Vol.195 :中国543GW、米国▲5.4兆円 - エネルギー超大国の明暗と、選挙で問われる日本の針路

明日2月8日は衆院選の投票日です🗳️ 原発再稼働、再エネ賦課金、排出量取引—今号でも取り上げたように、エネルギー政策は私たちの暮らしと産業に直結するテーマです。大切な一票、活かしたいですね。
市川裕康 2026.02.07
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【⭐📰 今週のニュース・トピックス】

  • 🗳️ 衆院選、原発「現実路線」多く 再エネは賦課金廃止論も [日本経済新聞]

  • ⚡ エネルギー安全保障の新地政学:中国依存と国産資源の狭間で/眠れる資源「地熱」は日本を救うのか [報道1930 TBS]

  • ⚡ 中国の圧倒的電力増強、AI覇権競争で米国との差を拡大──マスク氏「制約要因は電力だ」[Bloomberg Green]

  • ⚡️ 中国、クリーンエネルギーが経済成長の3分の1超を牽引 2025年分析 [Carbon Brief]

  • ⚡ 中国再エネ革命の「混乱」が世界を変える [Wired]

  • ⚡️ 米クリーンエネルギー投資が急減 昨年350億ドル(約5.4兆円)分が中止に [Grist]

  • ⛷️ 冬季五輪、雪不足の危機 温暖化で開催地選定に限界 [Bloomberg Green]

  • 💹 日本企業、排出量取引制度開始前にカーボンクレジット購入加速 [Bloomberg]

  • ⚛️ 核融合実用化へ前進 米新興、2900万ドル(約44億円)調達 [Heatmap]

  • 📰 ワシントン・ポスト、気候変動報道チームを大幅削減 [BBC & Climate Colored Goggles]

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👉*先週号Vol.194 トランプ4倍速の規制破壊、それでも止まらないエネルギー投資—逆説の2026年[2026/1/31]を見逃した方はこちらから

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  • 2026年衆院選では、福島事故後初めて与野党第1党が原発再稼働で一致しました。立憲民主党は「原発ゼロ」を取り下げ、現実路線に転換。背景には2022年のロシアのウクライナ侵略後のエネルギー価格高騰とAI普及による電力需要増があります。新増設では各党の立場に差があり、国民民主が建て替えと新増設を明記し最も前向き。自民と維新は次世代革新炉の開発・設置を掲げる一方、中道は新増設を認めず、共産・れいわ・社民は原発ゼロを維持しています。他方、再生可能エネルギーには逆風が強まり、年1万9000円に膨らんだ賦課金の廃止論が浮上。ただし年3兆円規模の財源問題があり実現は困難です。政府は2050年温暖化ガス実質ゼロを目標に、変動する再エネを安定した原発で補う方針ですが、安全性確保や最終処分場問題など課題は山積しています。[*温暖化対策・エネルギー政策どうする 衆院選、政党アンケート回答[1/31 朝日新聞 ]]

日経 社会ニュース
@nikkeishakai
衆院選で薄れゆく原発ゼロ、各党が現実路線 再エネは賦課金廃止論も
nikkei.com/article/DGXZQO…
2026/02/04 07:26
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【2】⚡ エネルギー安全保障の新地政学:中国依存と国産資源の狭間で / 日本の大問題③ 脱エネルギー依存?/眠れる資源「地熱」は日本を救うのか [2/5 報道1930 TBS NEWS DIG]

  • 報道1930では日本のエネルギー自給率16.4%という脆弱性を歴史的文脈で分析しました。再生可能エネルギーで中国依存が深まる一方、2017年以降の世界の原発着工の9割以上を中露が占め、建設コストは米国の7分の1という競争力を示しています。日本は地熱資源で世界3位のポテンシャルを持ちながら実用化は10位に留まり、温泉業界との対立や開発リスク(成功率2~3割)が課題です。次世代原発SMRは事故規模の縮小や廃棄物の毒性期間を300年に短縮できる可能性がありますが、実用化には時間を要します。専門家は*「技術者だけに任せず国会にチェック機関を設置すべき」*と提言し、米仏の制度に学ぶ必要性を強調しました。エネルギー政策は気候変動対策と安全保障の両面から国家戦略として再構築が求められています。

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  • 中国が2021年以降に増設した発電容量は、米国の歴史的累計を上回り、昨年だけで543GWを追加しました。BloombergNEFの予測では、今後5年間で中国は米国の約6倍にあたる3.4TW超の発電容量を増設する見通しです。マスク氏は*「AI展開の制約要因は根本的に電力だ」と指摘し、中国の電力増強がAI競争で大きな優位をもたらすと警告しています。米国ではデータセンターの系統接続に数年を要する一方、中国では「問題にならない」*状況です。ゴールドマン・サックスによれば、中国は2030年までに世界のデータセンター需要全体の3倍超の余剰電力容量を持つ見込みです。ただしAIモデル・チップ層では米国が依然優位を保っています。

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  • Carbon Briefの分析によると、2025年の中国のGDP成長の3分の1以上を太陽光発電、電気自動車などクリーンエネルギー技術が牽引しました。同セクターなしでは成長率は3.5%にとどまり「約5%」の政府目標を達成できませんでした。投資増加の90%以上も同セクターが占めます。クリーンエネルギーセクターの総額は15.4兆元(2.1兆ドル)でGDPの11.4%に相当し、ブラジルやカナダの経済規模に匹敵します。実質価値は2022年から約2倍になりました。特に**EV・バッテリーが経済インパクトの44%**を占め、EV新車販売シェアは48%に達しました。投資は化石燃料の約4倍です。太陽光315GW、風力119GWを新設しましたが、新価格政策により太陽光成長減速が懸念されます。

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  • 中国の太陽光パネル生産能力は年間1テラワット、世界総発電容量の10%に相当します。2025年5月には1ヶ月で92ギガワットを追加し、米国の年間導入量を上回りました。背景には政府の価格支援策廃止前の駆け込み需要があります。急拡大により送電網が過負荷となり、電力価格がマイナスになる事態も発生。太陽光メーカー自体は過当競争で利益が出ていません。しかし安価な中国製パネルは世界の消費者に恩恵をもたらし、パキスタンやオーストラリアでエネルギー転換を加速。EV分野でも同様の現象が起きています。トランプ政権やビル・ゲイツが核融合など*「breakthrough tech」*を重視する一方、中国の大量生産アプローチが現実の脱炭素化を推進しています。

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  • 米国のクリーンエネルギー投資が急減しています。環境分野の有力シンクタンクE2の報告によると、2025年には約350億ドル(約5.4兆円)規模のプロジェクトが中止または縮小されました。これは前年の10倍以上です。主因はトランプ政権の反クリーンエネルギー政策で、洋上風力の許可凍結、税額控除の終了など、多方面からの規制が投資環境を悪化させました。特にEVとバッテリー製造セクターが打撃を受け、各210億ドル(約3.2兆円)の投資と48,000人の雇用が失われました。ただし一部企業は投資を完全放棄せず方向転換しており、政策変更があれば再転換の可能性も残されています。

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【7】⛷️ 冬季五輪、雪不足の危機 温暖化で開催地選定に限界 [2/4 Businessweek & Bloomberg Green]

  • 気候変動が冬季オリンピックの存続を脅かしています。1950年以降の冬季五輪開催都市は平均2.7℃上昇し、地球全体の平均1.4℃を大きく上回ります。現在のペースでは、2050年頃までに開催インフラを持つ93地域の44%で雪の状態が不安定になると予測されます。今月開催のミラノ・コルティナ大会では、異常な暖冬への懸念から、より少ない水とエネルギーで稼働する人工降雪システムに3,000万ユーロ(約48億円)を投資しました。2022年北京大会は五輪史上初めて100%人工雪で開催され、持続可能性への懸念が高まりました。IOCは2030年以降、平均気温が氷点下を維持できる**7〜8カ国(フランス、スイス、米国、日本、北欧諸国など)での持ち回り開催を検討中です。大会コストも膨張し、ミラノ大会は当初予算16億ドル(約2,464億円)から30億ドル(約4,620億円)**に増加する見込みです。

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  • 東京証券取引所のボランタリー市場で大手排出企業によるカーボンクレジット購入が活発化しています。4月に開始されるGX-ETS(排出量取引制度)では、ボランタリークレジットで排出量の最大10%をオフセット可能なため、企業が先行して調達を進めています。GX-ETSは日本の排出量の約60%をカバーし、2030年までに2013年比46%削減という政府目標の柱となります。再生可能エネルギー由来クレジットは昨年2月と4月に1トン6600円の高値をつけ、経産省が提案するGX-ETSの上限価格4300円を上回る水準で取引されています。BloombergNEFによると、異なるカテゴリーのクレジット価格が収斂傾向にあり、市場の成熟を示唆しています。EUでは炭素国境調整メカニズム(CBAM)が展開され、中国・ロシア・トルコが最も影響を受ける見込みです。

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  • 米国の気候テック分野で多様な投資が活発化しています。核融合スタートアップAvalanche Energyは2900万ドル(約44億円)を調達し、プラズマ安定化のブレークスルーを達成しました。科学的損益分岐点(Q>1)達成への明確な道筋を確立し、2027年初頭に重要装置を導入、2030年代初頭の商業化を目指します。SMR企業Newcleoは8800万ドル(約132億円)を調達し、使用済み核燃料リサイクル技術を開発。トランプ政権の原子力推進を追い風に、イタリア企業群と提携しています。商用車フリート電動化のMitra EVは2700万ドル(約41億円)、気候リスク管理AIのForerunnerは3900万ドル(約59億円)を調達しました。炭素除去分野ではTerradotがEionを買収し、業界統合も進んでいます。

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  • ワシントン・ポスト紙が大規模な人員削減、その中でも気候変動報道チームの大幅縮小を発表しました。同紙は過去10年間、米国屈指の気候ジャーナリズムを展開し、ピューリッツァー賞も受賞していましたが、今回少なくとも14人の気候担当記者に解雇通知を送りました。これは全社員の約30%にあたる300人超の削減の一環です。2022年に30人超への拡大を発表していた気候チームは、削減後わずか5人程度の記者のみとなります。オーナーのジェフ・ベゾス氏は2,440億ドル(約37.6兆円)の資産を持ちながら、年間1億ドル(約154億円)の赤字を補填せず大規模削減を選択。トランプ再選後、ベゾス氏はハリス候補支持の社説を阻止し、Amazonは就任式に資金提供するなど、トランプ政権への接近姿勢を示しています。

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では、よい週末を🙂

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