Vol.193 沈黙するCEO、反論するダボス—脱炭素2つの顔 / EU再エネ、初の化石燃料逆転

政治的逆風と市場の前進が交錯した一週間。Emberの「欧州電力レビュー」ではEU再エネが初めて化石燃料を逆転、「世界クリーンテック100」ではAI電力と資源安保が主役に。2026年を読み解くレポートをまとめてご紹介します :)
市川裕康 2026.01.24
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【⭐📰 今週のニュース・トピックス】

  • 🇺🇸 トランプ政権UNFCCC離脱、米企業トップは沈黙——8年前との対照 [FT]

  • 🔥 ダボス会議、世界経済トップが脱炭素逆風に痛烈反論 [CNBC]

  • ☀️ マスク氏、ダボス初登壇で米太陽光関税を批判——「普及の障壁」[Reuters]

  • 📉 ウォール街、気候変動対策から撤退——ESGブームは6年で崩壊 [NYT]

  • ⚡ EU、風力・太陽光が初めて化石燃料を上回る——2025年転換点 [Ember]

  • ⚡ 2026年、電化が気候問題の焦点に——「エレクトロテック革命」進行中 [Bloomberg]

  • 🌏 中国の排出量、ピークの兆し——専門家11人が2026年を展望 [Carbon Brief]

  • 🌏 「世界クリーンテック100」発表——AI電力・資源安保が主役に [Cleantech]

  • 💰 気候テック週次資金調達——電動船舶から地熱、核融合まで [Heatmap]

  • ⚡️ 地熱ベンチャーZanskar、AI活用で165億円調達 [Heatmap]

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👉*先週号『Vol.192 気候から地経学へ—2026年リスクの大転換 / 三菱商事1.2兆円、AI時代の化石燃料投資』[2026/1/17]を見逃した方はこちらから

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  • トランプ大統領が国連気候変動枠組条約(UNFCCC)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)からの離脱を発表しました。2017年のパリ協定離脱時にはゴールドマン・サックスやアップル、テスラなどのCEOが公然と批判しましたが、今回は同じ企業に問い合わせても沈黙が返ってきたとのことです。ある企業サステナビリティ責任者は「経営陣が神経質になっている」と明かしています。FT紙の論説は、最も影響力のあるビジネスリーダーが報復を恐れて沈黙することは、民主主義の「暗い真実」を示すと指摘。一方で、脱炭素は政治ではなく市場需要に駆動されており、その流れは変わらないとの見方も紹介されています。

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  • ダボスで開催された世界経済フォーラム(2026年1月)で、主要企業のトップが脱炭素への反発に強く反論しました。アリアンツのバーテCEOは欧州のグリーン転換への逆風を「逸脱」と呼び、短期的思考を厳しく批判。中国を再エネのロールモデルとして挙げ、2050年ネットゼロ目標の維持を訴えました。豪フォーテスキューのフォレスト会長は「ネットゼロ」ではなく化石燃料の完全停止を意味する「リアルゼロ」を提唱し、「再エネは化石燃料を食っている」とコスト優位性を強調。一方トランプ大統領は風力発電を批判しましたが、EU気候担当委員は「物理法則は議論するかどうかなど気にしない」と応じています。

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  • イーロン・マスク氏が世界経済フォーラム(ダボス会議)に初めて出席し、米国の太陽光発電関税が「極めて高く、太陽光普及の経済性を人為的に押し上げている」と批判しました。同氏は「ユタ、ネバダ、ニューメキシコの小さな一角で米国全体の電力をまかなえる」と太陽光の潜在力を強調。再生可能エネルギーに批判的なトランプ大統領とは異なる見解を示しました。また、テスラの自動運転技術が数週間以内に欧州で承認される見通しや、ロボットがいずれ人間の数を上回り巨大な経済成長をもたらすとの予測も発表しました。

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  • 2020年、世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOが気候変動対策への取り組みを宣言し、ウォール街全体でESG投資ブームが起きました。主要銀行はパリ協定への整合を約束し、2021年には総資産130兆ドルを擁するGFANZ(グラスゴー金融同盟)が発足しました。しかし、共和党政治家や保守系団体が訴訟や資金引き上げで反撃を開始。2024年のトランプ再選後、大手銀行はネットゼロ同盟から相次いで撤退し、ESG資金からは四半期ごとに数百億ドルが流出しています。理想を掲げた気候変動金融の試みは、実質的な事業転換を伴わないまま、わずか6年で崩壊しました。

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  • 2025年、EUの電力部門で歴史的な転換点が訪れました。風力と太陽光による発電量が初めて化石燃料を上回り、再生可能エネルギーがEU電力の約半分を占めるに至りました。石炭火力は過去最低水準に達し、退場が目前に迫っています。一方で、水力発電の減少によりガス火力への依存は継続しており、ガス輸入コストが16%増加するなど課題も残ります。EUは2027年末までにロシア産ガス輸入を禁止する方針ですが、米国LNGへの新たな依存が生じており、単一供給者への過度な依存がエネルギー安全保障上のリスクとなっています。蓄電池の拡大やグリッド強化、需要の柔軟性向上が今後の鍵となります。

Image Credit: Ember

Image Credit: Ember

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【6】⚡ 2026年、電化が気候問題の焦点に [1/22 Bloomberg Green / Zero: The Climate Race ポッドキャスト]

  • シンクタンクEmberのキングスミル・ボンド氏は、太陽光・風力・EV・バッテリー・AIなどの技術が収束し「エレクトロテック革命」が進行中と分析します。内燃機関車はエネルギーの70%以上を熱として浪費する一方、EVは80%以上を走行に活用でき、電化による効率優位性は3〜4倍に達します。インドは化石燃料を経由せず直接電化に向かう新たな発展経路を示し、2025年の電力成長の75%が太陽光由来です。欧州は電力への過重課税やCCSへの投資で失敗しましたが、革命は物理法則・効率性・経済性に支えられ不可避と同氏は主張します。

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  • Carbon Briefが専門家11人に取材した結果、中国のCO2排出量が18ヶ月以上横ばいまたは減少しており、2030年目標より早期のピークアウトの可能性が示されました。2026年3月発表の第15次五カ年計画では、初めて総量規制が導入される見込みです。再エネ成長が電力需要を上回り、炭素市場は鉄鋼・セメント・アルミ産業に拡大します。洋上風力の大型化や次世代バッテリー技術も進展します。EV輸出は86%増も関税障壁が上昇し、レアアース規制も継続しサプライチェーンリスクとなっています。米国の気候政策後退の中、中国の気候外交の役割が重要になっています。

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  • 第17回「Global Cleantech 100」は、市場が「痛みはあるが必要な調整局面」にあるとし、選出企業の約半数(48社)が入れ替わる激動の年となりました。AIブームによる電力需要の急増が、地熱や核融合、SMR(小型モジュール炉)といったベースロード電源への注目をかつてないほど高めています。また、地政学的リスクを背景に、重要鉱物の確保や気候変動への適応(レジリエンス)技術が「国家安全保障」に関わる主要テーマとして浮上しました。一方で、コスト競争力や需要の弱さが懸念される水素やDAC(直接空気回収)など一部の分野は、勢いが減速していると分析されています。

Image Credit: Cleantech Group

Image Credit: Cleantech Group

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  • 今週の気候テック分野では複数の大型資金調達が発表されました。電動船舶のFleetzeroは海運大手Maersk等から4,300万ドルのシリーズA調達。バッテリーは重すぎるという通説に反し既存インフラを活用できる利点を強調しています。船舶燃料は世界のCO2排出の約3%を占めます。次世代地熱のSage Geosystemsは9,700万ドルのシリーズBを調達し、2027年からMetaのデータセンター向けに電力供給予定です。欧州では住宅電化を支援するClooverが2,200万ドルに加え12億ドルの債務枠を確保。AIを活用した与信審査で既に2,500件の設置実績があります。一方、資金難に陥っていた核融合のGeneral FusionはSPAC合併で最大3億3,500万ドルを調達予定です。

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  • 地熱発電スタートアップのZanskarが1億1500万ドル(約165億円)のシリーズC資金調達を実施しました。同社はAI技術を活用して従来型地熱資源を発見し、今後3-4年で米国西部に6つの発電所を建設する計画です。昨年はニューメキシコ州で既存プラントを活性化し、ネバダ州では表面に兆候のない「ブラインド」地熱システムを発見しました。2030年までに発電コストを45ドル/MWh以下に抑え、天然ガス火力より安価な電力供給を目指します。データセンター向けの安定的なクリーン電源として期待されています。

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来週名古屋で開催されるTechGALA 2026 のご案内

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