1.5度突破まで3年の警告:食糧減少と情報戦争、迫る気候危機の現実

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🇯🇵Climate Curation vol. 163 音声概要 [7:39 min.]
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🇺🇲Climate Curation vol. 163 audio summary in English [14:38 min.]
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation #157」より
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🍚 温暖化で気温1度上昇→世界の食糧生産、1人1日ご飯0.5杯分減に [6/19 朝日新聞]
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米中研究チームがネイチャー誌に発表した研究によると、地球温暖化で気温が1度上昇すると、世界の主要食糧生産量が1人1日あたり120キロカロリー(茶わん0.5杯分)減少。現在既に1.6度上昇しており、今世紀末に4度上昇すれば茶わん2杯分の減少となる。小麦、大豆、トウモロコシなど6種の作物を54カ国で調査した結果、品種改良などの対策を講じても減収は避けられず、特に貧困国の栄養源キャッサバの全域的減少が懸念される。
【2】🌡️ 猛暑や豪雨の異常気象、温暖化影響を数日で分析 東大・京大の研究者 [6/18 朝日新聞]
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東京大と京都大の研究者が「極端気象アトリビューションセンター」を設立。猛暑や豪雨などの異常気象に対する地球温暖化の影響を、従来の1~2カ月から数日に短縮して分析・発信する。スーパーコンピューターで温暖化ありなしの地球をシミュレーション比較し、昨年7月の猛暑は温暖化なしではほぼ起こりえなかったと判明。既存データの統計活用で速報性と信頼性を両立し、気候変動への社会意識向上を目指す。
【3】🔥 地球の気温上昇、抑制目標の「1.5度」突破まであと3年……著名科学者らが警告 [6/20 BBC Japan]
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世界の著名気候科学者60人以上による最新研究で、現在の二酸化炭素排出水準が続けば、地球の気温上昇がパリ協定目標の1.5度を3年以内に突破する恐れがあることが判明。炭素予算は1300億トンまで縮小し、年間400億トンの排出が続けば約3年で枯渇。地球のエネルギー不均衡は過去10年で倍増、海面上昇速度も1990年代以降で2倍に達している。迅速で厳格な排出削減がこれまで以上に重要となっている。
【4】📱 「EVしか乗れなくなる?」気候変動のフェイクが拡散 いま何が [6/14 NHK]
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気候変動に関する誤情報がSNSで急拡散している。2021年から2024年にかけて気候変動を疑うインフルエンサーの投稿がX上で82%、YouTube上で43%増加。背景には化石燃料産業の既得権益保護と注目による収益獲得の2つの動機がある。日本でも関連投稿が5年で3倍増加し、オーストラリアでは誤情報により議会が混乱する事態も発生。国連は情報源確認と専門家相談を推奨している。
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見逃し視聴[NHKオンデマンド]:6/21 22:00まで視聴可能
【5】🏛️ 「温暖化は人為的でない」増える誤情報 環境省が対策のサイト設置 [6/20 朝日新聞]

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環境省は気候変動の誤情報対策として専用サイト「気候変動の科学的知見」を開設。SNSで「温暖化は人為的でない」との偽情報が半年間で急増し、企業や国民の対策実行を阻害する懸念から。国際研究によると、従来の否定論から政策疑問視へシフトし、化石燃料企業等が対策遅延を狙った偽情報を拡散。政府は科学的根拠に基づく正確な情報発信を強化し、あらゆる主体の気候変動対策を促進する方針。
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👉大事な取り組みとは思うものの、開設されたページを見るとテキストのみのページで過去に掲載された専門的な資料や記事へのリンクが掲載されているページ構成になっているようです。専門的な科学的根拠の発信と共に、対策することの経済的メリットなど、多くの人が感じる不安に応える総合的な情報を今後期待しています。また、ビジュアルや動画要素も活用しながら分かりやすく伝わりやすいサイトに今後進化していくことも。
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偽・誤情報対策としては以下の書籍もおすすめです。「世界一クールな気候変動入門: 情報を正しく判断するために」[2024/10/29 河出書房新社] *著者はサイト「Skeptical Science」著者のジョン・クック氏
【6】🇺🇸 アメリカの気候変動否定論、新たな手法へ - トランプ政権は地球温暖化の科学を真っ向から否定することから、単純に軽視する姿勢へと転換した [6/17 Bloomberg Green]
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トランプ第二次政権は気候変動への「否定」から「軽視」戦略に転換した。「美しいクリーンな石炭」「気候変動宗教」「気候現実主義」等の表現で、科学的証拠を否定せず問題の重要性を矮小化している。専門家は「フレーム戦争」と呼ぶプロパガンダ戦略で、科学者への信頼を損ない化石燃料推進政策を正当化する手法と分析。圧倒的な科学的証拠により完全否定が困難となった今、より巧妙な言語操作で世論形成を図る新たなアプローチとして注目される。
【7】⚡ なぜ世界は石炭をやめられないのか - パリ協定締結から10年、石炭需要に衰える気配なし [6/18 Financial Times]
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パリ協定締結から10年近く経過したが、世界の石炭使用量は減るどころか2000年比で約2倍に増加している。特に日本の隣国である中国・インドの電力需要急増が主因で、中国では電化推進により電力需要が経済成長を上回るペースで拡大、インドは電力の4分の3を石炭に依存している。石炭の経済性、COVID-19やウクライナ戦争などの地政学的要因も石炭回帰を促進した。再生可能エネルギーの成長も急増する電力需要に追いつかず、IEAの「石炭需要ピーク予測」は外れ続けている。
【8】🔋 エネルギーと気候変動政策を動かす力: 電力業界の政策関与 - 第7次エネルギー基本計画と1.5℃目標に向けた政策形成の実態分析 [6/20 Influencemap]
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日本の第7次戦略的エネルギー計画(2025年策定)は、2040年に火力発電(石炭・LNG・石油)が30-40%を占める見通しを示した。再生可能エネルギー目標は40-50%で、IPCC推奨値を下回る。InfluenceMapの分析によると、電力業界の影響で化石燃料・原子力依存が継続。JERA、中部電力、J-POWERが石炭廃止に最も抵抗。経団連等の業界団体を通じた政策への強い影響力が課題となっている。
【9】💰 「化石燃料ファイナンス報告書 2025」発表 - 世界65銀行の化石燃料への2024年資金提供額は8,694億ドルに急増、米銀とメガバンクが上位独占 みずほ4位、三菱UFJ6位、SMBC11位 [6/18 レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)]
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米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワークなどが「化石燃料ファイナンス報告書2025」を発表。世界上位65銀行による2024年の化石燃料企業への融資・引受額は約8,694億米ドルで、前年比1,625億ドル増加。日本の3メガバンク(みずほ4位、MUFG6位、SMBC11位)がワースト12入りし、全体の12%を占めた。化石燃料拡大企業への資金提供でも同様にワースト上位となり、パリ協定1.5℃目標との整合性が問題視されている。
【10】📊 気候投資家市場センチメント調査(Climate Investor Market Sentiment Survey) [6月 Sightline Climate / Elemental Impact] *レポートのダウンロードはこちら

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2025年6月発行のsightline climate調査によると、気候テック投資市場は深刻な課題に直面している。69%の投資家がFOAK(初回商業化)プロジェクトへの資金調達縮小を予想し、45%がシリーズB/C段階を最難関と見る。政策不確実性が最大の懸念(54%)で、投資家の56%が「政策証明」ビジネスモデルに注力している。4500万ドル〜1億ドル規模が「欠落した中間層内の欠落した中間層」として資金調達困難を抱える。一方、フィランソロピーへの期待は高く、51%がFOAK資金提供を最も触媒的な役割と評価。クリーンエネルギーは依然として投資家関心のトップ(23%)を維持している。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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