Vol.197:規制の法的根拠が消えても排出量は下がる―共和党支持者47%が反発、IEA圧力・最高裁・変圧器企業1.4億ドル調達が示す脱炭素の新局面

こんにちは。新しく登録してくださった皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・気候テック関連のニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで770名以上、Linkedinニュースレターでは1,130名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。
ご登録がまだの方は以下のボタンからぜひご購読ください🙂
【⭐📰 今週のニュース・トピックス】
⚖ 米「危険性認定」廃止の波紋――法的根拠・排出量への影響・各界反応を徹底解説 [Carbon Brief]
🏥 トランプの環境規制撤廃、公衆衛生リスクと政治的逆風が鮮明に [Financial Times]
🌐 米、IEAに「気候重視やめよ」と圧力 脱退も辞さずと警告 [The New York Times]
🇺🇸 トランプ政権の気候政策撤廃に対抗、民主党系州が独自施策を加速 [The New York Times]
⚖ 米最高裁、トランプ関税を違憲と判断 太陽光・蓄電池業界に恩恵も課題残る [Heatmap News]
🔋 ゲイツ財団系気候テックファンド、新規投資を凍結・人員削減へ [Bloomberg Green]
🔌 次世代変圧器スタートアップに相次ぎ大型資金調達 電力網とデータセンター需要が追い風 [Heatmap News]
💡 IEA報告書:エネルギーイノベーション、気候から安全保障へ優先軸が転換 [IEA]
🇪🇹 エチオピア、ガソリン車輸入を全面禁止 中国製EVと水力発電で急速普及 [Bloomberg Green]
🌏 環境省、第3次気候変動影響評価報告書を公表――適応計画を2026年度中に改定へ [環境省]
🎧 音声概要版をお聴きいただけます。 [Powered by NotebookLM ]
*先週の音声概要アンケートへのご回答ありがとうございました!「聴いたことはない」が最多という結果でした。まだお試しでない方もよかったらぜひ一度聴いてみてください。工夫しながら改善していきます🙂

📬 英語版「Japan Climate Curation」 は毎週水 or 木曜日配信。日本の気候変動・脱炭素・気候テック関連ニュースのうち、英語圏の記事を中心にピックアップし英語でお届けしています。
🇯🇵断層線:原子力が再稼働する一方、水素は急失速し、日本の気候コストが顕在化する[2/18 Japan Climate Curation #191]
🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要 : Japan Climate Curation vol. 191
*免責事項:本ニュースレターでは要約・翻訳・編集にChatGPT、Claude、Gemini、NotebookLM等の生成AIツールを使用しています。
👉*先週号『Vol.196:米国「危険性認定」撤回の衝撃 - 政策逆風下でも動く422億ドル投資と21カ月の中国データ』[2026/2/14]を見逃した方はこちらから
👉1年前の今頃は... vol. 147『気候変動の現在地2025:政策・技術・投資 - グローバルトレンドと日本の針路』[2025/2/22]
【1】⚖ 米「危険性認定」廃止の波紋――法的根拠・排出量への影響・各界反応を徹底解説 [2/16 Carbon Brief]

Read here: buff.ly/11Rtah7
気候変動専門メディアCarbon Briefが、トランプ政権による「危険性認定」廃止の全貌を法的・科学的・政策的観点から包括的に解説しています。廃止は2月18日に連邦官報に掲載され、4月20日に発効予定ですが、カリフォルニア州やシエラクラブ、アースジャスティス、NRDCなど複数の団体がすでに提訴しており、最終的に最高裁まで争われる見通しです。法的争点の核心は、EPAが「クリーンエアアクトは地域・局所的な大気汚染を対象とし、温室効果ガスのような広域混合ガスへの規制権限はない」と主張する点で、これは2007年の最高裁判決(Massachusetts v. EPA)と真っ向から対立します。法律専門家はEPAの論理に「重大な法的脆弱性がある」と指摘しています。排出量への影響についてRhodium Groupは、連邦規制31項目の廃止シナリオでも、再エネコスト低下・州政策・市場動向により米国排出量は2035年時点で2005年比26〜35%減を維持すると分析しています(規制存続なら32〜44%減)。ただしいずれも米国の国際公約(61〜66%減)には大きく及ばず、気候リスクが加速する時間軸が早まることへの懸念も示されています。

image credit: CarbonBrief & Rhodium Group
【2】🏥 トランプの環境規制撤廃、公衆衛生リスクと政治的逆風が鮮明に [2/18 Financial Times]
FTのMoral Moneyは、トランプ政権の環境規制撤廃を気候変動だけでなく公衆衛生の観点から分析しています。危険性認定の廃止にとどまらず、石炭火力発電所の延命(1億7,500万ドルの連邦支出)、銅製錬所への鉛・ヒ素・水銀規制の2年免除、発がん性物質ホルムアルデヒドの「安全」基準の引き上げ、PFAS(永遠の化学物質)の飲料水規制緩和など、広範な脱規制が進んでいます。注目すべきは世論との乖離です。AP通信の調査では、共和党支持者の47%が厳格な大気・水質規制を「極めて重要」と評価しており、トランプの政治的支持基盤内でも環境政策への反発が広がっています。トランプ政権の環境・エネルギー政策は、調査した13分野の中で支持率が最低(純支持率マイナス27%)となっています。
【3】🌐 米、IEAに「気候重視やめよ」と圧力 脱退も辞さずと警告 [2/19 The New York Times]
トランプ政権のクリス・ライト・エネルギー長官は、国際エネルギー機関(IEA)のパリ年次閣僚会合において、IEAが「気候擁護組織と化している」と批判し、2050年ネットゼロ達成に向けたロードマップの公表をやめなければ米国は脱退すると警告しました。IEAは1974年の石油危機を契機に設立され、現在は32カ国が加盟。米国は予算の約14%を負担しています。ライト長官の圧力を受け、IEAは昨年のアウトルックに「現行政策シナリオ」を復活させており、ネットゼロシナリオの継続についてはビロル事務局長が明言を避けました。フランスのマクロン大統領はIEAの活動を支持し、欧州は脱炭素の方向性を堅持すると表明。米欧間の気候外交の亀裂が一層深まっています。
【4】🇺🇸 トランプ政権の気候政策撤廃に対抗、民主党系州が独自施策を加速 [2/18 The New York Times]
トランプ政権が温室効果ガスの規制根拠となる「危険性認定」を撤廃するなど連邦レベルでの気候政策を次々と解体する中、民主党が主導するコロラド・バージニア・カリフォルニアなどの州が独自の気候施策を加速させています。コロラドはEV購入に最大2,000ドルの税控除を導入予定、バージニアは大規模太陽光発電所の建設規制を緩和、カリフォルニアは山火事による保険費用上昇分を化石燃料企業に負担させる法案を検討中です。専門家は「州のパッチワーク政策は連邦政策の代替にはならない」としながらも、2005〜2023年に州・準州全体で排出量を24%削減した実績を踏まえ、今後3年間は州主導でトレンドを維持できると指摘しています。
【5】⚖ 米最高裁、トランプ関税を違憲と判断 太陽光・蓄電池業界に恩恵も課題残る [2/20 Heatmap News]
米連邦最高裁は、トランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に発動したカナダ・中国・メキシコ向け「フェンタニル」関税および世界各国への「相互」関税を違憲と判断しました。クリーンエネルギー業界への影響としては、太陽光モジュールや蓄電池など関税負担が大きかった製品のコスト低下が期待されます。ただし中国製品に対する独自の追加関税や反ダンピング関税は別途維持されるため、恩恵は限定的です。また、すでに支払われた関税の還付については、サプライヤーと開発業者間の契約に還付規定がないケースが多く、法的紛争が多発する見通しです。トランプ政権は別の権限で10%のグローバル関税を最長150日間課す方針も示しており、不確実性は続きます。
【6】🔋 ゲイツ財団系気候テックファンド、新規投資を凍結・人員削減へ [2/18 Bloomberg Green]
ビル・ゲイツが主導する気候技術支援組織「Breakthrough Energy」は、新興グリーン技術のスケールアップを目的に2021年に設立したCatalystファンドの新規投資を停止しました。同ファンドは10億ドル超を調達し、10社の気候テックスタートアップを支援してきましたが、「既存の投資先企業の管理・支援」へと業務を移行することを決定。代表のマリオ・フェルナンデス氏を含む複数の従業員が解雇されました。背景には、トランプ政権によるIRA(インフレ削減法)関連の気候政策の大幅な後退があり、最前線の技術への資金調達環境が悪化しています。ゲイツ氏は1月のメモで「市場だけでは気候変動を解決できない」と政府支援の必要性を訴えていました。
【7】🔌 次世代変圧器スタートアップに相次ぎ大型資金調達 電力網とデータセンター需要が追い風 [2/20 Heatmap News]
気候テック分野の資金調達ニュースとして、今週は「変圧器」関連スタートアップが注目を集めました。Heron Powerがa16zとBreakthrough Energy Venturesの共同リードで1億4,000万ドルのシリーズBを調達。DG Matrixもエンジン・ベンチャーズ主導で6,000万ドルのシリーズAを完了しました。両社ともに半導体を活用した次世代「固体変圧器(ソリッドステートトランスフォーマー)」を開発しており、電化加速とデータセンター急増で2019年比2倍以上に膨らんだ変圧器需要に対応します。また、ヒートポンプ導入支援プラットフォームのZero Homesが1,680万ドル、サステナブルファッション向けハイブリッドファンドの立ち上げも発表されました。
【8】💡 IEA報告書:エネルギーイノベーション、気候から安全保障へ優先軸が転換 [2/17 IEA]
IEAが発表した「エネルギーイノベーションの現状2026」によると、世界のエネルギー革新投資は転換期を迎えています。専門家の80%がエネルギー安全保障をイノベーションの最大動機と位置づけ、気候変動対策を上回りました。公的エネルギーR&D支出は2024年にピークを過ぎ、2025年はさらに2%減の約550億ドルへ低下。VC投資も3年連続で減少し270億ドルに留まりました。一方でバッテリー関連特許が全エネルギー特許の40%を占める前例のない集中が起きており、中国が国際エネルギー特許で米国・欧州・日本の2倍を記録。日本は固体電池・ペロブスカイト太陽電池・核融合・アンモニア船舶エンジンで存在感を示し、GX基金(約75兆円)を通じた安定した研究開発投資で競争優位を維持しています。
【9】🇪🇹 エチオピア、ガソリン車輸入を全面禁止 中国製EVと水力発電で急速普及 [2/18 Bloomberg Green]

エチオピアは2024年、気候目標ではなく財政難を主因として化石燃料車の輸入を禁止し、EV関税を大幅に引き下げました。この政策転換を受け、EV普及率は2年間で1%未満から約6%へと急上昇し、世界平均の4%を上回っています。普及を支えているのは、2025年に完成したグランド・エチオピア・ルネサンスダム(515万kW)による安価な水力電力(約0.1ドル/kWh)と、BYD・長安汽車などの中国製低価格EVです。政府はEV組立工場を現在の17か所から2030年までに60か所へ拡大する目標を掲げ、2027年のCOP32開催国として50万台普及を目指しています。充電インフラの不足や農村部の電力アクセスなど課題も残ります。
【10】🌏 環境省、第3次気候変動影響評価報告書を公表――適応計画を2026年度中に改定へ [2/16&17 環境省]
環境省は2026年2月16日、気候変動適応法に基づく「第3次気候変動影響評価報告書」を公表しました。農業・水資源・自然生態系・自然災害・健康・産業経済・都市生活の7分野80項目について、重大性・緊急性・確信度の3軸で影響を評価しています。従来の2段階評価を3段階に細分化し、特に強い影響を受ける地域・対象を明示した点が今回の特徴です。産業・経済活動分野では、沿岸部の製造拠点・港湾インフラへの浸水リスク、豪雨・土砂災害による物流インフラの寸断、夏季の電力ピーク負荷の増大、風力発電量の変動など、幅広い業種への波及が具体的に示されています。翌17日には第9回気候変動適応推進会議が開催され、同報告書を踏まえた適応計画の改定議論が正式に始動。2026年度内の閣議決定に向け、年末までに改定案をまとめ、パブリックコメントを実施する予定です。
2/16 第3次気候変動影響評価報告書の公表についてhttps://www.env.go.jp/press/press_02915.html
2/17 令和和8年度の気候変動適応計画見直しに向けた議論の開始についてhttps://www.env.go.jp/press/press_02939.html
お読みいただきありがとうございました。ニュースレターが役に立ったと感じたら、ぜひLinkedInやSNSで「いいね」やシェアをお願いします。
*先週に続き、簡単なアンケートによかったらご協力ください。今後の内容・構成の改善に活用させていただきます🙂🗳🙏 「その他」を選択した方はこちらの自由記入フォームからぜひご回答ください。
気候変動・脱炭素・気候テック領域のリサーチやコンサルティングのご相談も承っています。お気軽にご連絡ください。
では、よい週末を🙂
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | socialcompany.org 𝕏 @SocialCompany / Bluesky socialcompany.bsky.social
すでに登録済みの方は こちら









