Vol.194 トランプ4倍速の規制破壊、それでも止まらないエネルギー投資—逆説の2026年

先日参加したTechGALAでは、GXや気候テックを冠したセッションこそありませんでしたが、ディープテック、サステナビリティといったキーワードで数多くのセッションやブース展示が展開され、たくさんの刺激と発見がありました。次回は今年12月15日〜17日開催とのこと、ぜひまた参加したいと思います🚀
市川裕康 2026.01.31
誰でも
image credit: NotebookLM

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こんにちは。新しく登録してくださった皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・気候テック関連のニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで750名以上、Linkedinニュースレターでは1,130名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。

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*免責事項:本ニュースレターでは要約・翻訳・編集にChatGPT、Claude、Gemini、NotebookLM等の生成AIツールを使用しています。

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【⭐📰 今週のニュース・トピックス】

  • 🇺🇸 米国がパリ協定から2度目の離脱、専門家は「責任放棄」と批判 [The Guardian]

  • 🇺🇸 トランプ政権2期目1年、気候規制304件を緩和・撤廃——第1期の4倍ペース [Sabin Center]

  • ⚡ 世界のエネルギー転換投資、2025年は過去最高の2.3兆ドルに到達 [BloombergNEF]

  • ⚡ 欧州EV販売、12月に初めてガソリン車を逆転 [Financial Times]

  • ☀️ 豪州、再生可能エネルギー発電が50%超の節目達成 [Reuters]

  • ☀️ インドが「石炭を飛び越え太陽光で工業化」——中国とは異なる発展モデル [Ember]

  • 🔋 電池技術に資金集中、リサイクル・蓄電ベンチャーが大型調達相次ぐ [Heatmap]

  • 🔋 Redwood Materials、バッテリー事業への大胆な賭けが実を結ぶ [Heatmap]

  • 🔌 「コンセントに差す太陽光」米国で合法化の動き——20州で法案提出 [Bloomberg]

  • 🪵 日本のバイオマス補助金縮小で英Drax社に打撃——木質ペレット輸入大国の政策転換 [FT]

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👉*先週号『Vol.193 沈黙するCEO、反論するダボス—脱炭素2つの顔 / EU再エネ、初の化石燃料逆転』[2026/1/24]を見逃した方はこちらから

👉1年前の今頃は... vol. 144DeepSeekショックが変える気候変動への常識[2025/2/1]

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米国がパリ協定から正式に離脱し、トランプ大統領による2度目の協定離脱が完了しました。これにより米国は、イラン、リビア、イエメンと並ぶ協定非加盟国となります。専門家らはこの動きを*「責任放棄」*と批判しています。一方、再生可能エネルギーへの投資は化石燃料を大きく上回り、中国企業は太陽光パネルの80%以上、風力タービンの70%を製造するなど、クリーンエネルギー供給網を掌握しています。BYDがテスラを販売台数で上回るなど、グリーン転換における中国の存在感は増すばかりです。専門家は、米国の離脱が他国の気候野心を低下させる口実になる一方、コロンビアやオランダなど一部の国はより積極的な行動に踏み出していると指摘しています。

【2】🇺🇸 トランプ政権2期目1年、気候規制304件を緩和・撤廃——第1期の4倍ペース [1/26 Sabin Center for Climate Change Law Columbia Law School]

コロンビア大学ロースクールSabinセンターの分析によると、トランプ政権第2期は就任1年で304件の気候規制緩和措置を実施しました。これは第1期同時期(75件)の約4倍のペースです。大統領令は13件から58件に急増し、「新規制1件につき10件撤廃」の方針により12月時点で129対1の撤廃比率を達成しています。具体的にはEPAの温室効果ガス危険認定の撤廃提案、風力・太陽光発電の許可厳格化、石炭火力発電所の延命措置などが進められています。国際面ではパリ協定、国連気候変動枠組条約、IPCCからの離脱も実行。今後3年間でさらなる規制緩和が予想されますが、一部は訴訟で争われる見通しです。

BloombergNEFの報告によると、2025年の世界エネルギー転換投資は前年比8%増の*2.3兆ドル(約356兆円)*に達し、過去最高を更新しました。電気自動車と充電インフラへの投資が8,930億ドル(21%増)で最大の牽引役となりました。クリーンエネルギー供給への投資は化石燃料を2年連続で上回り、その差は1,020億ドルに拡大しています。一方、中国では規制変更により再エネ投資が2013年以来初めて減少しました。EUは18%増と最も成長に貢献し、米国もトランプ政権の政策にもかかわらず3.5%増を記録しました。気候テック企業への株式投資は773億ドルで53%増となり、3年連続の減少から回復しました。

2025年、欧州のEV販売が前年比30%増の過去最高を記録し、12月にはEVがガソリン車を初めて上回りました(EV 22.6%、ガソリン車 22.5%)。一方、テスラは欧州で38%減少し、中国BYDに世界最大のEVメーカーの座を明け渡しました。EU全体のEVシェアは14%から17%に拡大。ルノー、VW、BMWの新モデル投入が成長を牽引しています。ボルボCEOは「航続距離や充電性能の向上により、政府補助金への依存から脱却しつつある」と市場成熟を指摘。EUは2035年の内燃機関車禁止を90%に緩和する方針ですが、業界からは「さらなる後退は消費者信頼を損なう」との声も出ています。

オーストラリアの国家電力市場(NEM)において、2024年10〜12月期の再生可能エネルギー発電シェアが50%を超え、過去最高を記録しました。前年同期比で5ポイント上昇し、電力需要が2.2%増加する中でも達成されました。屋上太陽光・風力・大規模太陽光はいずれも2桁成長を遂げ、蓄電池の放電量は約3倍に急増しています。一方、ガス火力は2000年以降で最低水準に低下し、石炭・ガス合計のシェアは50%を割り込みました。その結果、電力網からのCO2排出量は四半期として過去最低を記録しています。同国は2030年までに電力の82%を再エネで賄う目標を掲げています。

英シンクタンクEmberの分析によると、インドは中国や西側諸国が辿った「化石燃料への長い回り道」を経ずに、太陽光発電で工業化を進めています。2012年の中国と同等の所得水準(PPPで1万1,000ドル)で比較すると、インドの太陽光発電は電力の9%を占め、一人当たり石炭発電量は中国の約40%に留まります。EV販売も自動車の約5%に達し、電動三輪車では世界首位です。太陽光とバッテリーのコスト急落により、10年前には存在しなかったエネルギー経路が開かれました。インドはエネルギー主権の確保、製造業の機会獲得、レガシーコスト回避という構造的優位性を活かし、他の新興国に「電気技術が工業成長を牽引できる」ことを示しています。

image credit: Ember

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電池関連スタートアップへの投資が活発化しています。希土類リサイクルのCyclic Materialsは7,500万ドルのシリーズC調達を発表し、サウスカロライナ州に8,200万ドル規模の新施設を建設予定です。同社の技術は従来採掘比で炭素排出を61%削減します。一方、都市型サステナビリティに特化したVC「2150」が2.4億ドル、「豊かさ」実現を掲げるVoyager Venturesが2.75億ドルのファンド2号をそれぞれクローズしました。Voyagerは気候テックのラベルを外し、トランプ政権の国家安全保障・エネルギー自立路線に沿った投資戦略へ転換。Form Energyは2027年IPO前に最大5億ドル調達を検討中と報じられています。

リチウム価格の2年間の低迷を受け、バッテリーリサイクル企業Redwood Materialsが事業転換に成功しました。同社は新事業「Redwood Energy」で4億2500万ドルのシリーズE資金を調達し、GoogleやNvidiaのベンチャー部門も出資しています。従来のバッテリー解体・素材回収に加え、まだ使用可能なEVバッテリーをAIデータセンター向けのエネルギー貯蔵システムとして再利用する戦略に転換しました。ネバダ州でCrusoe Energyと提携したマイクログリッドが既に稼働中です。競合のLi-Cycleが2025年5月に破産する中、同社は生き残りに成功。今後5年で再利用EVバッテリーがエネルギー貯蔵市場の50%を占める可能性があると見込んでいます。

米国で「プラグイン・ソーラー」と呼ばれる簡易型太陽光発電システムの合法化が進んでいます。2〜4枚のパネルを壁のコンセントに差し込むだけで、冷蔵庫や照明程度の電力を賄え、年間数百ドルの電気代削減が期待できます。価格は約2,000ドル以上。電気代の高騰と屋根上ソーラー補助金の縮小を背景に、電力会社の許可を得ずに設置する消費者が増えています。ドイツでは数百万台が普及していますが、米国では安全基準の未整備や電力会社の承認要件により約5,000台にとどまっています。2025年にユタ州が電力会社の承認なしで設置可能とする法律を制定し、カリフォルニアなど約20州で同様の法案が審議中です。電力会社は、把握できない逆潮流が系統安定性に影響を与えることを懸念しています。

英国エネルギー企業Drax社のアジア戦略が、日本のバイオマス政策転換により岐路に立っています。日本は福島原発事故後の電源多様化でバイオマス発電を推進し、世界最大の木質ペレット輸入国になる見込みでした。しかし燃料コスト削減の見通しが立たないことから、政府は新規プロジェクトへの支援を段階的に廃止する方針です。木質ペレット価格は2020年以降50%上昇し、少なくとも6基のプラントが採算悪化で閉鎖。世界最大のペレット供給業者Envivaも2024年に破産しました。経産省は国内林業サプライチェーン強化を目指しますが、高齢化と労働力不足が課題となっています。

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