ビル・ゲイツ氏の気候変動へのスタンス変更─COP30で始まる気候テック投資の規範転換

COP30がブラジルのベレンで11/10から開催されることもあり、気候変動関連のレポート、世論調査、発言など、様々な話題が溢れる一週間でした。よい連休をお過ごしください🙂
市川裕康 2025.11.01
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*「Climate Curation」では英語圏の記事を中心にピックアップしています。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています。以下の【Japan Climate Curation #176】をご覧ください。

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*今回ピックアップしたトピック関連のnote記事を書いてみました👇

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

  • アントニオ・グテーレス国連事務総長は、人類が1.5℃の気温上昇目標達成に失敗し、今後数年でのオーバーシュートが不可避であると警告しています。このような失敗は、アマゾンやグリーンランド、西南極大陸、サンゴ礁など全球規模のティッピングポイント越過による壊滅的な影響をもたらします。各国から提出されている気候行動計画(NDC)は、必要な60%の排出削減に対し、わずか10%削減の見通しに留まっています。COP30での方向転換が急務であり、先住民コミュニティの声をより大きく政策決定に反映させることが不可欠だと強調しています。

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  • 気候変動による直接的な健康被害が深刻化しています。国際医学機関などで構成される「ランセット・カウントダウン」の2024年報告書によると、2012~2021年に熱で年平均546,000人が死亡し、マラリアの死者に相当します。2020~2024年、世界人口は年平均19日の危険な熱波に直面し、その80%以上は気候変動が原因です。熱関連死は26カ国で全死亡の3%超を占め、赤道ギニアでは7.4%に達しています。火災由来のPM2.5で年154,000人が死亡し、デング熱の報告も過去最高を更新しました。同報告書は、気候変動と健康問題が密接に絡み合い、対策が人間の健康維持に不可欠であることを示唆しています。

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  • トランプ政権が化石燃料使用の継続を世界に圧力をかけて強要しています。国際海事機関での炭素税導入延期を主導し、外交官による説得活動や関税、ビザ制限といった措置をちらつかせながら、米国産エネルギー投資を約束させています。日本は5500億ドル、韓国は1000億ドル、EUは7500ドルの投資を強いられており、気候変動対策の先導役だったEUも脱炭素政策を後退させています。パリ協定から再び離脱し、COP30への正式代表団派遣も検討していません。結果として各国は米国の圧力に対抗するため、中国とのゼロエミッション技術連携を強化する動きを見せており、トランプ政権の中国批判とは裏腹に、各国が「知っている悪魔」として中国への依存を深めています。一方、国内では風力・太陽光発電の普及は継続し、多国籍企業も市場需要に応じて脱炭素化を静かに進めており、完全な気候政策の転換には至っていません。

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  • ビル・ゲイツ氏はCOP30に向けて気候戦略の根本的な転換を提唱しています。気候変動は深刻ですが、技術革新により解決可能であり、「ドゥームズデイ」的見方は誤りだと指摘。人間の福祉を最優先に、グリーンプレミアム(清潔エネルギーと化石燃料の価格差)のゼロ化と貧困国の農業・健康改善に資源を集中すべきだと提言しています。電力・製造・農業・運輸・建物の五部門での技術革新と、データに基づいた効果測定が重要だと強調しています。

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  • ビル・ゲイツが気候ファイナンスの配分方法を批判し、COP30での議論が先鋭化します。ゲイツは「気候対策に指定されたお金が正しく使われていない」と指摘。英国の開発金融機関BIIは2022~2024年に130件、20億ポンド(26億ドル)の気候ファイナンス投資を実施していますが、その中に問題事例が複数含まれています。最たるものは、インド最大級企業マヒンドラの電気自動車事業への2.44億ドル投資。販売価格が1.7万~3万ドル以上の高級車です。一方、インドの一人当たり名目GDPはわずか2,697ドル。貧困層へのアクセスはほぼ皆無です。同様に、フランステレコムの子会社ソナテルやアクシアンによる太陽光発電モバイルタワー投資も、定義の広さへの疑問が提示されています。ゲイツは低炭素技術のコスト低下支援と極度の貧困・農業改善の二つを優先すべきと主張。開発援助予算が逼迫する中、年300億ドルの気候ファイナンスをいかに配分するかが、COP30の重要な論点となります。

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  • 英国のFloodAction Coalitionが湿地保全に10億ポンド投資するプロジェクトを提唱しています。洪水で年間60億ポンド(約1.2兆円)の被害を受け、800万世帯が脅威にさらされている英国では、自然復元が経済的命題となっています。記事は環境活動家に二つの戦略転換を促しています。第一に、炭素排出削減から生物多様性保全への視点拡大です。保守派も自然保護に賛成しやすく、政治的現実性が高いと指摘しています。第二に、気候変動緩和から気象災害への適応策への重点シフトです。1.5℃目標達成が困難な今、既に起きている極端気象への対応が経済的に必須であると述べています。

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  • ブラジルは11月10~21日にベレンでCOP30気候サミットを開催し、気候変動適応への資金確保を主要議題とします。国連報告書は2035年までに年3100億ドルの適応資金が必要と指摘していますが、現状は年26億ドル程度に留まっています。ブラジルのコレア・ドゥ・ラーゴCOP30議長は、先進国、民間投資、多国間開発銀行からのファイナンスパッケージ構想を提示。米国が気候行動から撤退する中、他国が取り組みを継続することを国際社会に示す狙いがあります。

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  • 世界的な太陽光発電ブームが加速する一方で、米国ではトランプ政権が再生可能エネルギー支援を削減しており、方向性が大きく異なります。中国は2024年に世界の太陽光モジュール約8割を生産し、製造コスト大幅低下により世界市場を主導。世界の太陽光パネルの約半分を設置しています。インドは243ギガワットに達し2030年までに500ギガワットを目指し、サウジアラビアは130ギガワット、南アフリカやアフリカ各国でも太陽光発電が急速に拡大しています。しかし、エネルギー貯蔵、送電網整備、暖房など電化への転換など構造的課題が多く残されており、エネルギーは追加段階に過ぎず、化石燃料からの本当の転換にはまだ遠い状況です。2024年のエネルギー関連排出は過去最高を更新しました。

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  • バッテリーリサイクル企業Redwood Materialsが、Eclipse Venturesをリードとし、NvidiaのNVenturesを含む複数の投資家から3億5000万ドルの資金調達に成功しました。Tesla共同創設者のJ.B. Straubel率いる同社は、バッテリーからリチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要材料を回収し、エネルギー貯蔵システムも展開しています。国際的なサプライチェーン断絶とAI技術による大規模なエネルギー需要が急増する中、国内供給確保の優先度が高まっている時期での調達となります。Volkswagen、Panasonic、Toyotaなどとパートナーシップを構築しています。

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気候変動の原因は人間活動だという科学的見解について、日本人の認知度が34.8%にとどまることが内閣府の調査で明らかになりました。2年前の調査と比べ、7.5ポイント低下しており、IPCC報告書発表(2023年3月)からの時間経過が影響していると分析されています。地球温暖化対策で二酸化炭素などの排出を減らすことに「取り組みたい」と答えた人は89.2%だったと発表した一方、9.7%が「取り組みたくない」とし、「効果があるのか分からない」(56.4%)、「情報不足」、「常に意識して行動するのが難しい」(それぞれ30%超)などが理由として挙げられています。*出典:気候変動に関する世論調査(令和7年9月調査)

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