Vol.217: 地球が熱を逃がせなくなった夏——炭素政策の後退と再エネ転換の加速の同時進行

三連休初日、いかがお過ごしですか?国内でも猛暑が続いていますが、The Economistがまさに今週「地球が太陽光を反射できなくなっている」という気温上昇の隠れた加速要因を指摘していて、身近な暑さとつながる内容に思わず読み込んでしまいました。今号もぜひお楽しみください & よい連休をお過ごしください🙂
市川裕康 2026.07.18
誰でも

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Hiroyasu Ichikawa/市川裕康
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Japan Climate Curation vol. 210を配信しました! 日本語音声概要も記事内のリンクから無料で視聴いただけます <a href='https://japanclimatecuration.substack.com/p/vol210power-and-speed-son-bets-5' target='_blank' rel='nofollow noindex noreferrer'>japanclimatecuration.substack.com/p/vol210power-…</a><br />
ソフトバンクG孫社長がAIで年5兆ドル・3テラワットの電力需要を予測、大手電力8社が変電所30カ所を先行整備、中国EVが日本の販売網に本格参入。10本選びました
2026/07/16 09:06
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⭐📰 今週のニュース・トピックス】

  • 🌡 暑すぎる夏の真犯人——「地球の白さ」が失われるグローバル・ディミングの衝撃 [7/16 The Economist]

  • 🇪🇺 欧州ETS、緩和へ——競争力懸念が「経済人の夢」を侵食する [7/16 The Economist]

  • 🌡 太陽地球工学の最前線——6,000万ドルを調達した民間企業「Stardust」が語る「最後の手段」 [7/15 Heatmap News]

  • 🌿 EU、炭素除去をETSに統合へ——「世界が待ち望んでいた大口バイヤー」誕生なるか [7/16 Heatmap News]

  • 📊 気候テックVC投資、H1 2026に前年比55%増の261億ドル——データセンターが牽引し2022年以来最高水準に [7/13 CTVC by Currence]

  • ☁ AI・サイバーセキュリティに押され、企業の脱炭素予算が後退——S&P500の58%が排出増 [7/15 Bloomberg Green]

  • 🇨🇳 中国のグリーンテック輸出、上半期に前年比3割超増——ホルムズ危機が需要を加速 [7/14 Bloomberg Green]

  • ⚡ 電力8社、データセンター向け変電所を全国30カ所で新増設——需要予測の2倍ペースで先行整備 [7/15 日本経済新聞]

  • 🌡 東京の夏はバンコク並みに——熱中症が年間28億時間の労働損失をもたらす現実 [7/12 Nikkei Asia]

  • 🔋 オーストラリアの家庭用蓄電池ブーム——中国製電池が再エネ転換を加速、日本への示唆 [Financial Times]

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The Economist
@TheEconomist
Earth is absorbing a lot more sunshine <a href='https://www.economist.com/leaders/2026/07/16/its-too-darn-hot-blame-global-dimming?taid=6a58a8296f830000013a61b7&utm_campaign=trueanthem&utm_medium=social&utm_source=twitter' target='_blank' rel='nofollow noindex noreferrer'>economist.com/leaders/2026/0…</a>
It’s too darn hot. Blame global dimmingEarth is absorbing a lot more sunshinewww.economist.com
2026/07/16 18:45
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2026年7月、熱帯・中緯度の海面水温は観測史上最高を連日更新しています。The Economistは気温上昇の「隠れた加速要因」として地球のアルベド(反射率)の低下を指摘します。原因は二つ。一つは温暖化による海上の雲の減少、もう一つは船舶燃料規制(2020年IMO規制)などによる二酸化硫黄排出量の削減です。硫黄が大気中の粒子を生み出し太陽光を反射していたという「意図せぬ冷却効果」が失われつつあります。ネットゼロ目標は正しい方向性ですが本質的に時間がかかり、単独国家の効果は限定的です。現実的な対策として、エアコンの高効率化・フロン代替・メタン削減を挙げつつ、最後の手段として成層圏エアロゾル散布(太陽地球工学)の国際議論の必要性を示唆しています。

💡インサイト▶ 船舶の排気ガス規制が「空気をきれいにした結果、地球を冷やしていた煤煙も消えた」という逆説は、環境規制が意図せぬ形で温暖化を加速させる可能性を示しており、規制設計において気候への複合的な影響を事前に評価する重要性を示しているといえそうです。/太陽光を人工的に遮る「太陽地球工学」の国際議論が現実的な選択肢として浮上しつつあることは、日本が科学・外交の両面でこの分野の議論に早期から関与することの戦略的価値を示しているといえそうです。

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The Economist
@TheEconomist
Green goals are running into fears about competitiveness <a href='https://www.economist.com/europe/2026/07/16/europe-seems-set-to-ease-its-carbon-pricing?taid=6a59166675540e00016c9f71&utm_campaign=trueanthem&utm_medium=social&utm_source=twitter' target='_blank' rel='nofollow noindex noreferrer'>economist.com/europe/2026/07…</a>
Europe seems set to ease its carbon pricingGreen goals are running into fears about competitivenesswww.economist.com
2026/07/17 02:35
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欧州委員会は7月17日、EU排出量取引制度(ETS)の緩和策を発表する見通しです。炭素価格は現在1トンあたり約80ユーロで、電力小売価格の約10%に相当します。ドイツ・イタリア・ポーランドなど10カ国が制度見直しを要求し、競争力への影響を懸念する声が高まっています。問題の核心は輸出市場での不平等です。EU域内では輸入品にも炭素価格が課される一方(CBAM)、EU企業が輸出市場で炭素コストを単独で負担する構造が残ります。一方、無料排出枠を受け取りながら排出量以上の利益を得ている企業も存在するとシンクタンクが指摘しています。「欧州がサステナビリティのメガトレンドの勝者になれるかどうか、まだ結論は出ていない」と専門家は述べています。

💡インサイト▶ ETSの緩和は「炭素価格に基づく投資判断」を見直した欧州企業に不利益をもたらすリスクを示しており、日本企業がGX-ETSや自社の脱炭素投資を設計する際に「制度の安定性リスク」を織り込む重要性を示しているといえそうです。/CBAMが本格化する2034年に向けてEU向け輸出製品の炭素コストが顕在化する構図は、鉄鋼・化学・素材を輸出する日本企業にとって製品の低炭素化を急ぐ時間的猶予が縮まっていることを示しており、対応の先手を打つ価値がありそうです。

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イスラエル系スタートアップStardustが太陽地球工学(成層圏への粒子散布による太陽光反射)の実用化に向けて6,000万ドルを調達し、研究を加速しています。従来の硫黄エアロゾルが酸性雨やオゾン層への悪影響を持つのに対し、Stardustは非晶質シリカと炭酸カルシウムで構成される生分解性粒子を開発。成層圏では不活性だが地表では分解されるという特性を持ちます。各粒子に「QRコード」相当の識別子を付与し衛星で追跡可能な監視システムも構築済みです。CEOは「これは排出削減の代替ではなく時間を買う手段」と位置づけ、屋外実験には政府規制が不可欠と主張。モントリオール議定書を先例として国際的なガバナンス枠組みの構築を訴えています。

💡インサイト▶ 民間企業による太陽地球工学の実用化研究が資金調達・技術開発の段階に入ったことは、日本の気候外交・科学技術政策においても「ジオエンジニアリングの国際ガバナンス構築」への参画を早急に検討すべき段階に来ていることを示しており、国際的な議論での発言権確保が急務となりそうです。/Stardustが「政府規制なしには屋外実験を行わない」と明言する一方で技術開発を加速している構図は、規制の整備が技術の先行を追いかける構造を示しており、日本の科学技術・環境政策担当者が先手を打った規制設計を検討する価値がありそうです。

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欧州委員会が7月18日、EU排出量取引制度(ETS)に炭素除去(カーボンリムーバル)を初めて統合する改革案を発表する予定です。現行ETSでは企業によるカーボンクレジットの使用は認められていませんが、2040年の排出90%削減目標達成に向け、残存排出量の一部を炭素除去で相殺する方向です。最有力案はEU政府が中央購買機関を設置してETS収益で炭素除去を直接購入する仕組みです。ただし直接空気回収(DAC)や生物炭などのクレジット価格は数百ドル/トンと、現在のETS価格(70〜90ユーロ)を大幅に上回るため、実際の需要喚起は制度設計次第です。業界関係者は「ETSが今後10年で炭素除去市場最大の需要ドライバーになる可能性がある」と期待を寄せています。

💡インサイト▶ EUが炭素除去の大口バイヤーとなる可能性は、DACや生物炭などの炭素除去技術を開発・投資する日本の化学・重工・素材企業にとって欧州市場での事業機会が政策的に裏打ちされるシグナルであり、EU認証スキームへの早期対応を検討する価値がありそうです。/日本のGX-ETSでも炭素除去の扱いは未整備であり、EU改革案の設計思想(中央購買・認証基準・市場統合の是非)は日本の制度設計における先行事例として政策立案上の参考となりそうです。

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Currenceの2026年上半期気候テック投資レポートによれば、気候テックVC投資は前年比55%増の261億ドルと2022年以来最高の上半期となりました。最大の牽引役は低炭素データセンターで、DayOneの45億ドルとNScaleの20億ドルの2件だけで全体の34%を占めています。IPO市場も活況で、地熱のFervoは上場初日に35%高、SMRのX-energyは27%高と気候テック株への投資家需要が鮮明です。一方、カーボンクレジット分野は61%減と急落し、低炭素燃料も56%減。取引件数は5年来最低に落ち込み「少ない企業に大きく賭ける」傾向が顕著になっています。気候適応の衛星・地球観測分野への投資も急拡大しています。

💡インサイト▶ 気候適応の衛星・地球観測分野への投資が急拡大している事実は、物理的気候リスクが「将来の脅威」から「現在の事業リスク」へ転換していることを示しており、日本企業のリスク管理・サプライチェーン評価においてリモートセンシング・気候データ活用を急ぐ価値がありそうです。/カーボンクレジット分野のVC投資が61%減となりオフテイク契約に移行している事実は、日本企業の脱炭素調達においても「株式投資より長期購買契約」という資金調達構造の変化を踏まえた戦略設計が必要になりつつあるといえそうです。

image credit: Currence

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Conference BoardとESGAUGEの調査によれば、S&P500企業のうちScope 1削減目標を設定した企業の58%が2021年以降も排出量が横ばいまたは増加しています。Scope 3では62%に達します。背景にあるのは政治的圧力ではなく「資本配分」の問題で、回答企業の半数以上がAI・サイバーセキュリティ・デジタル変革への投資を脱炭素より優先していると回答しました。自社目標を「ほぼ全カテゴリーで達成できる」と確信しているサステナビリティ担当者はわずか25%にとどまります。Burberryはネットゼロ目標を2050年に延期し、JBSはScope 3目標を撤廃しました。一方AT&Tは5年間でScope 1を48%削減しており、対応に大きな格差が生じています。

💡インサイト▶ S&P500の58%が排出削減目標を達成できていない現実は、日本企業のサプライヤーとして取引する際に「目標の有無」だけでなく「実績の進捗」を精査する必要性を示しており、Scope 3評価の精度向上が急務といえそうです。/「資金手当てのない気候目標は守りにくくなる」という指摘は、日本企業が自社のGX目標を設定する際に具体的な予算・投資計画と一体化させなければ対外的な信頼性を失うリスクを示しており、目標と資本計画の統合が必要となりそうです。

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中国税関総署によれば、2026年上半期の中国のグリーンテック製品輸出は前年同期比3割超増となりました。リチウム電池が38%増、風力タービンが36%増と急拡大しています。中東戦争によるエネルギー供給不安が世界の再エネ需要を加速させており、「中国は完全な産業システムと全チェーン対応能力で突発的な外部需要を素早く取り込んだ」と当局者は語っています。民間企業によるEV・リチウム電池・太陽光製品の輸出は46%増と特に好調で、Q1のリチウム電池輸出急増(50%増)からの勢いが継続しています。基礎有機化学品も25%増、プラスチック原料も35%増と幅広い分野で輸出拡大が鮮明です。

💡インサイト▶ 中国がホルムズ危機という「突発的な需要」をグリーンテック輸出急増に転換できた背景には全チェーン対応能力があり、日本企業が同様の地政学的機会を活かすには特定技術への特化と迅速な供給体制の構築が差別化軸となりそうです。/リチウム電池・風力・太陽光の3分野で中国民間企業の輸出が46%増という事実は、日本企業がASEANや中東で再エネ機器を供給する際に中国製品との競合がさらに激化していることを示しており、非価格競争力の強化が急務といえそうです。

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東京電力ホールディングスなど大手電力8社が、AIデータセンター需要に対応するため全国30カ所で変電所を新増設します。2030年代前半までの整備で送電容量は原発15基分にあたる約1,500万kWに達する見込みです。OCCTOはデータセンターの電力需要が2026年度の64万kWから2035年度に10倍の661万kWに達すると予測しており、大手電力は需要予測の2倍以上のペースで整備を先行させます。送電設備の新増設は18都道府県で計画され、地方でのデータセンター投資の可能性も広がります。全国の送配電網整備には年間4兆8,000億円が必要とされ、コストの一部は電気料金に転嫁される見込みで、受益者負担の在り方が課題となっています。

💡インサイト▶ 18都道府県での変電所整備は首都圏・関西以外の地方でのデータセンター立地を可能にするものであり、北海道・九州など再エネが豊富な地域での低炭素データセンター誘致という新たな地域産業モデルが現実化しつつあるといえそうです。/年4兆8,000億円の送配電投資の一部が電気料金に転嫁される構図は、データセンター事業者と一般家庭の費用負担配分という政策課題を示しており、受益者負担の制度設計が日本のAI競争力と電力料金政策の分岐点となりそうです。

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Nikkei Asia
@NikkeiAsia
Tokyo becomes as hot, humid as cities in Southeast Asia<br />
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Work time lost due to heat rises to 2.8 billion hours a year in Japan<br />
<a href='https://asia.nikkei.com/spotlight/datawatch/tokyo-becomes-as-hot-humid-as-cities-in-southeast-asia' target='_blank' rel='nofollow noindex noreferrer'>s.nikkei.com/4aJZFfe</a>
Tokyo becomes as hot, humid as cities in Southeast AsiaWork time lost due to heat rises to 2.8 billion hours a years.nikkei.com
2026/07/18 12:49
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NOAAの気象データを基にしたNikkei Asiaの分析によれば、東京の7〜8月の気温・湿度はバンコクやシンガポールに近い水準に達しています。日本全体での熱中症による潜在的労働損失は年間28億9,000万時間と2010年代の平均の2倍に拡大しました。一人当たりでは年間43時間(約5.4日分)の損失です。2025年の労働災害としての熱中症・死亡事例は2年連続で過去最多を記録。鴻池建設は7〜9月に月9日連続休暇を設け、10月以降の土曜稼働で補填する季節シフトを導入しています。世界全体では2024年の熱による経済損失が1兆ドルに達しており、日本でも「人を冷やす対策から、熱にさらされる時間を減らす対策へ」の転換が急務とされています。

💡インサイト▶ 熱中症による年間28億時間の労働損失は製造業・建設業・物流を直撃しており、日本企業の生産性・安全管理・人材確保戦略において「夏季の労働時間設計」が経営上の優先課題に浮上しつつあるといえそうです。/「早朝・夜間シフト・季節別稼働調整・リモートワーク促進」という対策の転換は、建設・製造・物流向けの作業環境技術・空調・IoTモニタリング分野に強みを持つ日本企業にとって国内外での事業機会となりそうです。

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オーストラリアで家庭用蓄電池の普及が急加速しています。今年に入り毎日約2,000台が設置され、3月には世界の新規蓄電池容量の約10%をオーストラリア1カ国が占めました。政府の48億ドル補助金プログラムが起爆剤となり、現在60万台の家庭用蓄電池が稼働中——カリフォルニア州の3倍以上です。太陽光パネル普及率は戸建て住宅の40%に達しており、蓄電池との組み合わせが電力ピーク時の系統負荷を大幅に軽減。2026年Q1の発電コストは12%低下し、消費者の電気料金削減につながっています。2030年目標の再エネ比率82%の達成も現実味を帯びており、「太陽光が石炭のランチを食べ、蓄電池がガスのディナーを食べている」と専門家は表現しています。

💡インサイト▶ 補助金×太陽光普及率×中国製電池の低価格という「三位一体」がオーストラリアの蓄電池ブームを生んだ構図は、日本でも太陽光普及率が高い戸建て住宅市場を対象に同様の政策設計が有効となる可能性を示しており、蓄電池メーカー・エネルギー企業・政策立案者にとって具体的な参考モデルとなりそうです。/家庭用蓄電池がピーク需要を平準化し発電コストを12%押し下げたという実証データは、送配電網増強(日本では年4兆8,000億円が必要)の一部を「需要側の分散化」で代替できる可能性を示しており、日本のグリッド投資戦略の見直しにつながりそうです。

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