🌱 途上国がグリーン移行を牽引、中国が技術覇権確立 vs 猛暑が妊婦を襲う深刻現実 ― リープフロッギングで変わる気候テック勢力図

🎧音声概要版はこちらから視聴いただけます[Powered by NotebookLM]（最近のニュースレターで毎回最もクリックしてくださってます。よかったらお試しください）

• 🇯🇵Climate Curation vol. 172 音声概要 [25:25 min.]

• 🇺🇲Climate Curation vol. 172 audio summary in English [18:29 min.]

*免責事項：要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂

*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #166】をご覧ください。

⚡ 韓国石炭産業崩壊でエネルギー転換加速、日本製造業に転換期 [8/20 Japan Climate Curation #166]

• 🎧 - 🇯🇵日本語での音声概要: Japan Climate Curation vol. 166 [6:58 min.]

• 気候科学者らは、日本と韓国で記録的な猛暑が観測されたことについて、気候変動により「少なくとも5倍起こりやすくなった」と確認した。日本は127年間で最も暑い6月と7月を記録している。この持続的な熱波はさらに1ヶ月続く恐れがあり、干ばつによる水力発電の減少と米の生産量低下に伴い電力価格の上昇を招いている。韓国では石炭発電が16％急減するなどエネルギー転換が加速している。一方、中国のクリーンエネルギー分野における技術革新は目覚ましく、関連特許数は2000年の18件から2022年には5000件超に急増した。日本の製造業は危機に直面しており、日産自動車は歴史ある追浜工場を2028年までに閉鎖すると発表し、世界全体で2万人の雇用を削減する。その一方で、三菱商事は電気自動車用材料確保のため米国の銅鉱山事業に6億ドルを投資し、日本政府はアフリカの気候変動対策投資に15億ドルの拠出を約束した。

【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【1】🌱 グリーン移行の新拠点、意外な場所で加速 - 北欧以外の地域に注目集まる [8/21 The Economist]

👉ピックアップコメント：：EVシフトや再エネ導入の分野でもリープ・フロッギングが起きていることを強く感じたため。Leapfrogging（〜発展途上国が先進国が通常たどる技術開発の段階を飛び越え、いきなり最先端の技術や製品、サービスを導入し、発展する現象）

• グリーン移行の新たな震源地は、北欧や中国ではなく発展途上国です。トルコではEV販売が3倍増で27％に達し、欧州第4位の市場となりました。パキスタンでは太陽光発電が25％に、モロッコは風力発電を50％増加させています。エチオピアは内燃機関車販売を全面禁止し、ネパールでは輸入車の70％以上がEVです。エネルギー輸入国である途上国には外貨節約という経済的インセンティブがあり、中国製EVも従来車と同価格になっています。米欧の関税により中国製品は他市場に流れ、クリーン技術普及を加速させています。ただしブラジルのように保護主義も広がっており、自由貿易が継続するかが課題となっています。

【2】🔋 中国、クリーンエネルギーで「模倣者」から「世界的革新者」へ転換 - 高品質研究と特許申請の急増で業界優位を確立[The New York Times]

👉ピックアップコメント：：中国EVバッテリー分野などの特許申請数の伸びに驚かされます。

• 中国はクリーンエネルギー分野で模倣者から革新者へと劇的な変貌を遂げた。2000年に18件だった高品質特許は2022年に5,000件超に急増し、米国の2倍以上となった。「Made in China 2025」政策により戦略的投資を実施し、BYDやCATLなどの企業がEVバッテリー分野で世界をリードしている。中国は現在、バッテリー技術論文の65.5%を占め、太陽光発電でも優位に立つ。政府は「経済ダーウィニズム」的な競争環境を創出し、補助金投入後に競争力のない企業を淘汰する戦略を採用。技術流出防止のため、EVバッテリー製造の8つの核心技術の国外移転を法的に制限開始。世界のエネルギー転換が中国技術への依存を深めている。

【3】🌞 太陽光発電の記録的な成長により2025年上半期も中国のCO2排出量は減少し続ける [8/21 Carbon Brief ]

👉ピックアップコメント：：2025年時点での中国のCO2排出量は世界全体の約30%（29.7%）を占め世界最大の排出国ですが、CO2排出量のピークアウトに近づいていると指摘されています。

• 2025年上半期、中国のCO2排出量は前年同期比1%減少しました。記録的な太陽光発電の成長が主要因で、同期間に212GWの太陽光発電容量が追加されました。クリーンエネルギーの発電量増加（270TWh）が電力需要増加（170TWh）を大幅に上回り、太陽光発電だけで電力需要の全増加分をカバーしています。石炭火力発電の稼働率低下により電力部門のCO2排出量は3%減少しましたが、石炭化学産業は20%成長し、2030年の排出量ピーク目標達成への課題となっています。

【4】🏭 火力発電所が再生エネ拠点に転換 - 環境負荷最大の施設がクリーンエネルギー構築の要に [8/20 The Economist]

👉ピックアップコメント：「過去の遺産」を活用して再エネ中心のクリーンな電力供給拠点が世界各地で生まれているトレンドが伺えます。

• 世界各地で化石燃料発電所や石油・ガス井戸が再生可能エネルギー施設に転換されています。チリのタマヤ発電所では、ディーゼル発電機が太陽光パネルに置き換えられました。現在170以上のプロジェクトが進行中で、中国も内モンゴルで初の転換事業を発表しました。既存のグリッド接続を活用することで新規プロジェクトの導入遅延を回避でき、米国では1,000ギガワットの追加容量が可能とされています。世界では3,000ギガワットの再生可能エネルギープロジェクトがグリッド接続を待機中です。古い石油・ガス井戸も地熱発電に転用可能で、新規掘削より経済的です。ただし、規制上の障壁や発電容量の制限といった課題もあります。今後15年間で300ギガワットの石炭発電容量が廃止予定で、グリーンエネルギーへの転換が加速すると予想されます。

【5】🌍 インド、気候技術投資の新天地に浮上 - 急成長と脱炭素ニーズで欧米投資家が注目、有望市場として期待高まる[8/19 Latitude Media]

👉ピックアップコメント：著名な投資家Vinod Khosla（ヴィノッド・コースラ）が提唱する気候テック普及のための重要なコンセプトとして「Chindia price（チンディア価格）」という言葉があります。中国やインドなどの巨大新興国が「補助金なしで自発的に」気候テクノロジーを導入する水準を指します。

• インドの気候テック分野は近年「著しい」成長を遂げています。10年前に数百社だったスタートアップが現在約3,000社に拡大し、2024年には15億ドルの投資を獲得しました。これは同年のインドVC投資全体の約10%に相当します。世界最速の経済成長と第4位の経済規模を背景に、温室効果ガス排出量の増加に対応する技術需要が急増しています。英語での事業運営が可能で、中国より参入しやすい市場環境も魅力的です。米国のLowercarbon CapitalやシュナイダーエレクトリックのSE Venturesなど、欧米の投資家が相次いでインド市場に参入しています。特に水素や持続可能航空燃料などの高価な技術のスケーリングには最適な環境を提供しており、資本供給の限定性により企業価値も比較的低く抑えられています。バッテリーや太陽光分野では、海外技術の導入とスケーリングに重点を置いた戦略が展開されています。

【6】☀️ 屋根に設置不要の「ベランダ太陽光発電」、賃貸住宅でも電気代削減可能に - プラグイン式で簡単設置、アパート住民の電力自給率向上へ期待 [8/12 The Washington Post]

👉ピックアップコメント：欧州で急速に普及しているバルコニーソーラー（プラグインソーラー）がアメリカでも注目を集めている、と今週多くのメディアが報道しています(AP / NYT / Wired)。米国同様、日本でも規制があり現状利用できないのですが、規制緩和が進むこと願ってます。

• アメリカでは5,300万世帯が建物の制約や賃貸住宅居住により、屋根への太陽光パネル設置ができません。しかし「バルコニーソーラー」という画期的な解決策が登場しました。399ドルから数千ドルで購入できるこのポータブルパネルは、複雑な工事や許可申請を必要とせず、コンセントに差し込むだけで自宅に太陽光発電を導入できます。ドイツでは既に400万システムが安全に稼働しており、わずか15分で設置完了という手軽さが魅力です。800ワットシステムなら年間1,400kWh発電し、最大450ドルの電気代節約が可能です。賃貸住宅や集合住宅にお住まいの方にも太陽光発電の恩恵をもたらし、太陽光発電を「家電製品」のように身近な存在に変える革新的技術として注目されています。

【7】📊 気候変動の研究、中国が論文数で米国超え　国際社会で発言力 [8/21 日本経済新聞]

👉ピックアップコメント：中国の国を挙げた気候変動対策が気候変動についての論文数でも軍を抜いている現実。日本は1999年に過去最高位の7位。その後順位は下降気味で24年は16位。

• 気候変動研究で中国が2023年に論文数で米国を初めて上回りました。中国約1万4000本、米国約1万3000本です。習近平政権の「3060目標」のもと国を挙げて研究に力を入れ、EV・再生エネでも世界をリードしています。一方、トランプ政権下の米国では研究予算削減が提案され、影響力低下が懸念されています。

【8】🌏 日本、海外での炭素削減事業に本格投資 脱炭素技術輸出で新戦略、国際的な排出削減に照準 [8/1 Climate & Capital Media]

👉ピックアップコメント：なかなか話題になりにくいものの、知っておきたい大切な現実。

• 日本は2040年まで化石燃料への依存を継続する予定で、CO2削減のためCCS（炭素回収・貯留）戦略を推進しています。特にアジア太平洋地域への「炭素輸出」に注力し、マレーシアなど15カ国以上と協定を締結。政府は10年間で4兆円を投資し、2030年までに9つの大規模CCSクラスターを運用開始予定です。目標は2030年までに年間600万〜1200万トン、2050年までに1億2000万〜2億4000万トンの貯蔵です。マレーシアは豊富な地質容量を活かし、2030年までに1500万トンの受け入れを計画しています。しかし既存のCCS技術では実際の捕獲率が名目容量を最大70％下回る実績があり、漏洩リスクや安全性への懸念も指摘されています。環境活動家からは「炭素植民地主義」との厳しい批判も寄せられ、CCSの収益性も不透明で、真の気候変動対策になるかは疑問視されています。

【9】🌡️ 猛暑が妊婦に深刻な脅威 - 高温と危険な妊娠の関連性示す衝撃の新研究 [8/21 The Economist]

👉ピックアップコメント：日本においても「猛暑が胎盤の早期剝離のリスクを高めるという研究結果」が発表されてます。根本的な気候変動対策の重要性を改めて感じます。

• 気候変動による高温が妊婦と胎児に深刻な健康被害をもたらしていることが新たな研究で明らかになりました。パキスタンで実施中の世界最大規模の研究では、6400人の妊婦を対象に24時間体温記録などを通じて熱と妊娠リスクの関係を詳細に調査しています。気温1度上昇で早産リスクが4％増加し、熱波は早産確率を25％以上押し上げます。妊娠中は代謝が加速し血液量が50％増加するため、高温への脆弱性が高まります。早産に加え、死産や妊娠糖尿病のリスクも増大することが判明しています。特にアフリカやアジアの発展途上国で影響が深刻で、アフリカでは5歳未満死亡率が既に倍増し、中国では年間13,000件の熱関連早産が発生、経済損失は年間10億ドル超に達します。屋根の遮光や反射塗料などの対策研究も進んでいますが、政府レベルでの取り組みはまだ不十分な状況です。

【10】気候変動の影響・対策などを深堀りした良質なテレビ番組は時に深夜帯やBSで放映されていることが多いです。以下最近注目したものです。（購読してくださっているKさん、お知らせありがとうございました!）。その他NHK BSの「国際報道2025」もおすすめです（NHK Plusで見逃し視聴可能）。

• 🌡️ 異常熱波がもたらすもの…猛暑で老いが加速？日本の食文化の危機？[8/20 BS-TBS「報道1930」/ TBS NEWS DIG]

• 日本は記録的猛暑に見舞われ、群馬県伊勢崎市で観測史上最高の41.8度を記録。日本近海の海水温上昇が原因で、専門家は「熱いお風呂」状態と分析。猛暑は人体に深刻な影響を与え、米研究では体感温度32.2度以上に年140日以上さらされると最大14ヶ月老化が進むと判明。農業では新潟コシヒカリの1等級米比率が4.9%に急落、北海道でも高温障害が発生。昆布生産量も減少し食文化が脅威に。国際司法裁判所は気候変動対策の法的義務を認定したが、日本人の気候意識は他国比で低く教育改革が急務。

• 河口堰運用から30年 長良川のアユは今 - TBSドキュメンタリー｢解放区｣ [8/17 TBS ]

• 見逃し視聴用Tver URL *8/24まで視聴可能 - https://tver.jp/episodes/epgn80behv

• 岐阜県の長良川は本流にダムがなく清流で有名。しかし30年前、治水・利水目的で河口堰が運用開始されて以降、代表的な魚アユの漁獲量が大幅減少した。観光の鵜飼は健在で「清流長良川の鮎」が世界農業遺産に認定されたが、県は「適切な対策なしには認定維持困難」と警告。川漁師は消滅の危機に瀕している。河口堰運用から30年、長良川のアユの現状が問われている。

• ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

• *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋

市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

▶Twitter: @SocialCompany / BlueSky: socialcompany.bsky.social

▶📬Climate Curation配信プラットフォーム

• Climate Curation[日本語版 毎週土曜日配信] theLetter | Linkedin | note / *過去配信記事[2022年4月〜2024年1月]

• Japan Climate Curation[英語版 毎週火曜日配信] Linkedin | Substack