世界脱炭素競争の新段階 - EU太陽光首位・中国74%独占下での参院選の意味

今週は参院選各党の気候政策から世界の脱炭素競争まで10のトピックをお届けします。いつも通り音声でも視聴いただけます🙂🎧
市川裕康 2025.07.12
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation #159」より

*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4 などの生成AIツールを使用しています🙂

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

  • 朝日新聞が参院選前に主要政党10党に実施した気候変動対策アンケートで、9党が回答。温室効果ガス削減の必要性について、参政党のみが「必要ない」と回答し、科学的議論の余地があると主張。他8党は積極的推進を支持。政府のエネルギー基本計画については、自民・公明が評価する一方、立憲・維新・共産・れいわ・参政・社民が評価せず。審議会の見直しについては自民以外の7党が必要と回答。再エネ賦課金は維新・参政が廃止を主張し、他6党は継続を求めた。

  • アンケート全文 / 気候変動・エネルギー政策どう違う 参院選、各党のアンケート回答 [7/11 朝日新聞 全文無料閲覧可🔓]

【2】💼 脱炭素政策における経済界の評価と気候テック支援戦略 [公開上を踏まえChatGPTなどにより作成]

*気候ネットワークFOEJapanなど環境NGOによる各党選挙公約の気候変動エネルギー政策に関する分析は公開されている一方で、経済界からの発信は限定的という印象を受けます。公開情報を踏まえ、あまり報道されてない「現実的」な視点、そして「気候テック」に対する考えなどをChatGPTなどを利用して調べて見ました。参考にしていただければ幸いです。

  • 経済界は脱炭素政策において、エネルギー安定供給、産業競争力維持、国際連携を最重要視している。各党政策への評価では、自民・公明の現実的なエネルギーミックスを支持する一方、立憲民主の再エネ政策には懸念を示し、共産・れいわの急進的な脱炭素政策には強い懸念を表明している。技術革新支援においては、政府主導型(自民・公明)、減税・規制緩和型(維新・国民民主)、公的投資型(れいわ・共産・立憲)の3つのアプローチが存在する。蓄電池・グリッド技術、グリーン水素、SMR、CCUS・DAC技術、分散型エネルギーなどの気候テック分野では、各党が異なる重点分野と支援方法を提示している。経済成長と脱炭素の両立には、短期的な既存技術普及と長期的な革新技術開発の両面アプローチが必要とされている。

公開情報を踏まえChatGPTなどを利用して作成した図

公開情報を踏まえChatGPTなどを利用して作成した図

同上

同上

  • EU域内で2025年6月、太陽光発電が初めて発電量で首位に立った。総発電量の22.1%(45.4テラワット時)を占め、原発(21.8%)と風力(15.8%)を上回った。日照量が過去最高だったことと発電機設置増が要因。石炭発電は6.1%と過去最低を記録。ただし上半期全体では化石燃料発電が13%増加しており、蓄電システムとグリッド柔軟性の拡充が今後の課題とされる。

  • 出典:Solar is EU's biggest power source for the first time ever [7/10 Ember]

  • 中国が世界の太陽光・風力発電建設プロジェクトの74%を担っており、510GWの建設中プロジェクト(1GWで約100万世帯分の電力供給能力)は世界総計689GWの大部分を占める。2025年第1四半期で再生可能エネルギーが中国の総電力消費の22.5%に達し、昨年の経済成長の4分の1をクリーンエネルギーが牽引した。一方で新規石炭火力発電所建設も継続しており、温室効果ガス排出量の世界3分の1を占める中国の複雑なエネルギー政策が浮き彫りになっている。

  • 英経済学者ニコラス・スターン氏らの研究によると、AIが気候変動対策に大きく貢献する可能性がある。運輸・電力・食品部門で2035年までに年間32-54億トンの排出削減が期待され、最大25%の削減効果が見込まれる。GoogleのDeepMindは風力発電効率を20%向上させた実績もある。しかし実用化には課題も多く、商業的動機と環境保護の両立が困難な場合がある。政府の積極的関与が成功の鍵となる。

  • 米議会のOBBBA法案[各種減税策等を盛り込んだ税制法案(One Big Beautiful Bill Act)]可決により、クリーンエネルギー税控除が大幅削減され、今後5年間で太陽光・風力発電が40ギガワット減少する見込み。しかし業界は州レベルでの政策支援、市場主導型アプローチ、許可改革に注力し対応。政策の党派的変動は新しくないものの、企業は連邦政府への依存から脱却し、より分散型で持続可能な戦略を模索。技術進歩と経済効果により、将来的には超党派支持の可能性も。

  • 2025年前半の気候技術投資は前年同期比19%減少したが、債務融資の増加により市場は安定している。米国が世界投資の51%を占め、政策不確実性にも関わらず堅調。エネルギー分野が最大で、AI対応ソリューションが投資の5分の1を占める。成熟技術への投資は減少し、新興技術が注目される。投資家はより選別的になり、シリーズB段階で29%減少。市場は成熟期に入り、7%成長と安定成長に移行している。

  • ベンチャーキャピタリストのVinod Khosla氏は、トランプ政権の反気候変動姿勢が結果的に気候技術を改善する可能性があると主張。補助金に依存せず***「Chindia価格」(中国・インドが補助金なしで採用できる価格)で競争できる技術開発が重要**とし、核融合、地熱、低炭素鉄鋼・セメントなどの分野でアメリカが製造業の優位性を取り戻し、地政学的影響力を強化できるとしている。

  • フランス公共放送フランステレビジョンの気候変動報道責任者オードレ・セルドンさんが「気候変動を毎日のニュースにする方法」について講演。気候変動報道は断続的ではなく継続的な公共サービスの責任であり、すべての記者・取材者が担うべきだと強調。新しい番組を作るより既存番組で取り上げる方が効果的で、問題提起だけでなく解決策や適応策も伝えることが重要。科学者との連携強化、起こりうる事象の事前準備、目に見えない変化の可視化、視聴者の疑問を出発点とする姿勢が成功の鍵と伝えています。

【10】🌡️ 欧州熱波で死者2300人 科学者推定 [7/10 France24 YouTube]

*France 24はフランス政府が所有するいわゆる「国営放送」の国際ニュース専門チャンネルです。熱波による死者が増加していることに関し、長尺で科学的な根拠を伝え、気候変動対策を訴えるグリーンピースによるキャンペーンについても報道しています。背景として、上記記事で伝えられているフランステレビジョンの気候変動報道責任者オードレ・セルドンさんらの取り組みが反映されていることがうかがえます。

  • 研究によると、人為的気候変動がヨーロッパの熱波を最大4度高温化させ、12都市で約2,500人が死亡した。このうち1,500人は気候変動がなければ生存していたとされる。6月は西欧で観測史上最も暑い月となった。都市部では樹木の減少と舗装面の蓄熱により被害が拡大。夜間も気温が下がらない「熱帯夜」が続いた。Greenpeaceは石油・ガス会社への課税を通じた「汚染者負担」原則の導入を提唱し、気候変動対策費用を化石燃料企業に負担させるべきだと主張している。

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🎟️イベントのご案内

7月30日、STATION Aiにて開催される「E&E FUKUOKA & AICHI コネクト」は、環境・エネルギー分野のイノベーションを地域を越えて創出することを目指したイベントです。CIC JapanによるE&Eコミュニティが福岡に拡大することを記念し、東京・愛知・福岡をオンラインで結び、スタートアップ、事業会社、行政、アカデミアの多様なプレイヤーが一堂に会します。清水建設や双日などの大手企業とスタートアップの共創事例発表、九州電力の取り組み紹介、愛知・福岡からの革新的なスタートアップピッチなど、実践的なコンテンツが満載です。私もコメンテーターとして参加し、広域連携による脱炭素イノベーションの可能性について議論させていただきます。よろしければぜひご参加ください。*名古屋と福岡にて現地開催&オンライン視聴も可能です。

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  • ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋

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