日本「温暖化なしには起こり得ない」異常気象、中国が太陽光でも世界制覇90%

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで710名以上、Linkedinニュースレターでは1,120名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。*英語版[Japan Climate Curation」は毎週水曜日配信です。併せてご覧ください📬[音声概要は日本語でも視聴可能です🎧] 少し分量が多いかもしれませんが、skim (ざっと斜め読み)も含め、お好みに応じてご活用ください🙂
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🇯🇵Climate Curation vol. 174 音声概要 [20:48 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 174 audio summary in English [12:56 min.]
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂
*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #168】をご覧ください。
🔥 日本、熱中症対策ルールを義務化 原子力復活で核融合分野に巨額投資 [9/3 Japan Climate Curation #168]
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🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要: Japan Climate Curation vol. 168 [17:18 min.]
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日本は記録的な猛暑に直面し、平年より2.36度高い観測史上最も暑い夏を記録した。これを受けて初めて熱中症予防対策が義務化された。しかし、三菱商事が1.7GWの洋上風力プロジェクトから撤退したことで構造的な課題が浮き彫りになり、エネルギー転換は挫折に直面している。建設コストが20%以上上昇し、タービン価格が2倍になったためだ。企業部門では相反する動きが見られた。ソニーが2030年までにサプライヤーに100%再生可能エネルギーを要求した初の日本大手企業となった一方で、日本のEV普及率は中国の54.8%に対してわずか1.9%にとどまっている。前向きな動きとしては、日本の商社大手が米核融合スタートアップのコモンウェルス・フュージョン・システムズに数十億円の投資を主導した。また、AI需要による電力需要増加を背景に、三菱重工業とIHIが原子力分野の採用を大幅に増やした。戦略的自立性の面では、日本が多様化を通じて中国へのレアアース依存度を90%から60%に削減した。ただし、トヨタを含む従来の自動車メーカーはソフトウェア開発で遅れをとり、業界がデジタル優位にシフトする中で世界21位にランクされている。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🇯🇵 「明らかに異常気象」の猛暑と少雨、二つの高気圧が要因…気象庁の分析検討会 [9/5 読売新聞]
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2025年夏は記録的な猛暑と少雨により「明らかに異常気象」に。チベット高気圧と太平洋高気圧が日本上空に重なって居座ったことが主因で、地球温暖化の影響が顕著に現れているとのことです。6~8月の平均気温は過去30年の基準値を2.36度上回り、観測史上最高を記録しました。気象庁は「温暖化がなければ発生し得なかった」と分析していて、今後も同様の異常高温が続く可能性が高いとされています。産業界では気候リスク対応を既存オペレーションに内在化する発想が求められ、脱炭素・気候変動対策投資、防災強化が急務に。
【2】🇺🇸 科学者らがトランプ政権の気候報告書を批判 - エネルギー省の温室効果ガス論に「重大な欠陥」と多数の研究者 [9/2 The New York Times]
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85人以上の米国内外の科学者が、トランプ政権エネルギー省の気候変動報告書を厳しく批判しました。報告書は気候変動の脅威を過大評価されているとし、エラーや誤解、選択的データが含まれていると指摘されています。科学者らはこの手法をタバコ業界の健康リスク否定戦略と比較し、政治的意図があると非難。報告書は温室効果ガス排出制限の撤廃を正当化するために使用されており、テキサスA&M大学のデスラー教授らが439ページの詳細な反論文書を作成し、章ごとに政府の主張を論破しています。
【3】🇨🇳 中国政府、太陽光業界の過度な競争に歯止め 大手6社で280億円損失 - 価格戦争の抑制と技術革新促進の両立図る [9/4 Financial Times]
👉ピックアップコメント:世界シェア90%を握る中国の太陽光産業の構造調整は、グローバル市場に大きな影響を与えそうです。トランプ政権のクリーンエネルギー政策削減により、中国の技術優位性がさらに拡大する可能性も。
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中国の太陽光産業が岐路に立っています。主要6社の上半期損失が前年比倍増で202億元(28億ドル)に達し、過剰生産による価格競争激化で工場稼働率は54%まで低下しました。588GW生産に対し需要は国内外合わせて451GWと明らかな供給過多状態です。政府は14社の幹部を召集し、無秩序な競争抑制と過剰設備閉鎖を指示。一方でトランプ政権のクリーンエネルギー政策削減により、米国企業との競争圧力が緩和され、中国の技術優位性がさらに拡大する見通しです。世界シェア90%を握る中国企業は、短期的な財務困難を乗り越えれば、長期的には市場支配力を一層強化できる戦略的優位性を獲得しています。研究開発投資34億元を維持し、従業員数も5年で倍増させるなど技術革新も継続。構造調整の痛みを伴いながらも、グローバル市場での覇権確立に向けた基盤固めが進んでいます。
【4】🇺🇸 マイクロソフト、CO₂除去市場で圧倒的存在感 廃棄物焼却・貯留型プロジェクトに巨額投資 [9/4 Financial Times]
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炭素除去(カーボンリムーバル)市場でマイクロソフトが圧倒的な存在感を示していて、技術系カーボンクレジットの購入シェアは80%に達します(今年上半期は92%)。累積投入額は約80億ドルで、アマゾンやグーグルを大きく引き離しています。AI・クラウド事業拡大に伴う排出増への対応として、直接空気回収などの技術に大規模投資を行っている一方で、一社依存のリスクも指摘され、市場の多様化と透明性確保が今後の課題と伝えられています。
【5】🌍 原子力産業が世界で再び拡大中 再評価の動き広がるも復権への道は不透明 [9/4 The Economist]
👉ピックアップコメント:AIやデータセンターの電力需要急増を背景とした原子力再評価は、日本の政策にも大きな示唆がありそうです。
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過去20年間の困難を経て、原子力エネルギーが復活の兆しを見せています。政府の安全なエネルギー源への欲求、テック大手の電力需要増加、新しい財務・運営モデルの登場が主因です。トランプ政権は2050年までに米国の原子力容量を4倍に増やす目標を掲げ、欧州も145GWまで拡大を予測しています。小型モジュール炉への投資も活発化し、テック企業が数十億ドルを投じています。日本のカーボンニュートラル実現においても、この動向は重要な示唆を与えそうです。再生可能エネルギーの間欠性を補う安定電源として、原子力の再評価が進む可能性があります。特にAIやデータセンターの電力需要急増を背景とした「クリーンで安定した電力」への関心は、日本の気候変動政策にも影響を与えそうです。ただし経済性や規制、人材不足などの課題も残ります。
【6】🌍 カーボンキャプチャ、気候変動対策での効果限定的に 地中に貯留したCO₂が漏出リスク—科学者ら警鐘 [9/4 Financial Times]
👉ピックアップコメント:従来想定の97%減という大幅下方修正は、技術的解決策への過度な依存に警鐘を鳴らしています。
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最新のネイチャー誌研究によると、カーボンキャプチャー技術(CCS)で安全に地下貯留できるCO₂量が従来想定(40,000ギガトン)に比べ1,500ギガトン以下へと、97%もの大幅下方修正がされたとのことです(ギガトンは10億トン)。CCSを「無限の解決策」ではなく「希少な資源」として捉え、化石燃料延命ではなく排出削減困難な産業に限定活用すべきと伝えられています。
【7】🇺🇸 気候変動運動の常套手段 通用せず — 先行き不透明な今「70年アースデイの熱気」再び模索 [9/5 The New York Times]
👉ピックアップコメント:対立から実用性へのアプローチ転換は、日本の気候変動運動にも参考になりそうです🌱
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気候変動活動家のビル・マッキベン氏は、従来の対立的な抗議活動から実用的なアプローチへの転換を図っています。9月21日に開催予定の「Sun Day」では、太陽光発電の普及を通じて1970年のアースデイの成功を再現しようと試みています。再生可能エネルギーのコストが大幅に下がり、経済的魅力が高まる中、活動家たちは化石燃料への対立ではなく、クリーンエネルギーの利便性を訴える戦略に注目しています。しかし、従来の活動手法の限界を感じる声も多く、気候変動運動は新たな方向性を模索している状況です。
【8】🇺🇸 TED元代表が3億ドルファンド設立 気候テック「死の谷」問題解決へ [9/4 TechCrunch]
👉ピックアップコメント:気候テックの「死の谷」問題は日本でも深刻で、このような大型ファンドの動きは示唆に富みます💡
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TEDの元責任者クリス・アンダーソン氏が、気候テック企業の「死の谷」問題解決のため3億ドルファンド「All Aboard Coalition」を設立いたします。このファンドは初期資金調達と成長資本の間のギャップを埋め、スタートアップが1億~2億ドルの大型資金調達を実現することを支援いたします。Breakthrough Energy VenturesやKhosla Venturesなど著名な気候投資家15社が参画し、大規模機関投資家への信頼性シグナルとして機能することが期待されています。
【9】 2025/9/27(土), 28(日)「みんなでつくろう再エネの日!2025」登壇者や出展、タイムスケジュールを公開 [9/4 Media is Hope]
👉ピックアップコメント:3年目を迎える参加無料の体験型イベント、多様なオピニオンリーダーの結集に期待です。私も参加予定です🙂🎪
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一般社団法人Media is Hopeが主催する「みんなでつくろう再エネの日!2025」が9月27・28日に千代田区と渋谷区で開催されます。気候変動解決に向け、スポーツ界・ファッション界・メディア関係者など多彩なオピニオンリーダーが結集し、再生可能エネルギーの普及を目指す、今年で3年目を迎える2日間のイベントです。参加無料の体験型イベントで、専門家による講演、展示、再エネ電力への切り替え相談など、学びと実践を一体化した内容となっています。
【10】書籍ご案内『グリーン・リスキリング』 [8/31 グリーンタレントハブ株式会社代表取締役 井口和宏著]
👉ピックアップコメント:CIC Tokyo の環境エネルギーイノベーション(E&E)コミュニティでもご一緒している井口さんの書籍。私も自分のグリーンリスキリングを振り返りながら読ませて頂いています。9月8日には出版記念イベントも開催され、リアル参加、オンライン視聴が可能です。
![image credit:&nbsp;<b>『<a href="https://amzn.to/3JNa3Iq" target="_blank">グリーン・リスキリング</a>』[電気書院]</b>](https://d2fuek8fvjoyvv.cloudfront.net/climatecuration.theletter.jp/uploadfile/d198cdc2-9343-4756-b521-d8ac020a966b-1757142641.jpg)
image credit: 『グリーン・リスキリング』[電気書院]
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グリーンタレントハブ株式会社代表取締役の井口和宏氏による、脱炭素領域でのキャリア転換を支援する実践書『グリーン・リスキリング』が発売されました。未経験者でも脱炭素分野で活躍できる人材になるための手法を分かりやすく体系化している内容で、豊富な実例と「グリーンキャリア移行サイクル」を通じて、転職・副業の成功パターンを解説し、業界キーパーソンとの対談も収録されています。9月8日にはCIC Tokyoで出版記念イベントも開催予定です。
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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