深まる政策ギャップと新たな潮流~仏メディアの挑戦、核融合計画前倒し、『脱炭素おじさん』現象
【2】気候変動報道が世論に及ぼす影響:レポート
【3】世界中で気候変動に関する「偽情報」が急増、国連も警鐘
【6】台頭する『脱炭素おじさん』現象

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで760名以上、Linkedinニュースレターでは1,070名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 140」の概要
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国連の期限までに2035年の温室効果ガス削減目標(2013年比60%削減)を提出できなかった日本は、核融合炉の建設計画を5年以上前倒しし、2030年頃の着工を目指すことを決定しました。商社は東南アジアでのガス発電開発を優先する一方、各企業は原材料費高騰により洋上風力事業での損失を報告しています。技術革新の分野では、中部電力がドイツで世界初となる閉鎖型地熱システムの開発に先鞭をつけています。経済産業省は、2040年までにLNG需要が10%増加する可能性があると予測しています。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】コラム:気候変動と対応の大きなギャップ / The great climate disconnect - New attempts to prolong the fossil fuel era have come at precisely the wrong time [2/12 Financial Times🔏]
Financial Timesのコラムニスト、ピリタ・クラーク氏によるコラム。最悪のタイミングで気候変動対策が後退しているという、残念ではあるものの現実として認識しておきたい論考が参考になりました。毎日新聞の八田浩輔記者によるコラム「トランプ政権と「デジタル焚書」[2/12 毎日新聞🔏]と併せて是非。クラーク氏のコラムの概要はこちら(Mapify)
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気候変動の危機が明白である一方で、世界的に気候対策への逆行現象が起きている
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極右政党の台頭により、欧州各国で環境政策への反発が強まっている
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企業の環境への取り組みが後退し、化石燃料への回帰傾向が見られる
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パリ協定10周年を迎える中、複数国が協定からの離脱や不履行を検討
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生活費高騰などの経済的要因が、環境政策への反発を助長している
【2】気候変動報道が世論に及ぼす影響 (How climate news shapes public views)[2/5 ロイタージャーナリズム研究所
「8カ国における気候変動報道に関する視聴者動向調査2024」第3版をもとに開催されたパネルディスカッションの主要な知見が紹介されています。8カ国の中には日本も含まれていて、とても示唆に富む内容が満載です。以下のMapify要約も併せて是非ご参照ください。2022年の熱波を経験したフランスにおける気候変動報道の先進的な取り組みに関しても言及されています(ちょうど昨日2/14にMedia is Hope主催でフランス国営放送の気候エディターを招いた勉強会が開催されましたが、こうした背景があればこそ、ということを認識することができました)。Mapify要約はこちら
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気候変動報道への公衆の関心は3年間停滞しており、「気候認識の慣性」が観察されている
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フランスは気候変動報道で先進的なアプローチを取り、高い情報消費率(60%)を達成
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夏季の極端な気象現象への備えが、COPよりも重要な報道課題として認識されている
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地域社会に関連する具体的なストーリーが、より効果的な気候変動報道として推奨されている
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気候変動報道は、否定的な感情や情報の新規性の欠如により、視聴者に避けられる傾向がある
【3】世界中で気候変動に関する「偽情報」が急増、国連も警鐘 [2/15 Forbes Japan]
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気候変動に関する偽情報は、異常気象の増加とともに深刻化しています。2024年のハリケーン「ミルトン」や「へリーン」をめぐる陰謀論、ロサンゼルスの山火事に関する誤った情報の拡散など、具体的な事例が増加しています。環境保護団体Global Witnessの新報告書によれば、トランプ政権の誕生やメタのファクトチェックプログラム終了により、2025年にはさらなる悪化が予想されています。
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特筆すべきは、気候変動に関する偽情報が収益源として機能している点です。気候変動懐疑論を主張するニュースサイトが、生成AIやアドテクノロジーを活用して大きな収益を上げているケースも報告されています。また、今年11月のCOP30に向けて、ブラジルの農業関連企業による組織的な偽情報キャンペーンの可能性も指摘されています。
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こうした状況に対応するため、ブラジル政府と国連、ユネスコは「気候変動に関する情報の誠実性のためのグローバル・イニシアチブ」を設立し、複数国が参加して今後3年間で約15~23億円の資金を集める計画を立てています。
【4】進む脱炭素経営、収益と両立 売上高当たり排出量3割減 [2/12 日本経済新聞🔏]
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日本の主要企業における脱炭素化が加速しており、売上高当たりのCO2排出量が3年で31%減少したと報告されています。一方で、製造工程での排出削減が課題とされています。
【5】核融合「原型炉」 5年以上前倒し 2030年ごろ建設開始めざす [2/7 朝日新聞🔏]
政府は核融合発電の「原型炉」建設計画を大幅に前倒しし、2030年頃の着工を目指す方針を決定しました。文部科学省の技術委員会で大筋合意された新計画では、原型炉の規模を従来より3割縮小することで、世界に先駆けた実現を目指します。
これまで2035年頃とされていた製造設計・建設開始を5年以上前倒しし、2039年までの発電開始を目標としています。この判断の背景には、フランスで建設中の国際実験炉ITER計画の度重なる延期があり、ITERの実験開始が早くても2034年になる見通しであることが影響しています。
【6】台頭する『脱炭素おじさん』現象 / The rise of the Net-Zero Dad - Middle-aged men care less about the problem. But they love the solution [1/29 The Economist🔏]

🙋イギリスで"Net Zero Dad"なる現象が広がっているようです。必ずしも気候変動問題に意識が高い訳でもない中高年男性がヒートポンプやEV購入に積極的で、コミュニティ形成もしながらネットゼロに向けての大きな牽引役を担うかもしれない、とのことです。日本語にするなら「脱炭素おじさん」になるでしょうか?ソーラーパネル導入や断熱材の導入、EV購入に積極的な層に向けてのマーケティングの機会として可能性があるのか、興味深いです。Mapify要約はこちらからご覧いただけます。
【7】スマートエネルギーWeek+脱炭素経営Expo [2/19-21 @東京ビッグサイト]
来週「スマートエネルギーWeek+脱炭素経営Expo」が東京ビッグサイトで開催されます。私も過去3年ほど参加したのですが、最先端の技術や担当者の方と対面で触れられたり会える機会としてとても貴重な機会と感じます。私は今回は欠席ですが、ご興味ある方は是非。昨年参加した際のレポートはこちら。毎年規模が大きくなっていて、今年は1600社が出展、参加者数は72,000人を見込んでいるとのことです。
【8】気候変動解決に貢献するテレビ/新聞/ラジオ/デジタルメディアなど総勢12組の受賞者を公開!!【Media is Hope AWARD 2024】[1/29 Media is Hope]
問題だけでなく解決策にも焦点を当てるソリューションジャーナリズムや、オーディエンスとの対話や協力を通して課題解決するエンゲージドジャーナリズムなど、気候変動解決に資する報道や取り組みを表彰するMedia is Hope AWARD 2024が先日発表され、表彰イベントが2月25日に開催されるそうです。以下の受賞者や記者の方々は私も普段注目して拝見していることもあり、また知らなかった取り組みもあり、とても素晴らしい取り組みだと思ってます。受賞されたみなさま、おめでとうございます!🎉

image credit: Media is Hope
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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