米AI電力「8年待ち」の深刻 / 宇宙太陽光・地熱への注目
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こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで740名以上、Linkedinニュースレターでは1,120名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。
🎧音声概要版はこちらから視聴いただけます[Powered by NotebookLM]
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🇯🇵Climate Curation vol. 188 音声概要 [5:35 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 188 audio summary in English [5:16 min.]
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にChatGPT、Claude、Gemini、NotebookLMなどの生成AIツールを使用しています🙂
*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #180】をご覧ください。
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🏭 排ガスフィルターからCO2フィルターへ 日本企業、炭素回収に本腰[12/10 Japan Climate Curation #182]
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🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要 : Japan Climate Curation vol. 182 [6:17 min.]
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🌡️ 世界の3年平均気温、初めて1.5度超えへ 2023〜25年 - 11月は1.54度上昇、2025年は観測史上3番目の暑さか[12/9 Financial Times]
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EUの地球観測機関コペルニクスは、2023〜2025年が産業革命前と比較した気温上昇の3年平均が初めて1.5度を超える期間になると発表した。パリ協定の1.5度目標は20年間の長期平均を指すが、科学者らは一時的な超過でも食料・水・自然に不可逆的な影響をもたらすと警告。2025年は観測史上2番目か3番目に暑い年になる見通しだ。マッキンゼーは2度上昇への適応に年間1.2兆ドルが必要と試算し、低所得国の人口の85%が気候災害への備えを欠いていると指摘した。
【2】🇺🇸 米EPA、サイトから「人間活動が気候変動の原因」の記述を削除 [12/9 The New York Times]
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米環境保護庁(EPA)がウェブサイト上の一部ページから、気候変動の主因が人間活動であるという記述を静かに削除していたことが明らかになりました。「気候変動の原因」と題されたページでは、人為的要因の代わりに太陽エネルギーの変化や火山噴火が原因として掲載されています。トランプ大統領は気候変動を「でっち上げ」と呼び、化石燃料開発を推進する一方、再生可能エネルギー規制を強化しています。科学者団体は「科学への攻撃」と批判。EPA広報は「気候カルトからの指示は受けない」と反論しました。なお、EPAサイトの別ページには人為的原因の記載が残っており、トランプ政権自身も2017年に人間が温暖化の主因とする報告書を発表しています。
【3】⚡ 電力不足が米AI戦略の足かせに——データセンター増設に「8年待ち」、バブル崩壊の懸念も[12/8 Financial Times]
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米国のAI開発が深刻な電力危機に直面しています。Microsoft、Amazon、Google、Metaなどの大手テック企業は4000億ドル(約62.5兆円)超のデータセンター投資を計画していますが、送電網への接続に平均8年以上を要する状況です。OpenAIだけで今後8年間に28GWの電力容量を必要とし、アルトマンCEOは電力不足を「存亡に関わる問題」と表現しています。2024年に中国が429GWの新規電力を追加したのに対し、米国はわずか51GWでした。老朽化したインフラと許認可の遅れがAI覇権を脅かしています。この問題は日本にとっても他人事ではありません。 データセンター誘致を進める日本も、原発再稼働の遅れや送電網の制約を抱えており、電力インフラ整備なくしてAI競争力は確保できません。米国クラウドへの依存度が高い日本企業にとって、供給制約のリスク分散も検討課題となりそうです。
【4】🔒 不透明な世界情勢、試されるエネルギー安全保障 - 需要削減がエネルギー安保強化の「見過ごされてきた切り札」として浮上 [12/11 Financial Times]
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ロシアのウクライナ侵攻を契機に、エネルギー安全保障が世界的な課題となっています。欧州はロシア産ガスへの過度な依存から脱却し、米国やノルウェーなど供給源を多様化しましたが、老朽化した送電網の近代化が急務です。2025年4月のイベリア半島大停電はインフラの脆弱性を露呈しました。再生可能エネルギーへの移行は自給率向上に寄与する一方、分散型電源の統合には送電網の大幅拡張が必要です。サイバー攻撃や物理的破壊工作のリスクも増大しており、デジタル化と安全保障の両立が求められます。専門家は供給側の多様化に加え、省エネなど需要側政策の重要性を指摘しています。
【5】💨 米洋上風力を崩壊させた男──その意外な素顔 [12/11 Canary Media]
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米国の洋上風力発電産業を壊滅させた運動の中心人物が、気候変動を信じ、自宅に太陽光パネルを持つ75歳の男性だったことが判明しました。デラウェア州のデビッド・スティーブンソン氏は、保守系シンクタンクの政策ディレクターとして約10年間、反洋上風力の草の根運動を組織。科学的根拠なくクジラの死と風力発電を結びつける戦略で世論を動かし、訴訟を通じて開発を遅延させました。トランプ政権下で運動は成果を収め、許可停止や補助金削減が実施された結果、2035年までの発電容量予測は39GWから6GWへ激減。研究者らはこれを「気候変動否定」から「対策の妨害」への移行と分析しています。気候変動を信じる人でさえ対策の妨害者になりうるという教訓は、日本の洋上風力推進においても、多様なステークホルダーへの対応と科学に基づく情報発信の重要性を示しています。
【6】🌋 米地熱発電Fervo、Googleなどから700億円調達 - ゲイツ氏ファンドも出資、次世代地熱開発で業界をリード [12/10 Wall Street Journal]
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地熱発電スタートアップのFervo Energyが、Googleなどから4億6200万ドル(約700億円)のSeries E資金調達を完了しました。新規投資家B Capitalが主導し、複数の新規・既存投資家が参加しています。同社は石油・ガス業界で培われた掘削・フラッキング技術を応用し、地下深部の高温岩盤を活用する次世代(拡張型/EGS)地熱発電を展開。資金は、ユタ州ビーバー郡で建設中の旗艦プロジェクト「Cape Station」の建設継続と、他の案件の初期開発を加速するために充てられます。Cape Stationは2026年に100MWの供給開始、2028年までに追加400MW(合計500MW)をオンライン化する計画で、世界最大級の次世代地熱開発になる見込みです。AI・電化の進展で電力需要が急増する中、24時間稼働の"クリーンで安定電源"として地熱の存在感が高まっています。なお本ラウンドには日本から三井物産(新規投資家)が参加し、三菱重工業および丸の内イノベーションパートナーズは既存投資家として継続出資しています。
【7】🛰️ 宇宙から太陽光送電、米スタートアップが始動 衛星でレーザー照射 - Overview Energy、2000万ドル調達済み 来年初めにシリーズA目指す[12/10 Heatmap News]
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宇宙太陽光発電企業 Overview Energy がステルスモードから登場し、衛星からレーザーで地上の太陽光発電所にエネルギーを送る計画を発表しました。同社は2000万ドルのシード資金を調達済みで、2028年にSpaceXでの打ち上げを予定しています。近赤外線レーザーを使用することで、太陽光の20%に対し50%の変換効率を実現。時差を活用して世界中の需要に応じてビームを切り替える「地理的解放」により、24時間安定した再エネ供給を目指します。2035年までに60〜100ドル/MWhのコストでギガワット規模の商用化を計画しています。
【8】☀️ 小型「差し込み式」太陽光パネル、電気代削減の手軽な選択肢として米国で普及拡大[12/7 PBS News]
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米国で「プラグインソーラー」と呼ばれる小型の差し込み式太陽光発電システムが注目を集めています。従来の屋根置き型が数万ドルするのに対し、400〜1,600ドルで導入可能で、投資回収期間も2〜3年と短期です。ドイツでは既に広く普及しており、米国でもユタ州が全米初となる登録不要の法案を可決しました。賃貸住宅居住者や固定収入の高齢者など、従来太陽光を導入できなかった層にクリーンエネルギーへのアクセスを広げる動きが各州で加速しています。家全体の電力は賄えないものの、専門家は再生可能エネルギーの普及に貢献すると評価しています。
【9】📊 Financial Times 特集企画:「すべてを電化する」時代へ - 脱化石燃料へ再エネ電力シフト加速、交通・暖房・産業の転換には巨額投資と技術的ハードル[12/11 Financial Times]
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🔆 太陽光発電:米中の政策変更でも堅調 - 米国・中国での政策変化にもかかわらず、太陽光発電は成長を維持。アジア新興国、サハラ以南アフリカ、中東で再エネ拡大が見込まれます。
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🔗 サプライチェーン:代替策の模索 - 供給網の逼迫に対応するため、メーカー各社は生産拡大、地域生産能力の構築、製品再設計で受注残解消を図っています。
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🔋 蓄電システム:多様化がカギ - エネルギー源だけでなく蓄電システムの多様化が、より安定的で強靭な送電網の構築に寄与するとの分析。
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🚗 米国EV:トランプ政権下で販売減速 - トランプ大統領がガソリン車を支持する中、EV販売が鈍化。自動車業界は補助金・優遇策なしでの電動化推進という課題に直面。
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🏠 欧州ヒートポンプ:ガス価格下落で失速 - 化石燃料による暖房の優位性と各国補助金の縮小により、ヒートポンプ需要が減退しています。
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🏭 英国製鉄:高電力価格が壁 - 低炭素の電気アーク炉が高炉に代わりつつあるものの、運転コストが欧州他国より最大25%高いという課題を抱えています。
【10】🇯🇵 脱炭素素材のTBMがグロース市場上場に向け準備、1000億円超え視野に [12/11 Bloomberg Green]
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脱炭素素材を開発するTBMが、東証グロース市場での新規株式公開(IPO)に向けた準備を進めています。中島正剛CFOは、早ければ2027年の上場も視野に入れており、現在の企業価値約1300億円を上回る時価総額での上場を目指すと明かしました。単年度営業黒字化のめどが立ち、主幹事証券会社や監査法人の選定も完了。同社はCO2を回収して製造する新素材「CR-LIMEX」を手掛け、吉野家やアパホテルなど大手企業で採用が進んでいます。上場資金は海外展開の加速に充当する方針で、実現すれば国内スタートアップとして大型案件となります。
【イベントのご案内】
来年の1月27日〜29日にかけて、昨年に続き愛知県名古屋市で「TechGALA」が開催されます🚀 私も昨年参加したのですが、とても熱量高く、豪華スピーカーや東海地域や関東圏からの参加者も多く、たくさんの刺激や発見が得られました。昨年に続き今年もコミュニティサポーターということで応援させてもらってます💪。
開催に先駆けて、イベントの世界観やコンセプトを象徴するティザーサイトを先ほど公開しました!📢⚡️
▼TechGALA 2026 ティザーサイト▼
techgala.jp
今年のTechGALAもお楽しみに💌
#techgala
🎟️ご興味ある方はチケットもご提供可能(枚数制限有)です。ぜひお気軽にお問い合わせください。もしClimate Curation経由で参加される方が数名いらしたら現地でカジュアルなMeetupもできたらと思ってます🙂。
中部圏のスタートアップ・エコシステム形成を目指すCentral Japan Startup Ecosystem Consortiumは、テクノロジーの祭典「TechGALA Japan 2026」を2026年1月27日〜29日に名古屋市で開催します。前回約5,000名が来場した本イベントでは、NIKEフューチャリストのMonika Bielskyte氏、インド最大のスタートアップメディアYourStory創業者のShradha Sharma氏、ノーベル物理学賞受賞者の天野浩氏が基調講演に登壇。3日間それぞれ「描く」「探る」「創る」をテーマに掲げ、フランスの経済学者Jacques Attali氏のスペシャルセッションも実施されます。90名超の登壇者が集結する国際的イノベーションイベントです。
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XやLinkedInなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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