異常気象3倍激化を科学実証:AI需要で2050年電力危機、加速する技術競争

先日開催され、パネルディスカッションのモデレーターとしても参加の機会をいただいたFDSF PEST Conference 2025の動画アーカイブが公開されています。
市川裕康 2025.06.28
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation #158」より

*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

  • 東京大学と京都大学の研究者で構成する極端気象アトリビューションセンターは、2025年6月中旬に発生した記録的高温について分析し、人為的な地球温暖化が決定的要因だったと結論付けた。6月16-18日の日本上空1500メートルの平均気温は17.2度と1950年以降最高を記録。太平洋高気圧などの自然現象だけでは説明できず、温暖化による気温底上げがなければ起こりえなかったと科学的に実証された

  • 米欧で「ヒートドーム」現象により危険な高温を記録。科学者は1950年代以来、こうした異常気象の強度と持続期間が約3倍に増加**したと発表。マンハッタンで37℃、アテネ近郊で40℃に達し、山火事や洪水も各地で発生。ジェット気流の変化が原因で、気候変動により今後も頻発する見込み。既存の気候モデルでは現象を完全に予測できず、温度記録の大幅更新が常態化すると専門家が警告。

  • 人為的な地球温暖化が1970年代から加速し、現在は10年あたり0.27度上昇**している。2024年は史上最高の暑さを記録し、アメリカでは記録的ヒートドーム、アラスカでは初の熱波警報が発生した。極端気象の激化、海面上昇の加速、地球のエネルギー収支不均衡の拡大など、予測を上回る変化が観測されている。科学者らは、大気汚染物質エアロゾルの減少が温暖化加速の主因と分析。

  • ウイングアーク1st株式会社が開発中の新MotionBoardを使った「猛暑ボード」を6月26日から9月30日まで期間限定で一般公開。気象庁データを基に全国の猛暑状況を現在・過去・未来で可視化するダッシュボードで、天気予報、猛暑マップ、ランキング、過去数百年の猛暑カレンダー、AI生成トリビアなどの機能を搭載。

  • 気象庁は2030年以降、スーパーコンピューターとAI技術を活用し、数年~30年先の気温・降水量・海水温を予測する新サービスの運用を目指す。従来の1週間~3カ月予報を大幅に拡張し、自治体や企業からの長期気候情報ニーズに応える。インフラ整備、エネルギー需要予測、農業の品種改良、漁業戦略などへの活用を想定。市町村単位での詳細予測実現に向け、数値予報モデルの精度向上が課題。

  • 今晩6/29 午前1時33分3秒に打ち上げされる温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」(愛称「いぶきGW」)の応援イベントの様子もご覧いただけます:)

  • 日本の送電事業者は、2050年に電力供給不足が発生する可能性があると発表した。データセンターや半導体工場の需要増により、電力需要は2019年比で最大42%増加する見通し。老朽化した火力発電所の非代替と原子力発電所の廃炉により、最悪シナリオでは89ギガワットの供給不足が予想される。AI関連需要の拡大が主因で、再生可能エネルギーの拡大だけでは需要増に対応できない可能性が示された。

  • [詳細:6/25 電力広域的運営推進機関 第10回 将来の電力需給シナリオに関する検討会 配布資料]

  • 元MetaCTOのMike Schroepferが気候テック投資について語ったインタビュー。AI需要の急増により、エネルギーアクセスが企業の最重要課題となり、新たなエネルギー革新を促進していると指摘。投資では気候効果よりもまずビジネスとしての成立を重視し、5倍以上の競争優位性を持つ企業**を選んでいる。政策変化により水素・炭素除去は困難になるが、核融合など一部分野は活性化すると予測している。

  • 米国は中国に対するグリーン技術の「スプートニク・モーメント」を逃している。バイデンのインフレ削減法は雇用創出と中国対抗を目指したが、両方とも失敗。トランプ政権下で環境技術支援が削減される見込み。米国は過去にもリチウム電池など革新技術の商業化を中国に譲った歴史がある。政治的イデオロギーが経済合理性に勝り、保護主義と気候変動否定が技術的優位性を損なっている。

  • London Climate Action Weekが記録的な参加者数を記録し、前年比2倍以上の45,000人が参加した。トランプ政権下の米国が気候変動対策から撤退し、入国制限を強化する中、ニューヨークの姉妹イベントは影響を受けている。英国政府は「クリーンエネルギー超大国」を目指すと表明し、開発途上国からの参加者を支援。気候変動対策の国際的な重心がヨーロッパに移動している状況が浮き彫りになった。

  • X投稿ハッシュタグ → #LCAW2025

【10】⚡ FDSF PEST Conference 2025:逆風の気候テックと求められる気候リテラシー、産業競争戦略 [6/23 FDSF YouTubeチャンネル]

先日開催され、パネルディスカッションのモデレーターとしても参加の機会をいただいたFDSF PEST Conference 2025動画アーカイブが公開されています。サステナブルファイナンス、地政学、インパクト投資など、様々な議論を視聴することができます。

以下の動画は私が参加したものです。よろしければぜひご覧ください。

  • 気候テック分野のセッションで、ゼタジュール社(高温ガス炉技術)とアルバトロス・テクノロジー社(浮体式風車)の代表、ビジネスインサイダージャパン編集長が登壇。「逆風」と言われる気候テック市場だが、地政学リスクによりむしろ日本技術に追い風との見解。ゼタジュールは原理的にメルトダウンしない安全な原子力技術をアメリカで先行展開、アルバトロスは日本の深い海域に適した浮体式風車**を開発し国内製造を目指す。課題は認証・規制と人材不足だが、日本の高い技術力とエネルギー輸入依存からの脱却需要を活かせば世界標準になる可能性がある。

*先日名古屋ステーションAiで開催されたイベントの開催レポートも公開されています。併せてぜひご覧ください🙂

【GX】共創から生まれる未来の脱炭素経営 / 愛知県STATION Ai開催レポート [6/23 CIC Tokyo 環境エネルギーイノベーションコミュニティ note]

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  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋

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