【配信サービスをSubstackに移行します】2027年、記録更新確率92%の猛暑へ|Climate Curation Vol.218

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気候変動・脱炭素・気候テック専門のニュースレター「Climate Curation」編集人の市川裕康です。2022年4月より毎週配信しています。国内外の主要メディアから、気候変動対策・エネルギー安全保障・脱炭素ビジネスに関わる重要ニュースを厳選してお届けしています。皆様の日々のお仕事や、気候変動対策の情報キャッチアップに少しでも役立てていただければ幸いです。
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【⭐📰 今週のニュース・トピックス】
🌡 急発達するエルニーニョ——2027年が「人類史上最も暑い年」になる公算 [7/24 Carbon Brief]
🌡 エアコンの地政学——「冷やす手段」をめぐる争いが世界の政治を揺らす [7/23 The Economist]
🏦 年金基金が向き合う「気候ブラックスワン」——ティッピングポイントが投資判断に入り始めた [7/19 Bloomberg Green]
🇪🇺 EU、炭素市場の改革案を公表——削減ペースを緩め「20億トンの追加排出」の試算も [7/23 Carbon Brief]
🇺🇸 米国、省エネ政策を後退——電力逼迫と物価高のなかで基準緩和を加速 [7/21 The New York Times]
🇨🇳 中国、再エネ5カ年計画で2030年3,500GW目標——海南省がガソリン車販売禁止へ [7/23 Carbon Brief]
🔋 再エネの鍵を握る蓄電池——中国が世界シェア9割、米国市場も席巻 [7/19 The Wall Street Journal]
🏭 データセンター経済圏が生む200兆円市場——電力インフラが競争力の分水嶺に [7/20〜7/24 日本経済新聞]
💰 ブラックロック系、CO2算定のアスエネに65億円出資——日本の未上場新興で初 [7/23 日本経済新聞]
🌏 AZEC案件の67%が「調査・計画」段階——217件の進捗を検証 [7/24 Climate Integrate]
【1】 🌡 急発達するエルニーニョ——2027年が「人類史上最も暑い年」になる公算 [7/24 Carbon Brief]

image credit: CarbonBrief
2026年上半期は観測史上3番目に暑い年初となり、産業革命前比で約1.4℃上昇しました。4月に発生したエルニーニョは6月に「強い」水準に達し、7月にはNiño3.4指数が2℃を超えるという記録的な速さで発達しています。14機関667本のモデル計算のうち91%が観測史上最強のエルニーニョを予測しました。Carbon Briefは2026年が記録を更新する確率を35%とし(4月時点は19%)、中心予測は1.51℃で史上2位としています。ただし影響が最大となるのは翌年で、2027年は1.71℃、記録更新の確率は**92%と見込まれます。西欧の6月は観測史上最も暑く、フランスは44.3℃**の6月最高記録を更新しました。
💡インサイト▶ 2027年に1.71℃・記録更新確率92%という予測は、企業の中期経営計画の期間とそのまま重なるものであり、猛暑を前提とした労働時間・電力調達・農産物調達の計画見直しを前倒しで検討する価値がありそうです。/長期の温暖化ペースが2000年代初頭の10年あたり0.18℃から現在**0.27℃**へ加速している事実は、過去のトレンドを前提としたTCFDシナリオ分析が実態に追いつかなくなりつつあることを示しているといえそうです。
【2】 🌡 エアコンの地政学——「冷やす手段」をめぐる争いが世界の政治を揺らす [7/23 The Economist]
7月上旬、パリ郊外のスーパーでは携帯型エアコンの最後の1台をめぐり客が殺到し、扉が壊れる騒ぎが起きました。パキスタンやバングラデシュでは45℃の猛暑下の停電に抗議するデモが相次いでいます。昨年11月のCOP30(ブラジル・ベレン)は、冷房技術を水やエネルギーと並ぶ必須インフラと位置づけました。熱関連死は年間48万9,000人と推計される一方、エアコンは65歳以上で年間19万人の死亡を回避しているとされます。しかし冷房を必要とする暑さに直面する世界人口の8割のうち、実際にエアコンを使えるのは4割にとどまります。インドでは冷房がピーク需要の約4分の1を占め、2035年には180GWへ倍増する見通しで、2028年以降の電力不足が警告されています。
💡インサイト▶ 中国製エアコンの対EU輸出が前年比43%増の38億ドル(約6,080億円)に達した事実は、欧州の冷房需要が価格競争の主戦場になりつつあることを示しており、日本の空調メーカーは高効率・温暖化への影響が小さい冷媒・工事不要型といった非価格軸での差別化を急ぐ価値がありそうです。/新興国の冷房アクセス不足を埋めるには4,000億〜8,000億ドルが必要というIFCの試算は、空調・断熱・系統整備を束ねた「冷房インフラ」が開発金融の新たな対象になりつつあることを示しており、日本の商社・JICA・JBICにとって参入機会となりそうです。
【3】 🏦 年金基金が向き合う「気候ブラックスワン」——ティッピングポイントが投資判断に入り始めた [7/19 Bloomberg Green]
機関投資家が気候のティッピングポイント(臨界点)をポートフォリオ分析に組み込み始めています。JPMorganはこれを気候ブラックスワン・リスクと呼び、運用資産3,170億ポンドのStandard Lifeは来年、全ポートフォリオを対象にシミュレーションを開始する方針です。同社担当者は2028年半ばまでにこのリスクを真剣に検討していない投資家は主流から外れると述べています。科学者は10以上の臨界点を特定しており、昨年10月にはエクセター大学が浅海サンゴ礁の大規模死滅で「最初の臨界点を超えた」と指摘しました。英国の健全性規制機構は銀行・保険会社に対し、非線形かつ不可逆な気候リスクを織り込むよう求め、過去データはもはや信頼できる指針ではないと明言しています。
💡インサイト▶ 英国の健全性規制機構が「過去データは将来リスクの指針にならない」と銀行・保険会社に通達したことは、日本の生保・メガバンク・年金基金にとってもTCFDシナリオ分析の前提を見直す契機となりそうです。/AMOCや永久凍土の融解が今後15〜20年で臨界を超え得るという見方は、企業の中期経営計画の時間軸と重なりつつあることを示しており、物理リスクを「遠い将来の話」として扱えない局面が近づいているといえそうです。
【4】 🇪🇺 EU、炭素市場の改革案を公表——削減ペースを緩め「20億トンの追加排出」の試算も [7/23 Carbon Brief]
欧州委員会は7月17日、EU排出量取引制度(ETS)の改革案を公表しました。排出上限の年間縮小率を2031〜2035年は3.7%、2036〜2040年は1.7%へ緩和し、2039年で終了予定だった排出枠の発行は最長2048年まで続く見通しです。2034年に全廃予定だった重工業向け無償割当も2038年まで延長されますが、2031年以降は80%が脱炭素投資計画の提出を条件とし、残る20%は投資の実行を証明した企業のみが受け取れます。加盟国には炭素収入240億ユーロの半分以上を産業の脱炭素に充てる義務が課され、現状の5%未満から大きく転換します。同時に公表された電力計画では電化率を2040年に46%へ倍増させる目標も示されました。WWFなどは今回の緩和で約20億トンのCO2が追加排出されると試算しています。
💡インサイト▶ 無償割当が2038年まで続くことでアンモニアの脱炭素圧力が緩み、ブルー・グリーンアンモニアのオフテイク契約と最終投資決定が後ろ倒しになる可能性は、混焼に投資してきた日本の商社・電力・重工にとって需要の立ち上がり時期を見直す材料となりそうです。/炭素収入の半分以上を産業の脱炭素に充てる義務化は、鉄鋼・セメント・化学の電化や熱源転換に資金が集中することを意味しており、日本の重電・産業用ヒートポンプ企業にとって欧州での商機が広がりそうです。
参照:EU to give industry more time to pollute and more funds to clean up [7/17 Financial Times]
【5】 🇺🇸 米国、省エネ政策を後退——電力逼迫と物価高のなかで基準緩和を加速 [7/21 The New York Times]
トランプ政権が連邦の省エネ政策を相次いで撤回しています。エネルギー省は食洗機・洗濯機など17の効率基準の廃止を提案し、今月には将来政権が基準を強化しにくくする手続き規則も打ち出しました。自動車燃費基準の緩和、断熱改修の税優遇廃止も進んでいます。背景にあるのは「エネルギー緊急事態には供給拡大で応じる」という政権の立場です。一方、ローレンス・バークレー国立研究所は現行の機器効率基準が米国のエネルギー使用を6.5%削減し、1世帯あたり年576ドルを節約していると試算。イラン戦争で原油が高騰しガソリンが1ガロン4ドルに達するなか、ACEEEは省エネ徹底で数百基の発電所建設を回避でき、排出量を最大3分の1削減できると指摘しています。
💡インサイト▶ 米国が省エネ基準を緩和する一方でデータセンター需要が急増する構図は、日本の空調・家電メーカーが米国市場で「高効率」を規制対応として訴求しにくくなることを示しており、電気代削減という経済合理性での訴求への転換が有効となりそうです。/米国エネルギー効率経済評議会(ACEEE)が「省エネ徹底で数百基の発電所建設を回避できる」と試算した点は、変電所整備に年4兆8,000億円を要する日本でも、需要側対策を供給力確保の一手段として再評価する価値があることを示しているといえそうです。
【6】 🇨🇳 中国、再エネ5カ年計画で2030年3,500GW目標——海南省がガソリン車販売禁止へ [7/23 Carbon Brief]
中国が第15次5カ年計画の再エネ分野版を公表し、2030年までに再エネ発電容量3,500GW、うち風力・太陽光2,800GWを目指す方針を示しました。グリーン水素や太陽熱・風力熱利用など非電力用途も2025年比1.5倍に拡大させます。7月には電力需要のピークが1,551GWと過去最高を更新し、猛暑時には1,600GW超も想定されています。EV充電・電池交換向けの電力需要は前年比57%増と急拡大しました。一方、6月の火力発電は前年比0.5%増と今年最も鈍い伸びにとどまり、石炭生産量は9.7%減となりました。海南省は中国で初めて2030年からの新車ガソリン車販売禁止を決定し、すでに新車販売の6割超がNEV(新エネルギー車)となっています。
💡インサイト▶ 火力発電の伸びが今年最も鈍化し石炭生産が9.7%減となった一方、EV充電需要が57%増という構図は、中国の電力需要の質的転換が始まっていることを示しており、日本企業の中国市場戦略でも電化需要を軸に据え直す価値がありそうです。/EV・リチウム電池・太陽電池の「新三様」輸出が上半期に52%増の1,180億ドル(約18.9兆円)に達した事実は、日本企業が第三国市場で中国製品と直接競合する局面がさらに広がることを示しているといえそうです。
【7】 🔋 再エネの鍵を握る蓄電池——中国が世界シェア9割、米国市場も席巻 [7/19 The Wall Street Journal]
中国の蓄電池を中心とした非従来型エネルギー貯蔵容量は、5年前の4GW未満から2026年第1四半期に約155GWへ急拡大しました。政府は2030年に300GWを目標に掲げています。太陽光・風力は中国の電力供給の22%を占めるまでになり、新設データセンターには電力の8割以上を再エネとする義務も課されました。世界の蓄電池セル供給は上位10社すべてが中国企業で、世界シェアの9割を占めます。米国で設置された蓄電システムの9割超が中国製セルを採用しており、TeslaのMegapackも上海工場でCATL製セルを使用しています。米国は57GWで世界2位ですが、トランプ政権の関税と税額控除制限が中国製の価格優位を削ぎつつあります。
💡インサイト▶ 蓄電池セル供給の上位10社すべてが中国企業で世界シェア9割という現実は、日本の電池メーカーが規模とコストで競うのは難しく、安全性・長寿命・系統制御ソフトなど非価格軸での差別化に活路がありそうです。/中国が新設データセンターに再エネ8割を義務付けた規制は、AI電力需要と脱炭素を同時に満たす制度設計の先行事例であり、変電所整備を進める日本の電力インフラ議論でも参照される価値がありそうです。
【8】 🏭 データセンター経済圏が生む200兆円市場——電力インフラが競争力の分水嶺に [7/20〜7/24 日本経済新聞]
日本経済新聞の連載「データセンターECONOMY」は、AI向けデータセンター投資が空前の規模に達し産業構造を塗り替えている実態を描いています。2026年の世界の年間投資額は1兆3,000億ドル、約200兆円とアポロ計画の4倍以上に相当します。最先端AIサーバーはラック1台あたり130万点の部品を搭載し、自動車の約43倍です。ボトルネックは電力で、送電網への接続待ちは最大10年に及びます。米国ではGoogleがテキサス州で640MWの太陽光をデータセンターと一体建設し、MetaやソフトバンクGもオハイオ州で発電所を自前整備します。日本では2035年度までに原発6基分以上にあたる年間661万kWの需要増が見込まれる一方、一体整備の具体計画はまだ乏しい状況です。
💡インサイト▶ 2035年度までに原発6基分以上の新規需要が見込まれるなか、送電網増強だけで応えれば化石燃料への依存が固定化されるおそれがあり、再エネ併設・蓄電池・デマンドレスポンスを組み合わせた需要側と供給側の同時設計が日本のデータセンター政策の分岐点となりそうです。/中国が新設データセンターに再エネ8割を義務付けたのに対し、日本には同種の規制がない現状は、AI需要の急拡大が排出増に直結しかねないことを示しており、立地誘導と電源要件をセットで設計する政策的余地がありそうです。
【9】 💰 ブラックロック系、CO2算定のアスエネに65億円出資——日本の未上場新興で初 [7/23 日本経済新聞]
米ブラックロックとシンガポール政府系テマセクが共同設立した脱炭素分野の運用会社が、CO2排出量算定ソフトのアスエネに約65億円を出資しました。日本の未上場スタートアップへの投資は初めてです。今回アスエネは68億円の第三者割当増資と37億円のセカンダリー取引を実施し、企業価値は約500億円と2025年9月時点の359億円から4割増となりました。成長の柱はM&Aによる海外展開で、これまで日米で7件を実施。6月には英国のCO2可視化企業を最大60億円で買収しました。同社のシステムは90カ国・8,000社に導入されています。今後も年4〜5件のペースで買収を続け、海外売上高比率を3年後に50%以上へ引き上げる方針です。
💡インサイト▶ グローバル運用大手が日本の未上場気候テックに初めて資金を投じたことは、排出量データ基盤が国境を越えて評価される領域になりつつあることを示しており、日本のCVC・商社にとって国内スタートアップの再評価につながりそうです。/買収した英企業がトヨタ・ホンダの欧米拠点で使われている点は、規制が異なる地域をまたいだ排出量管理の一元化が実務課題になっていることを示しており、Scope 3対応を進める日本の製造業にとって参考になりそうです。
【10】 🌏 AZEC案件の67%が「調査・計画」段階——217件の進捗を検証 [7/24 Climate Integrate]
気候シンクタンクのClimate Integrateが、日本主導の「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」で2023〜2024年に締結された217件の覚書案件の進捗を公表情報から検証しました。進捗を確認できたのは139件で、残る約**35%は情報が見当たりませんでした。確認できた案件のうち67%**が調査・計画段階、**14%が合意段階にとどまり、事業化・運用段階まで進んだのは18%**です。分野別では最も案件数の多い「水素・アンモニア」が調査・計画段階に集中する一方、「再エネ」「バイオマス・バイオ燃料」は事業化以降に進んだ割合が高くなっています。相手国別ではインドネシアが最多で、ベトナム・タイ・マレーシア・オーストラリアが続きます。
💡インサイト▶ 案件数で最多の水素・アンモニア分野が調査・計画段階に集中する一方、再エネ・バイオマスが事業化まで進んでいる対比は、技術の成熟度と資金調達のしやすさの差を映しており、商社・電力の案件組成でも投資回収時期の見極めが重要になりそうです。/AZEC案件の一部がGX-ETSのオフセット・クレジットとして使われ得る点は、削減効果の算定根拠が問われる局面が近づいていることを示しており、参加企業にとって早期のデータ整備が価値を持ちそうです。
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