中国のCO2排出量が初の減少転換 - エネルギー安全保障の新常識と日本への示唆

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで800名以上、Linkedinニュースレターでは1,100名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。
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🇯🇵Climate Curation vol. 158 音声概要 [6:34 min.]
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🇺🇲Audio Summary of Climate Curation vol. 158 in English [12:57 min.]
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 152」の概要
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日本のサステナビリティにおける対照的な状況が浮き彫りになっています。SushiTech Tokyoでは657の国際的スタートアップによる革新的な取り組みが展示される一方で、日産自動車はトランプの関税政策による財政圧力を背景に従業員の15%削減を発表しました。日産とトヨタはともにEVバッテリー工場計画を中止しており、中国の競合企業に対する日本の競争力は弱まっています。日本の気候政策については、若手専門家たちが政府の掲げる「2035年までに60%の排出削減」という目標に対して、より野心的な取り組みを求めて批判を強めています。また、ENEOSなどのエネルギー企業は水素開発への投資を縮小する一方でLNG投資を拡大しており、日本は炭素価格制度を導入しつつも、トランプ政権のアラスカLNGプロジェクト要求に対して渋々ながらも検討を進めている状況です。
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 3.7 などの生成AIツールを使用しています🙂
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🌍 世界の新車販売の4台に1台以上が電気自動車に―EV販売が引き続き拡大 [5/14 IEA]

In 2024, 1 in 5 cars sold worldwide was electric. In 2025, it's set to be more than 1 in 4.
Total electric car sales are on track to exceed 20 million this year despite economic uncertainties → iea.li/4mfHty3
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IEAの最新レポート「Global EV Outlook 2025」によると、2025年の電気自動車の世界販売台数は2,000万台を超え、全世界の自動車販売の4分の1以上を占める見込みです。2024年には販売台数が1700万台を超え、市場シェアが初めて20%を超えました。中国が市場をリードし、2024年の自動車販売の約半数を電気自動車が占めています。価格面でも競争力が高まり、2030年までに電気自動車の市場シェアは40%を超えると予測されています。

Image Credit: IEA
【2】🔋 中国CATL、「EV電池交換所」1万拠点に 所要2分でガソリン給油並み [5/15 日本経済新聞]
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中国の電池大手CATLは、電気自動車(EV)用の電池交換所を1万カ所に拡大する計画を進めている。この交換システムでは、わずか2分程度で満充電バッテリーに交換でき、通常の充電に比べて大幅に時間を短縮できる。中国石油大手のシノペックと提携し、年内に500カ所、長期的には1万カ所の設置を目指す。「チョコレート電池」と呼ばれる交換式バッテリーは2サイズ展開で、月額制や使用量に応じた料金体系を提供。CATLは急速充電技術も同時に強化し、総合的な電池ソリューション企業を目指している。
*【中国車がEVの次に狙う「ハイブリッド攻略」】[5/17 Pivot]
【3】⚡ 習近平が火をつけた中国の電力革命 / How Xi sparked China’s electricity revolution [5/12 Financial Times]

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中国は習近平主席の指導の下、エネルギー安全保障の脆弱性を克服するため「エレクトロステート(電力国家)」への転換を進めている。2014年の「エネルギー革命」命令以降、中国は電気自動車、高速鉄道、クリーンテック製造に巨額投資し、電化率は欧米の22%を上回る30%に達した。2028年までに低炭素エネルギーが電力の50%を占める見込みで、自国リソースによるエネルギー自給と将来技術に必要な資源の市場支配力を高めている。この戦略は対米貿易摩擦の緩衝材となり、世界的なクリーンエネルギー供給網での中国の影響力拡大にも寄与している。
【4】📊 分析:クリーンエネルギーが中国のCO2排出量を初めて減少に転じさせる [Carbon Brief]

Read here: buff.ly/6eAcjRU
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Carbon Briefの分析によると、中国のCO2排出量が初めてクリーンエネルギー成長により減少しました。2025年第1四半期は前年同期比1.6%減少し、直近12ヶ月では1%の減少を記録。過去の減少は経済鈍化によるものでしたが、今回は風力、太陽光、原子力の新規容量が電力需要急増にもかかわらず石炭火力発電を削減するのに十分でした。セメント、鉄鋼、石油製品の部門も排出量ピークを迎えた可能性がありますが、排出量は最近のピークから1%しか下回っておらず、米国の関税政策や次期五カ年計画の目標設定によって長期的な軌道が決まると予測されています。

Image credit: CarbonBrief
【5】🔄 再生可能エネルギー:エネルギー安全保障の必須要素として再定義 [5/14 Cipher News]

@AncaGurzu explores this trend: ciphernews.com/articles/renew…
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再生可能エネルギーは新たな価値提案を展開している。気候変動対策の減速と不安定な地政学情勢の中で、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源は、地球を救う排出削減技術から、エネルギー安全保障と安心のための必須アイテムへと位置づけを変えている。特に欧州では、2022年のロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機により、エネルギー独立と安定した国産電源への欲求が高まった。これに産業競争力の課題、極右政党の台頭、そして最近のトランプ大統領の政策への懸念が加わり、再生可能エネルギー業界のリーダーたちは激動の時代に事業の関連性を維持しようとしている。

Image credit: Flickr Global Renewables Alliance GRA
【6】🌊 風車50基で復興へ "洋上風力"誘致 輪島市決断の舞台裏 [5/10 テレビ朝日]
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大地震と豪雨で甚大な被害を受けた石川県輪島市が、2036年までに東京タワー級の浮体式洋上風車約50基を沖合25キロに設置する計画を決定した。災害により海底は泥で覆われ、磯焼けも進行し漁獲量が激減。人口も震災前から約3割減少する中、建設協同組合が主導し復興のシンボルとして洋上風力発電の誘致を推進。既に成功例のある長崎県五島市を視察し、風車が漁礁となって魚を集める効果も確認。漁業関係者からは漁場縮小への懸念もあるが、雇用創出や経済効果に期待する声が広がっている。
【7】🌬️ 事業見直しの衝撃 逆風の洋上風力発電 [5/14 NHK 時論公論 *見逃し配信 NHKプラス 配信期限 :5/21(水) 午後11:40 まで]
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再生可能エネルギーの切り札と期待される洋上風力発電事業が危機に直面している。三菱商事と中部電力グループが手掛ける千葉県銚子市沖など3海域のプロジェクトが着工直前に見直しとなり、合計700億円超の損失を計上。世界的なインフレ、部材価格高騰、円安が主因とされる。政府は2040年に風力発電を全電源の最大8%まで拡大する方針で、事業者つなぎ止めのため公募ルール見直しを決定。物価上昇分の売電価格への上乗せや個別契約による高値売電を認める方針だが、地元漁業者や新設メンテナンス会社など協力者の不安は募っている。
【8】🌡️ 気候変動で妊婦に「危険な日」が2倍以上に 胎盤の早期剝離にも影響 [5/14 朝日新聞]

気候変動で、妊娠中の母親や赤ちゃんにとって危険な暑さとなる日が世界の90%の国で倍増している――。そんな推計を米研究機関「クライメート・セントラル」が14日、明らかにした。 気候変動で妊婦に「危険な日」が2倍以上に 胎盤の早期剝離にも影響:朝日新聞 気候変動で、妊娠中の母親や赤ちゃんにとって危険な暑さとなる日が世界の90%の国で倍増している――。そんな推計を米研究機 www.asahi.com
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米研究機関「クライメート・セントラル」の調査によると、気候変動により世界90%の国で妊婦と胎児にとって危険な高温日が倍増している。日本でも年平均15日増加し、特に沖縄県では36日増の42日に達した。東京は28日増の43日と最多となった。極端な暑さは早産や妊産婦の健康合併症、胎盤早期剝離のリスクを高める。東京科学大学の藤原教授によれば、妊娠中は体内で熱が発生しやすく、放熱が困難になるため熱中症リスクが高まる。対策としてエアコン使用や暑い時間帯の外出を控えること、こまめな水分補給が重要とされている。
【9】🌿 「シーベジタブル」希少な海藻で急拡大する秘密!"絶滅危機"の海藻を復活![5/15 テレビ東京]
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海藻の陸上・海面養殖技術で革新を起こす「シーベジタブル」が注目を集めている。共同代表の蜂谷潤氏と友廣裕一氏が2016年に創業し、絶滅危機にあるスジアオノリなど30種類以上の海藻を世界初の地下海水活用技術で栽培。セブンイレブンやミシュラン店でも採用される高品質な海藻を全国30拠点以上で生産している。日本の海域には約1,500種の海藻が自生するが、食用は10種未満。同社はテストキッチンを設置し新たな食文化創造にも取り組む。海藻養殖は環境負荷が少なく、消費が増えるほど藻場が回復し海の生態系と地域経済の再生にも貢献する。
イベント・セミナー情報
【10】📢 【5/28 開催】メディアが希望" 今こそ求められるメディアとは?【気候変動メディアシンポジウム2025】を開催! [5/13 Media is Hope]

NHK・民放テレビ局のメディア関係者や国連関係者、企業・経営者、日本最大級の気候変動ネットワーク、気候科学者も登壇。「気候変動報道を継続する仕組み」に向けて議論します🎙️
■ 5/28(水) 15:00~18:00@日比谷
■登壇者:
一般社団法人Media is Hopeは5月28日、「気候変動メディアシンポジウム2025」を東京で開催する。国連、メディア、企業、研究者など多様な関係者が参加し、気候変動報道の課題と可能性を議論する。日本では脱炭素の認知率が9割超える一方、行動率は30%前後に留まり「サステナ疲れ」も広がっている。シンポジウムでは国連グローバル原則の活用、先進企業の期待、継続的な報道の仕組みづくりなど、オーディエンスに希望を持たせる発信方法を模索し、ステークホルダー間の連携強化を目指す。
*昨年1月31日に開催された気候変動メディアシンポジウム2024の様子はこちらのnoteで書かせていただきました。今年も参加予定です🙂
【イベント登壇のお知らせ】
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6 月 11 日(水)に開催予定の『FDSF PEST Conference 2025~政治・経済・社会・テクノロジーの国際情勢を踏まえたサステナブルファイナンスの現状と展望~』(主催:一般社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブ / 協力:Archetype Ventures)
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「パネルディスカッション③逆風の気候テックと求められる気候リテラシー、産業競争戦略」と題したセッションのモデレーターをさせていただきます。先週と今週のニュースレターでも触れたように、気候テックから「レジリエンス」「防衛テック」なども含めた産業競争戦略、そして気候リテラシーなどについて、登壇者の皆様と議論を深めたいと思います。よろしければぜひご参加ください🙂
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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