Vol.199 イラン危機でLNG供給が崩壊――MAGAは太陽光に転じ、中国は水素建設を独走、EUは炭素市場を自ら壊す
*3/17〜19のスマートエネルギーウィーク(東京ビッグサイト)期間中に、読者の皆さんとのカジュアルなmeetupを検討中です。ご興味あればぜひ👇

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【⭐📰 今週のニュース・トピックス】
☀ イランとの戦争が招く「石炭回帰」と「太陽光加速」 [Heatmap]
🇨🇳 中国「第15次五カ年計画」で気候目標を公表 [Carbon Brief]
🇪🇺 EUの気候政策後退が「先行投資組」を直撃 [FT]
☀ MAGAが突然「太陽光推進」に転じた理由 [Washington Post]
🇪🇺 欧州の気候テックが「安全保障・自律性」と融合 [FT]
🔵 グリーン水素プロジェクトの大規模キャンセル相次ぐ [Chemistry World]
⚡ JPモルガン、気候テック投資の最前線を分析 [J.P.Morgan]
⚡ Sightline Climate、電力特化ニュースレター「Powerstack」創刊 [Powerstack]
💰 気候テック資金調達ラウンドアップ [Heatmap]
🌡 気象庁「気温40℃以上の日の呼び方」募集 [東京新聞]
🎧 音声概要版をお聴きいただけます。 [Powered by NotebookLM ]
📬 英語版「Japan Climate Curation」 は毎週水 or 木曜日配信。日本の気候変動・脱炭素・気候テック関連ニュースのうち、英語圏の記事を中心にピックアップし英語でお届けしています。
⚡ 岐路に立つ日本のエネルギー ── LNGショック、5,500億ドルの原子力賭け、そして電力網の現実 [3/5 Japan Climate Curation #193]
🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要 : Japan Climate Curation vol. 193
*免責事項:本ニュースレターでは要約・翻訳・編集にClaude、Gemini、Perplexity、NotebookLM等の生成AIツールを使用しています。
👉*先週号『Vol.198「ネットゼロは死んだ」、EU炭素価格は急落――それでも蓄電池コストは27%減、Googleは20年分の再エネを契約』[2026/2/28]を見逃した方はこちらから
👉1年前の今頃は... vol. 149『三井住友FG、NZBA脱退へ:トランプ政権下で加速する金融機関の潮流変化』[2025/3/1]
【1】 ☀ イランとの戦争が招く「石炭回帰」と「太陽光加速」── エネルギー危機の二つの顔 [3/6 Heatmap News]
イラン危機によるホルムズ海峡封鎖でLNG・原油の供給が滞り、各国は短期的な石炭回帰と長期的な再エネ加速という二つの方向性に直面しています。アジア向けカタール産LNGの約90%が供給途絶のリスクにさらされており、パキスタン・バングラデシュ等の貧困国は石炭に頼らざるを得ない状況です。一方、専門家は「化石燃料の価格競争力に対し、クリーンエネルギーが初めて本格的に対抗できる危機」と指摘します。パキスタンの急速な太陽光普及(2021〜24年で3倍超)はその先例であり、今回の危機が再エネ導入を構造的に加速させる可能性があります。
【2】🇨🇳 中国「第15次五カ年計画」で気候目標を公表 ── 炭素強度17%削減、再エネ10年で倍増へ [3/5 Carbon Brief]
中国は「両会(全人代・政協)」で第15次五カ年計画草案を公表し、2030年までに炭素強度を17%削減する拘束的目標を設定しました。再生可能エネルギーは「10年で倍増」を掲げる一方、石炭消費の上限や排出ピーク時期は明記されませんでした。2026年の炭素強度削減目標は3.8%と設定されましたが、専門家からは「実質的に排出量を0.5〜1%増やしても達成可能な緩い目標」との批判が出ています。また2025年の中国のエネルギー・産業排出量は前年比0.3%減少し、太陽光発電量が初めて風力を上回ったことも確認されました。
【3】🇪🇺 EUの気候政策後退が「先行投資組」を直撃 ── ETS弱体化で脱炭素の勝者と敗者が逆転する懸念 [3/2 Financial Times]
EUが競争力強化を名目に気候政策の後退を進めるなか、グリーン転換に早期投資した企業や国が不利益を被る「先行者ペナルティ」問題が深刻化しています。イタリアの産業相がETS(排出量取引制度)の一時停止を要求し、ドイツのメルツ首相の改革示唆発言だけで炭素価格が92ユーロ台から70ユーロ以下に急落しました。グリーン鉄鋼・セメント・水素など脱炭素投資を先行実施した企業は「政策の予測可能性があるからこそ投資した」と反発しており、ETS維持を求める北欧5カ国とイタリア・ポーランド等の間でEU内の亀裂が拡大しています。
【4】☀ MAGAが突然「太陽光推進」に転じた理由 ── AIと対中競争が保守派のエネルギー観を変えた [3/2 The Washington Post]
トランプ支持層(MAGA)の間で太陽光発電への評価が急変しています。ニュート・ギングリッチ元下院議長やケリーアン・コンウェイらが相次いで支持を表明し、エネルギー長官クリス・ライトも「グリッドへの商業的役割がある」と軟化しました。背景にあるのはAIデータセンターによる電力需要の急増と対中競争への危機感です。太陽光は新規電源の中で最速・最安の選択肢であり、EIAによれば今年の米国新規電源の79%を太陽光・蓄電池が占める見込みです。気候変動はほぼ言及されず、「エネルギー安全保障」と「経済合理性」が保守派を動かしています。
【5】 🇪🇺 欧州の気候テックが「安全保障・自律性」と融合 ── 地政学の変化が投資の文脈を塗り替える [3/5 Financial Times]
トランプ政権復帰後、欧州の気候テックへの投資額は2025年に2020年以来の最低水準に落ち込み、前年比23%減となりました。一方で「気候」単独ではなく、エネルギー安全保障・防衛・サプライチェーン自律性と結びついた技術への資本流入は拡大しています。グリーンプレミアム型(持続可能航空燃料・グリーンセメント等)は苦境に立つ一方、製造・素材・AIインフラと重なる気候技術には防衛ファンドからの資金も流入しています。投資家の間では「気候テックが消えたのではなく、他分野に溶け込んだ」との見方が主流になりつつあります。
【6】 🔵 グリーン水素プロジェクトの大規模キャンセル相次ぐ ── 中国が建設主導、欧米は「過大な期待」の修正局面へ [3/5 Chemistry World]
2025年に世界で約60件のクリーン水素プロジェクトがキャンセルされ、年産490万トン相当の生産能力が失われました。BPのオマーン・英国案件やアルセロール・ミタルのドイツ製鉄所計画など大型案件が相次いで中止されています。需要家が割高なグリーン水素の購入に踏み切れず、オフテイク契約が結べないことが主因です。一方、実際に建設が始まったプロジェクトの約半分は中国が占めており、欧米との対照が鮮明です。専門家は「水素の本来の用途はアンモニア・鉄鋼・メタノール等の化学原料に絞られる」と指摘し、エネルギー用途への過大な期待は修正を迫られています。
【7】⚡ JPモルガン、気候テック投資の最前線を分析 ── グリッド・蓄電池・重要鉱物が3大主役に [3/3 J.P.Morgan]
JPモルガンが2026年版の気候テック・セクターレポートを発表しました。米国では電力需要がデータセンター拡大と電化進行により急増しており、2028年までにAI関連データセンターが電力需要を倍増させると推計されています。投資の焦点はグリッドインフラ、蓄電池技術、重要鉱物の3分野に集中しており、2025年の気候テックVC投資は177億ドルに達しました。特に重要鉱物分野は2020年比でディール件数が倍増し、グリッドテック投資は過去最高を更新しています。一方で、スタートアップがパイロット段階から商業スケールへ移行する「FOAKの壁」における資金調達ギャップが業界全体の課題として浮上しています。
【8】⚡ Sightline Climate、電力セクター特化の新週刊ニュースレター「Powerstack」を創刊 [3/6 PowerStack]
気候テック調査会社Sightline Climateは、電力セクターに特化した週刊ニュースレター「Powerstack」を創刊しました。毎週木曜日、1万件超のシグナルから重要情報を抽出し、FERC裁定・容量オークション・ハイパースケーラーの電力調達などを解説します。創刊号ではGoogleがForm EnergyのIron-Air電池300MW/30GWhを契約した件を詳報。100時間蓄電という特性がデータセンターの立地選択肢を広げ、系統連系の優先権獲得につながる戦略的優位性を分析しています。今後10年で1兆ドル規模の投資判断が下される電力システムを主戦場と位置づけています。*FERC(ファーク:Federal Energy Regulatory Commission)=米国連邦エネルギー規制委員会
【9】💰 気候テック資金調達ラウンドアップ ── 不動産脱炭素・鉄燃料・東アフリカEV・洋上データセンターに資金集まる [3/6 Heatmap News]
今週の気候テック資金調達では四つの注目案件が発表されました。米Galvanize(トム・スタイアー共同創業)は商業不動産の脱炭素化に特化した初のリアルエステートファンドで3億7,000万ドルを調達し、すでに11都市15棟でオンサイト太陽光・断熱改修等を実施しています。オランダのRiftは鉄粉を空気中で燃焼させCO2ゼロで2,000℃の高温熱を生成する技術で1億3,200万ドルを確保し、EUイノベーションファンドの助成も得て初の製造拠点建設に着手します。東アフリカでバッテリー交換式電動バイクを展開するZenoは2,500万ドルのシリーズAを完了し、ケニア・ウガンダ4都市で800台・150カ所のスワップステーションを運営、受注残は2万5,000件超に達しています。洋上風力スタートアップのAikidoは風力発電・蓄電池・水中データセンターを一体化した浮体プラットフォームを公開し、2028年の英国での商業展開を目指しています。イラン危機によるエネルギー価格上昇を追い風に、不動産・産業熱・モビリティ・海洋インフラと幅広い分野で脱炭素投資が継続しています。
【10】🌡 「煩暑日」「日暑日暑日」…気象庁「気温40℃以上の日の呼び方」募集にSNSは大喜利状態 本当に心配なのは [3/5 東京新聞]
気象庁は最高気温40度以上の日の呼称を公募するアンケートを3月29日まで実施しています。「酷暑日」「激暑日」「超猛暑日」など13候補が並び、SNS上では「煩暑日(ぼんじょび)」などユニークな案が飛び交い大喜利状態となっています。背景には深刻な実態があります。昨夏に40度超を記録した観測点は延べ30カ所に上り、平均気温は統計開始以来の最高値を更新しました。気象予報士の森田正光氏は「地球温暖化とヒートアイランド現象が主因」と指摘。一方、若者気候訴訟の原告は「なぜ暑いのかという問いから目を背けないで」と訴えており、命名の盛り上がりが気候変動への関心喚起につながるかが問われています。
参加予定イベント(*スマートエネルギーウィーク期間中に会場 or 会場近くにてカジュアルなミーティング/meetupなどの開催を検討中です。ご興味ある方は以下のフォームからお気軽にお申込みください)
SusHi Tech TOKYO 2026 Sustainable High City Tech Tokyo 2026年4月27日(月)、28日(火)
SMART ENERGY WEEK 2026 / 2026年3月17日(火)~19日(木) 10:00-17:00 ◎ 東京ビッグサイト
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