三井住友FG、NZBA脱退へ:トランプ政権下で加速する金融機関の潮流変化

トランプ政権復帰に伴い、三井住友FGをはじめとする金融機関がネットゼロ枠組みから脱退する動きが加速。「グリーンハッシング」や「レジリエンス」という新たな概念が登場する一方、日本では2027年度から排出量取引制度の導入が決定。
市川裕康 2025.03.08
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  • 日本は世界平均より速い気候変動の加速に直面し、四季やサケの生息数に影響を及ぼすなど、複数の環境問題に直面しています。政府の取り組みには排出量取引や原子力発電の拡大が含まれる一方、北部地域では森林火災が猛威を振るっています。トヨタのような企業は水素ソリューションを追求し、SMFGは国際的な気候枠組みから撤退しています。その間、自動車メーカーはソフトウェア人材の不足に苦しみ、東京電力は安全性向上工事や建設問題により原子力発電所の再稼働を遅らせています。

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

トランプ政権による気候変動対策後退の動きが止まりませんね。排出量取引、洋上風力発電(EEZ内まで設置拡大が閣議決定)など、再エネ推進の動きは静かに進んでいるように思います。【9】でご紹介のセミナーアーカイブ動画を拝見するとグローバルで再エネが広がっていることを思い知らされます。また、個人でできることととして【10】でご紹介のドイツにおけるバルコニー太陽光発電にとても興味があります。日本では規制の関係でまだ利用できないようですが、4月から東京・神奈川で始まる屋根置き太陽光義務化、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の広がり、ペロブスカイト発電の実用化などと併せ、日本でも広がってほしいと願ってます。

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  • 三井住友フィナンシャルグループは、「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から脱退し、日本の銀行としては初の事例となった。野村ホールディングスも同様の検討を進めている。これはトランプ政権下で、米国の主要銀行(JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスなど)が相次いで脱退した流れを受けたもの。米共和党議員らはNZBAの活動を「気候カルテル」と批判し、反トラスト法違反の可能性を指摘している。三井住友FGは枠組み脱退後も独自に気候変動対応を継続する方針で、みずほFGや三菱UFJFGも対応を検討中。国際的な脱炭素枠組みへの逆風は保険・資産運用業界にも広がっている。

  • 主要銀行が次々と気候目標を緩和している理由は、政治的要因と科学的現実の両面が背景にある。モルガン・スタンレーは2023年10月、1.5℃目標から1.7℃以上の範囲へと後退させ、その後ウェルズ・ファーゴはネットゼロ排出計画の撤回、HSBCも排出目標を後退させた。さらに北米の大手銀行がNZBAから相次いで脱退している。気候専門家は、世界が1.5℃を超えることが確実でも企業の目標設定としての価値は維持すべきと主張する一方、現実との乖離が進む中で1.5℃目標に固執する金融機関は投資戦略がずれるリスクがあると指摘されている。右派政治の台頭と科学的限界が銀行の気候目標後退を加速させている。

【3】トランプの復帰により企業は「グリーンハッシング」で気候変動への言及を抑制 - 企業は以前は炭素削減を宣伝していたが、今はメッセージを変えている:「雄牛の前に赤い旗を振るのは良いタイミングではない」[3/4  Bloomberg Green]

  • トランプ政権下で米国企業は気候変動対策についての言及を減らし、雇用創出など別の価値を強調している

  • 「グリーンハッシング」は「グリーンウォッシング」の反対で、環境への取り組みを意図的に控えめに発信すること

  • 欧州企業はグリーンウォッシングの非難や規制リスクを避けるため環境施策の宣伝を控えている

  • 一部の専門家は、脱炭素化を進めるためには「グリーンハッシング」も効果的な戦略だと評価している

【4】ESGとは呼ばず、レジリエンスと呼ぶべき - 環境・社会・ガバナンス投資に関する新たな分類法、投資家への政治的圧力が高まる中で登場 [2/28 Wall Street Journal]

  • 環境・社会・ガバナンス(ESG)投資に関する新しい言葉として「レジリエンス(回復力)」が浮上している。政治的圧力、特にトランプ大統領の気候イニシアチブへの批判が高まる中、企業や投資家は気候変動への取り組みを表現する方法を変えている。多くの金融機関がネットゼロイニシアチブから撤退する一方、気候技術への投資は昨年2兆ドルに達した。企業は気候変動による極端な気象現象のリスクを軽減するための投資を「レジリエンス」と位置づけ、長期的な競争力維持の観点から重要視している。過去10年間で気候関連の極端な気象現象は2兆ドルの経済損失をもたらしている。

【5】「完全なファイト・クラブ状態」:トランプ大統領が米国の気候政策を粉砕する方法 - トランプ大統領は環境に対する米国のアプローチを急速に変革し、資金提供を差し控え、大統領権限の限界を押し広げています [3/2 New York Times]

  • トランプ大統領は就任直後にパリ協定から撤退し、連邦政府の気候変動対策予算を凍結した

  • 環境保護局など連邦機関から数千人を解雇し、組織の縮小を目指している

  • 風力発電所の承認停止や電気自動車補助金の削減など再生可能エネルギー政策を覆している

  • カリフォルニア州のガソリン車販売禁止政策撤回など州の気候政策にも介入している

  • 多くの環境団体が訴訟を起こしているが、バイデン政権が築いた環境保護の枠組みは急速に崩壊している

  • 政府は年間CO2排出量10万トン以上の企業に「排出量取引」参加を義務付ける改正案を閣議決定

  • 2027年度から本格運用される制度で、企業には政府が設定した「排出枠」が与えられる

  • 排出量が枠内なら余剰分を売却でき、超過時は他社から購入などで埋め合わせが必要

  • 埋め合わせを行わない企業には追加の費用負担が求められる

  • 武藤経産大臣は「CO2排出削減が目的」とし、企業の理解を得て制度を確実に進めると表明

*排出量取引制度 可能性と課題 [3/5 NHK 視点・論点 / 見逃し視聴  3/12 13:00迄]

  • 環境省は2025年度から大企業と取引先の共同CO2削減設備投資に最大15億円補助

  • 補助率は大企業1/3、中小企業1/2、大規模削減では大企業も1/2に引上げ

  • 工場・事業場の環境負荷低減設備導入支援も拡充し、共同投資も対象に

  • アップルやマイクロソフトなど海外企業はサプライチェーン全体の排出削減を加速

  • 気候変動への企業の取り組み公表は国際的な流れだが、情報収集などが負担に

  • 医療分野は産業界で温室効果ガス排出量が5番目に多い

  • 気候変動により熱中症、呼吸器疾患、メンタルヘルス問題などが増加

  • 日本では化石燃料による大気汚染で年間約2万5千人が死亡している

  • 「みどりのドクターズ」は「伝える」「備える」「減らす」の3つを軸に活動

  • 世界ではWHOが気候変動を21世紀最大の健康脅威と位置づけている

  • 2025年3月5日、自然エネルギー財団が国際シンポジウム「REvision2025:脱炭素への大競争と自然エネルギー」を東京で開催。IRENAのガウリ・シン事務局次長をはじめとする国際的なエネルギー専門家が登壇し、自然エネルギーの最新動向について議論。午後は「地方創生」「洋上風力発電」「鉄鋼のグリーン市場」の3セッションが行われ、業務スーパー創業者の沼田昭二氏による地熱発電プロジェクトや石狩市の洋上風力事例、世界的なサプライチェーン構築、鉄鋼業の脱炭素化戦略など、具体的な取り組みが紹介されました。

【10】「150万人のドイツ人が使っているなら何かあるはず」:ベランダ太陽光発電が広がる理由 - ベランダ用太陽光パネルで一般家庭の電気代が30%節約可能、都市部では屋根面積より垂直面積が大きいことから魅力は明らか [12/18 The Guardian]

  • ドイツで約150万件のバルコニーソーラーパネルが設置され、各国に拡大中

  • 電気代を最大30%節約でき、初期投資は6年程度で回収可能

  • アパートが多いスペインでは住民合意が不要な点が大きな利点

  • 都市の垂直面積は屋上より広く、冬の太陽光を効率的に活用できる

  • 中央集権型から分散型・民主的なエネルギーモデルへの移行を促進

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