Vol.196:米国「危険性認定」撤回の衝撃 - 政策逆風下でも動く422億ドル投資と21カ月の中国データ

こんにちは。新しく登録してくださった皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・気候テック関連のニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで750名以上、Linkedinニュースレターでは1,130名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。
ご登録がまだの方は以下のボタンからぜひご購読ください🙂
【⭐📰 今週のニュース・トピックス】
🌍 トランプ氏、温室効果ガス規制の法的根拠「危険性認定」を撤回 [BBC NEWS Japan]
📰 米気候政策の根幹崩壊へ――保守派による16年間の組織的キャンペーン [The New York Times]
🎓 「揺らぐ気候変動対策」江守正多・東京大学教授が警鐘 [日本記者クラブ]
⚡ 保守系政党・論客はなぜ再エネに厳しいのか、エネルギー安保をめぐる誤解 [日経エネルギー Next]
🌍 EU炭素価格、揺らぐ基盤 独首相発言で8%急落 [Financial Times]
⚡ 2030年、世界の電力供給の半分が再エネ・原子力に [IEA]
📉 中国CO2排出、21カ月横ばい クリーンエネが需要上回る [Carbon Brief]
🤖 AI気候テック企業がVC投資けん引 件数減も総額維持 [Pitchbook]
☀ 米太陽光建設SOLV、60億ドルでIPO データセンター需要追い風 [Latitude Media]
核融合企業が4.5億ドル調達 原子力分野に投資集中 [Heatmap News]
🎧 音声概要版をお聴きいただけます。 [Powered by NotebookLM ]
📬 英語版「Japan Climate Curation」 は毎週水 or 木曜日配信。日本の気候変動・脱炭素・気候テック関連ニュースのうち、英語圏の記事を中心にピックアップし英語でお届けしています。
🇯🇵エネルギー政策の転換点 原子力が超党派の支持獲得、深まる安全保障の矛盾 [2/12 Japan Climate Curation #190]
🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要 : Japan Climate Curation vol. 190
*免責事項:本ニュースレターでは要約・翻訳・編集にChatGPT、Claude、Gemini、NotebookLM等の生成AIツールを使用しています。
👉*先週号『Vol.195 :中国543GW、米国▲5.4兆円 - エネルギー超大国の明暗と、選挙で問われる日本の針路』[2026/2/7]を見逃した方はこちらから
👉1年前の今頃は... vol. 146『深まる政策ギャップと新たな潮流~仏メディアの挑戦、核融合計画前倒し、『脱炭素おじさん』現象』[2025/2/15]
【1】🌍 トランプ氏、温室効果ガス規制の法的根拠「危険性認定」を撤回 詐欺の基盤と [2/13 BBC NEWS Japan]

トランプ米大統領は12日、2009年にオバマ政権が策定した温室効果ガスの「危険性認定」を撤回すると発表しました。この認定は、CO2やメタンなど6つの温室効果ガスを公衆衛生への脅威と位置づけ、自動車排出規制をはじめ、発電所、石油・ガス部門、埋立地、航空機に至るまで、連邦政府の広範な気候政策の法的根拠となっていました。トランプ氏は民主党の気候政策を「グリーン・ニュー・スキャム(詐欺)」と批判し、政権側は自動車1台あたり2400ドルのコスト削減と1兆ドル超の節約を主張しています。一方、環境保護団体は燃料費として1兆4000億ドルの追加負担、最大5万8000人の早期死亡、3700万件のぜんそく発作増加を予測しています。オバマ元大統領は異例のコメントで「化石燃料産業の利益のため国民を危険にさらす」と反論しました。撤回の根拠となったエネルギー省報告書については、委員選出が偏っており連邦判事が法違反と判断しています。この措置は最高裁まで争われる見通しで、政権側が勝訴すれば新法制定なしには次期政権も覆せない恒久的な政策転換となる可能性があります。世論調査では有権者の75%が政府によるCO2規制を支持しているとのこと。米国市場向け環境基準の緩和は一見コスト削減に見えますが、EU・中国など主要市場では依然として厳格な規制が継続します。日本の自動車メーカーは市場ごとに異なる仕様を開発する必要があり、むしろ複雑性とコストが増大する可能性があります。
【2】📰 米気候政策の根幹崩壊へ――保守派による温室ガス「危険認定」撤回のための16年間の組織的キャンペーン [2/9 The New York Times]
NYT紙の調査報道によると、この撤回は2022年から秘密裏に準備されてきた組織的キャンペーンの成果であると指摘されています。保守派活動家4人(Russell Vought、Jeffrey Clark、Mandy Gunasekara、Jonathan Brightbill)が中心となり、ヘリテージ財団から200万ドルの資金を受けて大統領令草案や法的論拠を準備しました。16年間の闘いを主導した活動家Myron Ebellは*「完全勝利に近い」と述べています。注目すべきは、石油大手を含む数百社の米企業が既に気候変動の現実を受け入れている中、少数のイデオロギー主導の活動家が政策転換を実現させた点です。これは企業利益ではなく「気候変動は詐欺」という信念に基づく純粋なイデオロギー戦略であると伝えられています。
【3】🎓 「揺らぐ気候変動対策」江守正多・東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長・教授 [2025/12/2 日本記者クラブ]
東京大学の江守正多教授は、危険性認定撤回の動きについて「組織的な気候変動懐疑論・否定論活動が政権中枢に進出した」と分析し、日本のメディアに対して「これを報じないことは状況を放置し加担することになる」と警鐘を鳴らしています。日本はCOP30で採択された「気候情報誠実宣言」に参加しておらず、偽情報・誤情報への対処姿勢が問われています。一方で江守教授は、日本の世論調査では7割が気候変動を認識しており「捨てたものではない」と評価。ただし、アメリカの規制撤回が日本企業の脱炭素投資や政策スタンスに影響を与える可能性があり、今後の動向を注視する必要があると指摘しています。
【4】⚡ 保守系政党・論客はなぜ再エネに厳しいのか、エネルギー安保をめぐる誤解 [2/7 日経エネルギー Next]
日本の保守系政党がエネルギー自給率向上を強調しながら純国産の再エネを低評価する矛盾について、エネルギー政策研究所の山家公雄氏が分析しています。安全保障の最大課題は燃料の輸入依存であり、LNG・石炭は100%近く、原子力燃料もほぼ100%を輸入に依存しています。一方、太陽光パネルなど設備は導入時のみ輸入で、運転開始後は燃料輸入なしに数十年稼働します。電気料金高騰の主因は2021-2023年の燃料価格上昇(LNG輸入価格が2倍以上)であり、再エネ賦課金は過去10年で2円/kWhから4円/kWhへの上昇にとどまり限定的です。世界では再エネの分散型特性とレジリエンス(回復力)が安全保障上評価され、米軍施設でも再エネ+蓄電池のマイクログリッド導入が進んでいます。保守派が再エネに距離を置く背景には、「燃料は安定調達可能」「国産設備」という無意識の前提、中央集権的な電力管理の発想、既存エネルギー産業構造との関係、再エネを環境運動・リベラルと結びつける政治的ラベリングがあると指摘しています。
【5】🌍 EU炭素価格、揺らぐ基盤 独首相発言で8%急落 [2/13 Financial Times]
ドイツのメルツ首相がEU排出量取引制度(ETS)の見直しや延期の可能性に言及したことを受け、炭素価格が8%近く急落して72.80ユーロとなりました。2005年開始のETSは無償割当の段階的廃止が進み、企業負担が増加。欧州企業は「炭素コストは欧州独自の負担」と反発していますが、実際には世界80の炭素価格制度が存在します。EUは今年から導入した国境炭素調整メカニズム(CBAM)により、他国の炭素価格制度導入を促す戦略を展開。ブラジル、トルコ、中国などが実際に制度を導入・拡大していますが、ETSの弱体化はこの世界的な動きを損なう懸念があり、欧州委員会は今夏のレビューで対応を検討します。フォン・デア・ライエン委員長は「これらの財源は産業から得られたものであり、産業そのものに再投資されなければならない」と述べ、ETS収入の産業脱炭素化への再投資を提唱しています。
【6】⚡ 2030年、世界の電力供給の半分が再エネ・原子力に / IEA 「Electricity 2026」レポート [2/6 IEA]

Rising electricity use in industry, the uptake of EVs, higher air conditioning use and the growth of data centres & AI are leading this expansion 👉 iea.li/3ZQdHFY
国際エネルギー機関(IEA)の最新報告によると、世界の電力需要は2026〜2030年に年率3.6%で成長し、過去10年の平均を50%上回る見込みです。成長の主な要因はAI、データセンター、電気自動車、空調で、中国が世界の需要増加の約50%を占めます。先進国でも15年ぶりに電力需要が加速しており、米国では成長の半分をデータセンターが牽引します。供給面では、再生可能エネルギーと原子力が2030年までに世界の電力供給の約半分を占める見通しで、太陽光発電が年間600TWh以上増加します。石炭火力発電は減少しますが、2030年時点でも単一の電源として最大規模を維持します。一方、送電網への投資を現在の年間4000億ドルから2030年までに50%増やす必要があり、世界で2500GW相当のプロジェクトが系統接続待ちの状態にあります。電力部門のCO2排出量は2030年まで横ばいで推移する見通しです。

image credit: IEA
【7】📉 中国CO2排出、21カ月横ばい クリーンエネが需要上回る [2/12 Carbon Brief]
中国のCO2排出量は2025年に0.3%減少し、2024年3月から21ヶ月連続で横ばいまたは減少する傾向が続いています。太陽光発電が前年比43%増、風力14%増、原子力8%増と急拡大し、クリーンエネルギーの成長が電力需要の伸びを上回りました。エネルギー貯蔵容量も記録的な75GW増加し、ピーク需要増加の55GWを超えました。輸送、電力、建材などほぼ全セクターで排出が減少した一方、化学工業は12%増加が唯一の例外です。炭素強度は2025年に4.7%減少しましたが、2030年のパリ協定目標達成には今後5年間で23%の削減が必要です。中国のピークアウト時期が注目されます。

image credit: Carbon Brief
【8】🤖 AI気候テック企業がVC投資けん引 件数減も総額維持 [2/7 Pitchbook]
2025年の世界の気候テックスタートアップへのVC投資は総額422億ドルと前年の428億ドルからほぼ横ばいでしたが、取引件数は2,906件から2,130件へと大幅に減少し、少数の企業への集中投資が顕著になりました。特にAI気候テック企業への投資額は過去最高を記録しています。トランプ政権2期目で風力・太陽光が政策的に後退する中、投資家は原子力・地熱技術と、AIによるリアルタイムエネルギー監視・消費管理技術、AIデータセンター向け高効率冷却技術に資金を集中させています。AIインフラの電力需要急増が、エネルギー生産効率化技術への投資を加速させる構図です。

image credit: PitchBook
【9】☀ 米太陽光建設SOLV、60億ドルでIPO データセンター需要追い風 [2/12 Latitude Media]
太陽光・蓄電建設請負のSOLV Energyが米国株式市場にデビューし、約60億ドルの評価額を獲得しました。米国取引所で上場した初の純粋な太陽光・蓄電EPC企業*で、2008年のPrimoris Services Corporation以来のエネルギーEPC企業のIPOです。同社は約80億ドルのプロジェクトバックログを持ち、主にギガワット規模のデータセンタークラスター需要に対応するユーティリティ向けです。株価は目標25ドルを上回る30ドルで開始し、5億ドル以上を調達しました。トランプ政権の再エネ批判にもかかわらず、データセンターの電力需要急増により、クリーンエネルギー株は過去18ヶ月S&P500を上回る好調さです。CEOは*「我々はエネルギー不足の状態にある。デジタル経済を支えるためにエネルギーを構築する必要がある」と述べています。
[*EPC企業とは: Engineering(設計)+ Procurement(調達)+ Construction(建設)の頭文字で、プロジェクトの設計・調達・建設を一括して請け負う企業を指します]
【10】 核融合企業が4.5億ドル調達 原子力分野に投資集中 [2/12 Heatmap News]
核融合企業のInertia Enterprisesがレーザー慣性閉じ込め方式の商業化に向け、4.5億ドルのシリーズA資金調達を実施しました。Bessemer Venture Partners主導で、Alphabet傘下のGVも参加。ローレンス・リバモア国立研究所で世界初の科学的ブレークイーブンを達成した技術の商業化を目指し、10年以内の実用化を目標としています。一方、Alva Energyは既存の加圧水型原子炉の出力を20-30%増強する技術で3300万ドルを調達。米国全体で約10GWの追加容量創出を見込みます。また、Ore Energyは鉄-空気電池の100時間グリッド接続パイロットをフランスで完了し、Form Energyの欧州競合として台頭しています。CEOは*「実証された科学に基づき、世界最高出力のレーザーと初のギガワット規模商用核融合発電所を送電網に接続する」と述べています。
お読みいただきありがとうございました。ニュースレターが役に立ったと感じたら、ぜひLinkedInやSNSで「いいね」やシェアをお願いします。
気候変動・脱炭素・気候テック領域のリサーチやコンサルティングのご相談も承っています。お気軽にご連絡ください。
では、よい週末を🙂
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | socialcompany.org 𝕏 @SocialCompany / Bluesky socialcompany.bsky.social
すでに登録済みの方は こちら





