トランプ政権下の気候テック混乱 - 炭素回収業界に逆風、原子力には追い風

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで800名以上、Linkedinニュースレターでは1,100名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。
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🇯🇵Climate Curation vol. 159 音声概要 [8:04 min.]
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🇺🇲Audio Summary of Climate Curation vol. 159 in English [10:53 min.]
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 153」の概要
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気候研究のための極端気象アトリビューションセンターの立ち上げ、2030年代の核融合発電所を計画する一方で、日本の自動車産業は重大な課題に直面している。ホンダは、中国との競争でバッテリー戦略が苦戦する中、EV投資額を10兆円から7兆円に削減した。トヨタは、関税を回避するため当初は日本で生産しながら、テスラの充電規格を採用して米国でのEV戦略を見直している。日本の水素トラック補助金プログラムは代替燃料への継続的な関心を示しており、これは原子力大国として台頭する韓国や、原発停止後にエネルギー課題を抱える台湾とは対照的である。一方、マルチ・スズキはインドでの事業拡大を目指し、富裕層を超えた「次の10億人」の自動車購入者をターゲットにしている。
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🔋 クライムワークス、従業員22%削減 米国の気候対策反発で炭素除去業界に逆風 [5/21 Bloomberg Green]

Find the answers in my interview with the CEO Jan Wurzbacher.
bloomberg.com/news/articles/… Climeworks Is Cutting 22% of Staff as US Climate Backlash Hits Carbon Removal Climeworks AG is laying off 106 people, as startups that aim www.bloomberg.com
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スイスの炭素回収企業Climeworksが従業員の22%にあたる106人を解雇すると発表。トランプ政権の気候政策後退により、50億ドル規模のルイジアナ工場プロジェクトが不透明になったことが主因。同社は2009年設立以来約8億ドルを調達し、空気中のCO2を直接回収する技術を開発してきたが、高コスト構造と技術的課題に直面。現在稼働中のアイスランド工場も設計容量を大幅に下回る実績となっている。共同創設者は「極端な成長フェーズ」からコスト削減と収益性重視への転換期と説明。
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5月15日にアイスランドの調査報道メディアHeimildin(ヘイミルディン)が報じた『Climeworks の CO2 回収量、自社排出分をカバーできず』と題した記事がきっかけで、クライムワークスの回収プロジェクトが期待された成果を上げていないのではないか、と業界では大きな話題と懸念を呼び起こしました。こちらのブルームバーグの記事ではクライムワークス共同創業者がポッドキャストに登場し、批判は受け止めながらもCO2回収の必要性を指摘、新しい技術を実装するには時間はかかるものの、着実に今後も事業を進めていくと語っています。
【2】🌾 農業×テックで脱温室ガス、各地で実証事業 普及のカギは? [5/19 毎日新聞]
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農業分野の温室効果ガス削減に向け、革新的技術の実証事業が各地で進行中。九州大発ベンチャー、カーボンエクストラクト社が開発したDAC(直接空気回収)装置は、特殊薄膜で大気中CO2を回収しイチゴハウスに供給、従来の化石燃料燃焼を不要にする。アサヒバイオサイクルはビール酵母を活用した乾田直播農法で、メタン発生を抑制し温室効果ガス65%削減を実現。ただし実用化には経済性確保が課題で、農工連携による現場ニーズに応じた技術開発と、農業現場を理解する研究人材育成が普及の鍵となる。
【3】🌡️ 地球温暖化と異常気象の関係分析、日本の研究センターが発信強化へ [5/20 Bloomberg]

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日本の科学者らが極端気象アトリビューションセンター(WAC)を設立し、地球温暖化が異常気象に与える影響を数日以内に解明する新たな取り組みを開始した。2024年は記録上最も暑い年となり、今年3月には半世紀ぶりの大規模山火事、2月には北海道で記録的降雪が発生。WACは日本特有の島国気候に特化した分析手法を用い、コンピューターシミュレーションで現在の気候と人間活動の影響を除いた反事実的シナリオを比較。関心が高いうちに迅速な情報提供を行うことで、気候変動への理解促進を目指す。芙蓉総合リースが初期資金を提供。
【4】🏛️ インフレ抑制法廃止で何が起こる?米グリーン補助金撤廃の影響を検証 [5/23 The Economist]
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共和党はバイデン政権のインフレ抑制法廃止を目指している。下院承認の法案は段階的廃止を装いながら、実際は再生可能エネルギーを大幅制限。税額控除の譲渡可能性廃止、中国関連規制強化、支払タイミング変更により電気料金10%上昇の可能性。しかし州レベル規制や再エネ価格競争力により、米国の脱炭素化は継続するが減速。2035年温室効果ガス削減目標は40%から30%へ下方修正される見通し。
【5】📊 GX-ETS義務化44社、30年目標「300万t未達」 東証調査 [5/21 日経GX]
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東証とエクスロード社の調査により、日本版排出量取引制度(GX-ETS)で義務参加となる企業のうち44社が2030年度のCO2排出量目標を未達成の見込みであることが判明。未達分は年間300万トン弱に上る。2026年度から本格運用が始まるフェーズ2では、年間10万トン以上の直接排出企業が参加義務対象となり、排出枠取引市場も2027年度に創設予定。企業の脱炭素化支援と規制のバランスが課題となっている。
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6/5(木)11:00~より『カーボンクレジット市場調査2025』の主要ポイントを解説する無料ウェビナーも開催予定。
【6】⚡ ペロブスカイト太陽電池で世界初の上場、中国「協鑫光電」が名乗り 大量生産へ [5/20 36Kr Japan]
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中国の協鑫光電(GCLペロブスカイト)が2025年内に香港でIPOを目指し、ペロブスカイト太陽電池分野で世界初の上場企業となる見通し。同社は変換効率27.34%を達成し、製造コストをシリコン系の約50%に削減可能。シリコン系太陽電池業界が競争激化で苦境に陥る中、理論上30%以上の変換効率を持つペロブスカイト技術が次世代ソリューションとして注目。2025年にギガワット規模生産ライン稼働予定で商用化を加速する。
【7】🤖 AIのエネルギー消費と気候への影響:3つのポイント [5/22 MIT Technology Review]
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MITテクノロジーレビューが6ヶ月の調査でAIのエネルギー使用実態を解明。AIのエネルギー需要はクエリ内容により大きく変動し、複雑な要求は簡単なものの10倍、大型モデルは小型の70倍のエネルギーを消費。データセンターの立地により排出量は2倍の差が生じる。しかし大手企業は具体的数値を非公開とし、AIが社会に浸透する中で全体像は不明のまま。
【8】⚛️ トランプ政権、原子力発電の規制緩和 AI電力需要に備え [5/24 日本経済新聞]
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トランプ米大統領は23日、AI向けデータセンターの電力需要急増に対応するため、原子力発電関連の4つの大統領令に署名した。原発新設の審査期間を最長18カ月に短縮し、核燃料の内製化を促進する。現在99%を輸入に依存するウランの国内生産強化も図る。グーグルやアマゾンなど大手IT企業も原子力投資を拡大中で、特に小型モジュール炉(SMR)が注目される。関連企業株は急騰し、オクロ株31%高、ニュースケール株24%高を記録した。
【9】💨 トランプ米政権、NY州の風力発電施設の建設中止命令を撤回 [5/20 Reuters]
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トランプ米政権は、ノルウェー企業エクイノールがNY州沖で建設中の大規模風力発電施設「エンパイア・ウィンド」の建設中止命令を撤回した。4月に環境分析不足を理由に中止を命じたが、週5000万ドルの継続コストと数千人の雇用への配慮から方針転換。投資額50億ドル、進捗率30%の同プロジェクトは年間50万世帯への電力供給が可能で、AI・データセンター需要増加に対応する重要インフラとして位置づけられている。
【10】📰 気候問題を無視できなくする方法 [5/20 TED Countdown]
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Reuters InstituteのジャーナリストがOxford Climate Journalism Networkでの経験を基に、気候変動報道を「無視できなくする」方法を提案。IPCCレポートは恐怖や複雑さで敬遠されがちだが、頻繁に気候ニュースを読む人ほど正しく理解している。解決策として「Find Your Mango」(各国の身近な気候影響を見つける)、既存報道への気候要素の統合、災害前の準備的報道を推奨。目標は読者が目を逸らせない報道の実現。
*イベント・セミナー情報
📢 【5/28 開催】メディアが希望" 今こそ求められるメディアとは?【気候変動メディアシンポジウム2025】を開催! [5/13 Media is Hope]
一般社団法人Media is Hopeは5月28日、「気候変動メディアシンポジウム2025」を東京で開催する。国連、メディア、企業、研究者など多様な関係者が参加し、気候変動報道の課題と可能性を議論する。日本では脱炭素の認知率が9割超える一方、行動率は30%前後に留まり「サステナ疲れ」も広がっている。シンポジウムでは国連グローバル原則の活用、先進企業の期待、継続的な報道の仕組みづくりなど、オーディエンスに希望を持たせる発信方法を模索し、ステークホルダー間の連携強化を目指す。
*昨年1月31日に開催された気候変動メディアシンポジウム2024の様子はこちらのnoteで書かせていただきました。いよいよ今週開催、私も参加予定です🙂
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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