⚖️ 気候法廷時代の幕開け - 国際司法裁判所(ICJ)の画期的判断が変える「排出責任」と各国政策の分水嶺

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで700名以上、Linkedinニュースレターでは1,110名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。
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🇯🇵Climate Curation vol. 168 音声概要 [8:39 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 168 audio summary in English [17:22 min.]
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*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4 などの生成AIツールを使用しています🙂
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
*今回は英語圏の記事を中心にピックアップしました。日本における気候変動・脱炭素関連のニュースは毎週水曜日に配信しているJapan Climate Curationで英語で報じられているニュースを中心にまとめています(【4】⚡ 選挙後の日本、エネルギー安保重視に転換 脱炭素政策は継続 [7/23 Japan Climate Curation]としてご紹介しています。日本語での音声概要もあるのでぜひ活用いただけたら幸いです。)
【1】⚖️ 国際司法裁の気候変動「画期的判断」が世界に与える影響とは [7/25 Carbon Brief]

💬 w/ comment from @DBGarridoAlves, @jamjoyrey_, Prof Viñuales, Dr Maria Antonia Tigre, Harj Narulla, Dr Bill Hare
Read here: buff.ly/rup2ABj
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国際司法裁判所(ICJ)が7月23日、気候変動に関する画期的な勧告的意見を全会一致で発表。国家は温室効果ガス排出に対して法的責任を負い、気候変動による被害者は「損害賠償」を受ける権利があると判断。太平洋島嶼国の学生らの働きかけで始まったこの案件は、法的拘束力はないものの大きな影響力を持つ。1.5°C目標を主要温度目標とし、化石燃料の生産・消費が国際法違反行為となる可能性を示唆。気候正義と脆弱国への補償に新たな法的根拠を提供。
【2】⚖️ 気候変動の責任、国が他国を提訴するのは可能 国際司法裁が勧告的意見 [7/24 BBC News Japan]
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国際司法裁判所(ICJ)は23日、気候変動に関する画期的な勧告的意見を発表した。国が他国に対し温室効果ガス排出の責任を問う訴訟を起こす道を開き、損害賠償請求の権利も認めた。太平洋諸島出身の法学生が2019年に起こした訴訟が発端で、気候変動に脆弱な国々の勝利と受け止められている。法的拘束力はないが、世界各国の裁判所での活用が期待される。先進国は既存の気候合意で十分と主張したが、ICJはより野心的な対策を求めた。
【3】⚡ 化石燃料「袋小路」、再生エネ台頭 国連トップ [7/22 Financial Times🔏]
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国連のグテーレス事務総長は化石燃料が「行き詰まり」を迎えていると発言。2024年に再生可能エネルギーが新規電力容量の92.5%を占め、クリーンエネルギー投資は2兆ドルと化石燃料を8000億ドル上回った。太陽光発電は化石燃料より41%、風力は53%安い。トランプ政権がパリ協定から再度離脱し「掘れ、もっと掘れ」政策を推進する中、中国ではクリーンエネルギー部門がGDP成長の25%を占める。グテーレス氏は化石燃料補助金廃止とテック企業の再生可能エネルギー100%化を求めた。
【4】⚡ 選挙後の日本、エネルギー安保重視に転換 脱炭素政策は継続 [7/23 Japan Climate Curation]
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🇯🇵日本語での音声概要: Japan Climate Curation vol. 162 [7:53 min.]
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2025年の日本の参議院選挙では、与党自由民主党(LDP)とその連立相手が歴史的敗北を喫し、2013年以来初めて過半数の確保に失敗した。同時に、ポピュリスト的な参政党や中道の国民民主党などの新興政党が大きく躍進した。これらの新たな政治勢力は、積極的な脱炭素政策に対してより慎重または両義的な姿勢を示している。短期的には、この政治的変化により政策の重点がエネルギー安全保障、価格安定性、インフラのレジリエンスに向けられる可能性が高い。原子力エネルギーは復活の機運にあり、関西電力が2011年の福島原発事故以来初となる新たな原子炉建設への取り組みを再開したことがその証拠である。一方で、日本はLNG輸入戦略を強化しており、特にアラスカベースの輸出における米国との潜在的協力が注目される。しかしながら、こうした短期的な方向転換にもかかわらず、日本の長期的な気候・エネルギー転換目標が放棄される可能性は低い。全国的に40度を超える熱波などの異常気象現象が、気候リスクに対する国民の認識を高め続けている。同時に、超薄型ペロブスカイト太陽電池パネルなどの技術への政府支援による大規模投資は、グリーンイノベーションへの取り組みと中国のサプライチェーンへの依存度削減を示している。日本の2050年ネットゼロ目標とクリーンエネルギーの産業戦略は依然として中核的な柱であり続けており、政治的不安定性の高まりにもかかわらず、脱炭素化に向けた実用的かつ継続的な道筋を示唆している。
【5】🇪🇺🇨🇳🤝 EU・中国「環境で協力」 気候変動対策を共同推進 [7/24 Financial Times🔏]

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中国とEUは24日、ブラジルでのCOP30に向けて気候変動対策での協力を強化する共同声明を発表した。両者は2035年の更新された気候計画の提出と、再生可能エネルギーや炭素市場での協力を約束し、「緑こそが中EU協力の色」と表現。関係が悪化する中、気候変動は数少ない協力分野となっている。トランプ政権下で米国がパリ協定から離脱する中、世界最大級の排出国である両者の合意は重要。国連は9月までの計画提出を求めている。
【6】🇺🇸 米環境保護庁、気候変動対策能力を終わらせる計画案を作成 [7/22 The New York Times🔏]
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トランプ政権のEPA(米環境保護庁)が、温室効果ガスが人間の生命を脅かすとする2009年の「危険認定」を撤回する計画を策定。この規則は米政府の気候変動対策の法的根拠となっており、撤回されれば自動車・発電所・工場からの温室効果ガス排出規制が全て無効になる。EPAは気候規制が価格上昇と消費者選択の制約により健康被害をもたらすと主張。案は6月30日にホワイトハウスに送られ、数日内に公表予定。法的挑戦が予想される。
【7】🌪️ 異常気象で食料価格が世界的に急騰 [7/21 Financial Times🔏]

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気候変動による異常気象が世界的な食料価格急騰を引き起こしているとの研究が発表された。バルセロナ・スーパーコンピューティングセンターの調査によると、ヨーロッパのオリーブオイル50%、インドの玉ねぎ89%、韓国の白菜70%、日本の米48%など各地で記録的な価格上昇が観測された。これらは「歴史的に前例がない」規模で、異常気象の数ヶ月後に価格急騰が発生する傾向がある。貿易を通じて世界に波及し、輸入依存国は特に脆弱。中央銀行のインフレ制御や貧困層の栄養摂取にも深刻な影響。
【8】🚗⚡️ EV産業の聖地争い 中国で覇権戦激化 [7/24 The Economist🔏]
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中国で電気自動車産業の「デトロイト」を巡る激しい地域間競争が展開されている。不動産危機により同産業がGDP30%から20%に縮小する中、地方政府は自動車製造業(現在GDP5%)を新たな成長エンジンとして注力している。重慶市は年間250万台を生産し「中国のモータウン」を自称。2016年には300万台で世界最大だったが、2018年の税制優遇終了で生産半減。しかし電気自動車転換期にBYDの100億元投資、Seresの新工場誘致、長安汽車の1000億元EV投資により見事に復活した。競合として広東省が年間570万台でトップ、合肥のNIO拠点、武漢の「中国のデトロイト」宣言など12省が年間100万台以上を生産。重慶は内陸部の低い住宅価格・生活コスト、辛い料理とナイトライフの文化的魅力で人材確保に優位性を持ち、Huaweiとの戦略的提携も注目される。
【9】🌱 気候技術企業、こぞってデータセンター事業参入 AI需要と豊富な資金が後押し [7/24 Heatmap News🔏]
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AI需要急増により、多くの気候テック企業がデータセンター市場へ転換している。AI電力需要は2024年から2035年で30倍成長が予測され、トランプ政権もデータセンター建設を加速化している。元々送電線や地熱エネルギーを手がけていた企業が、データセンターの電力効率化を主力事業とする傾向が顕著だ。投資家によるとデータセンター関連ピッチが20社中1社から5社中1社へ5倍増加している。MicrosoftのThree Mile Island原子力発電所再開やGoogleのKairos小型原子炉契約など大型案件が続出し、EV向け技術のScalvyや超伝導技術のVeirも方針転換した。Google、Microsoft、Amazon、Metaとの提携交渉が活発化しているが、効率向上がより多くの消費を生む「ジェボンズの逆説」への懸念も残る。
【10】🌪️ トランプ移民政策、気候テック業界に深刻な打撃 [7/24 Bloomberg Green🔏]

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著名投資家Vinod Khoslaは、トランプ政権の移民政策が気候技術分野の最大の脅威だと警告している。5000億ドルの気候予算削減以上に深刻な問題として、優秀な人材の流入制限が技術革新を阻害し、米国の競争力を根本的に損なうと懸念を表明した。AI分野では年間2.5億ドル、日給100万ドルという破格の報酬で人材争奪戦が繰り広げられており、才能こそが成長の鍵であることを強調している。技術面では、核融合発電が5年以内に実証可能で、今後50年間の主力エネルギー源になると予測。450度の超高温地熱技術では従来の5倍のエネルギー抽出が可能とし、天然ガスより安価な電力供給を実現できると期待している。従来の風力・太陽光補助金については「より良い用途がある」として削減を支持し、ブレイクスルー技術への集中投資を主張。鉄鋼・セメント分野では既存技術より安価で低炭素な革新技術の開発に成功しており、「失敗確率は気にしないが成功時の影響を最大化する」投資哲学を貫いている。投資先も世界規模で拡大し、カナダやインドなどの新興ハブに注目している。
🎟️イベントのご案内
来週7月30日(水)、STATION Aiにて開催される「E&E FUKUOKA & AICHI コネクト」は、環境・エネルギー分野のイノベーションを地域を越えて創出することを目指したイベントです。CIC JapanによるE&Eコミュニティが福岡に拡大することを記念し、東京・愛知・福岡をオンラインで結び、スタートアップ、事業会社、行政、アカデミアの多様なプレイヤーが一堂に会します。清水建設や双日などの大手企業とスタートアップの共創事例発表、九州電力の取り組み紹介、愛知・福岡からの革新的なスタートアップピッチなど、実践的なコンテンツが満載です。私もコメンテーターとして参加し、広域連携による脱炭素イノベーションの可能性について議論させていただきます。よろしければぜひご参加ください。*名古屋と福岡にて現地開催&オンライン視聴も可能です。

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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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