電力にアクセスできず、気候変動適応に必要な年間700億ドルに対し、実際の支援は150億ドルにとどまります。アフリカは温室効果ガス排出量の4%のみですが、気候変動の影響を最も受けており、国際社会からの継続的な支援が不可欠です。豊富な重要鉱物資源と若い人口(60%が25歳以下)を活かし、持続可能な発展への転換点を迎えています。
【7】🇯🇵 欧州の脱炭素ファンド、日本で新興発掘へ [9/11 日本経済新聞]
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欧州最大級の脱炭素ファンド「EITイノエナジー」が日本進出を検討している。日EU競争力アライアンスの第1弾事業として、セジュルネ上級副委員長の訪日に合わせて、ジェトロやGX推進機構と協力覚書を交わす予定。これまで340億ユーロを超える投資実績を持つ同ファンドの参入により、日本のグリーンスタートアップの資金調達や欧州への展開が促進される。トランプ政権の脱炭素への消極姿勢を背景に、日EUが環境技術で連携強化し、中国に対抗する戦略的意図もある。
【8】🇯🇵 41.8°Cの酷暑・・・日本を変える「国産バイオ燃料」不屈の研究者20年目の逆襲 [9/12 テレ東プラス]
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地球温暖化が深刻化する中、研究者の小原聡さんが20年間取り組んできた国産バイオ燃料の研究が注目されています。アサヒビール時代にプロジェクトが中止されましたが、2019年に東京大学に移り、種子島で新品種サトウキビ「はるのおうぎ」を使ったバイオエタノール事業化を目指しています。世界では既にバイオエタノールの利用が常識化しており、日本も2030年度までにガソリンへの最大10%混合を目標に掲げました。JAXAとも連携し、宇宙事業でのクリーンエネルギー活用を進めています。
【9】📚🎞️ 書籍・映画など
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🌍 気候変動対策に現実的楽観論 リッチー氏新著を書評 - グリーン技術反対論に科学的反駁 データで示す現実的解決策 [9/12 The Guardian]
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気候データ科学者ハンナ・リッチーの新著「Clearing the Air」は、グリーン技術採用への50の反対論に答える実用的な気候楽観論を提示。1.5度目標は「死んだ」と断言しつつ、英国の化石燃料発電半減、バッテリー技術向上、太陽光コスト90%減などの進歩を強調。エアコン使用や原子力発電を支持し、風力発電の鳥への影響も誇張として退ける。個人の炭素フットプリントより集団行動の重要性を訴える現実的なアプローチが特徴。
【10】🎟️イベント
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【9/21-28】クライメート・ウィークNYC [Climate Group]
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【9/15 - 10/10】 東京GXウィーク [9/12 経済産業省]
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【9/17 - 19】核融合・洋上風力・CCUSなど、“未来のエネルギー”が一堂に集結!世界最大級の新エネルギー総合展 - 第24回 スマートエネルギーWEEK【秋】[9/9 RX Japan 株式会社]
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【9/27&28】「みんなでつくろう再エネの日!2025」豪華な登壇者や出展、タイムスケジュールを公開!! [9/3 一般社団法人Media is Hope]
【11】🌱🚀💰 気候テック・GX関連ニュース
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京都フュージョニアリング、シリーズCラウンド(エクステンション)を終了し、デットファイナンス(融資枠を含む)との合計93.8億円の資金を確保 [9/10 京都フュージョニアリング株式会社]
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ペロブスカイト太陽電池、リコーやパナソニックに246億円補助 経産省 [9/9 日本経済新聞]
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ECOMMIT、シリーズBラウンド資金調達を実施 - 捨てない社会をかなえるための社会実装を目指し、メルカリと資本業務提携を締結 [9/1 株式会社ECOMMIT]
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わさび栽培のNEXTAGE、シリーズAラウンド(2nd close)で2億円の資金調達を実施〜 AI活用による栽培技術の高度化と海外展開を踏まえた事業スピードアップを加速 〜 [9/5 株式会社NEXTAGE]
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さかなドリーム、シリーズAで10億円の資金調達を実施 - 日本発グローバル養殖魚ブランド創出に向けて、新規養殖魚の開発および量産体制の構築を加速 [9/2 株式会社さかなドリーム]
【活動紹介・ご案内】9月17日に地元浜松市で定期的に開催されているコミュニティイベント、水曜のヨル喫茶(水ヨル)で気候変動とカーボンニュートラルについてお話する機会をいただきました。浜松市役所の原田さまとの掛け合いを通じて地域で出来ることを考える機会になれば嬉しく思います。地元の方、或いは途中下車でお立ち寄りいただける方がいらしたらぜひお気軽にご参加ください🙇。詳細はこちら
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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