逆風に立ち向かう日本の気候技術、金融は米国外シフトの潮流 :FDSF Conference 2025より

先日参加したFDSF Conferenceで感じた日本発の気候テックスタートアップの可能性、そしてサステナブルファイナンス・ESGなど、金融関連の視点の記事もピックアップしてみました。
市川裕康 2025.06.14
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation #156」より

*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 4.0 などの生成AIツールを使用しています🙂

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

今週は6/11にFDSF(Future Design Initiative by Science and Finance)PEST Conference 2025というイベント参加し、「逆風の気候テックと求められる気候リテラシー、産業競争戦略」と題したパネルディスカッションでモデレーターを務める機会をいただきました。このセッションでは、ZettaJoule株式会社の下藤充生CEOとアルバトロス・テクノロジー株式会社の長壁一寿COO、ビジネス・インサイダー・ジャパン三ツ村崇志副編集長からとても刺激的な取り組み事例を伺うことができました。気候変動対策として先端的な技術イノベーションの力で取り組む2社の具体的なお話を受けて、今回のニュースレターではこの2社の取り組みが詳しく紹介されている記事もピックアップしてみました。

また、FDSF Conferenceには資産運用会社やベンチャーキャピタルなどの金融プロフェッショナルの方も多く参加されていたのですが、「サステナブル投資」「ESG」などのファイナンスセクターによる取り組みの現在地を学ぶきっかけになりました。気候変動対策には科学、ビジネス、政策、市民セクター、政治、テクノロジー、メディアなど様々な視点からの切り口がありますが、今回いくつかピックアップした金融関連の記事を通じ、改めて「金融」の視点の大切さを実感しています。

FDSF(Future Design Initiative by Science and Finance)PEST Conference 2025 / Photo Credit : FDSFのXポスト

FDSF(Future Design Initiative by Science and Finance)PEST Conference 2025 / Photo Credit : FDSFのXポスト

  • 日本の原子力スタートアップZettaJouleは、25年間の運転実績を武器に高温ガス炉(HTGR)技術の世界展開を目指す。従来の軽水炉とは異なり、HTGRは950℃で運転し、発電だけでなく水素製造や工業プロセス熱への応用も可能。日本の年間30兆円に上る化石燃料輸入依存の解決とCO₂削減目標の達成に貢献。

  • アルバトロス・テクノロジーが開発する垂直軸型浮体式洋上風車「FAWT」が注目。従来の水平軸型とは異なり、発電機を低位置に配置することで重心を下げ、浮体の小型化とコスト削減を実現。大型作業船不要で設置コストも大幅削減、複数の小型発電機により国内調達も可能。日本の深海環境に適した技術で2030年商用化予定。

  • 数十年続いた原子力融資禁止を解除し、発展途上国の急増する電力需要に対応するため原子力エネルギー開発を支援すると発表。2035年までに電力需要倍増が予想される中、既存原子炉の延命や小型モジュラー原子炉開発を支援。1959年以来の大転換で、気候目標達成と中露との競争強化が狙い。

  • ロベコの第5回世界気候投資調査(300投資家、運用資産31兆ドル対象)によると、投資家の56%がトランプ大統領の政策はネットゼロ移行の一時的な妨げと認識。欧州・アジア太平洋の投資家は米国外での気候投資を積極検討しており、39%の投資家が気候ソリューション投資の拡大を計画。

  • 2026〜2027年に向けての揺り戻しに注目🚀

image credit : ロベコ世界気候投資調査2025年版

image credit : ロベコ世界気候投資調査2025年版

  • トランプ政権の脱炭素政策縮小により環境スタートアップが厳しい状況に直面。2025年1-3月期の環境系調達額は前年同期比48%減の57億ドルで、全体に占める比率は5%まで低下。水素や炭素回収分野は政府支援削減で特に影響大。米環境系VCのCEOは政策明確化まで資金調達延期を推奨。

  • 4,000以上の企業が気候変動対策を約束したが成果は乏しく、BP、コカ・コーラ、HSBCなどが約束を撤回。専門家は、この後退により企業の自主的行動では気候変動を防げないという現実が明らかになると指摘。真に重要なのは政府規制の支持だが、多くの企業は気候対策を謳いながら関連規制に反対。

  • JPMorgan分析によると、サステナビリティを重視する世界の大手資産オーナー60機関(17.9兆ドル)が外部委託する7.3兆ドル市場で、欧州系運用会社に追い風。トランプ政権下で米国系大手がグリーン金融同盟から脱退する中、ShareAction調査では欧州系がサステナビリティ資格で圧倒的優位を示す。

  • 年金基金などの機関投資家は、ESGを包括概念として扱わず、環境・社会・ガバナンスを独立した要素として捉える傾向が強まっている。多くの投資家はESGをマーケティング用語で単純化し過ぎと感じ、「サステナブル投資」「責任投資」を好む。専門家はESGを本質的に「リスク管理ツール」と位置づけ。

  • 全国調査では8割超が気候変動の悪影響を実感し、7割強が「エネルギー・環境・気候変動」に関心を示した。特に食料危機層(43.8%)は気候変動の影響をより強く受けており、対策を進める政治家への投票意欲も高い。有権者の3人に1人が気候変動対応の考え方が近い候補者への投票を表明し、選挙における「隠れ争点」として注目。

  • 日本財団が17-19歳の1,000人を対象に実施した環境意識調査で、気候変動が現在の生活に影響していると感じる若者が半数以上(52.2%)に上ることが判明。農作物価格高騰や日用品値上がりを通じて実感しており、将来への不安を抱く人は85.9%に達した。環境問題の学習経験が多いほど「わからない」回答が減少する傾向も明らか。

  • 日本財団18歳意識調査結果 第69回テーマ「環境」[6/6 日本財団]

image credit: 日本財団18歳意識調査結果 第69回テーマ「環境」

image credit: 日本財団18歳意識調査結果 第69回テーマ「環境」

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【イベントご案内】

【1】【6月20日開催】GX脱炭素経営セミナー@STATION Ai / 製造業集積地・愛知県で競争力を左右する脱炭素対応!政府最新規制からグローバル動向まで、カーボンニュートラル実現に向けた企業経営のポイントを解説。東北電力・サーラコーポレーション等の実践企業とスタートアップが登壇し、今後のGX経営戦略を明確化します。よろしければぜひご参加ください🙂

📅6/20(金)18:30-20:30 / 📍STATION Ai(名古屋)/ 🎟️参加無料・オンライン同時開催

🎟️詳細&お申し込み:https://decarbonizing-management.peatix.com/

【2】JAXAの衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)が温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の打上げ応援イベントを6月28日13:00-15:00に東京・日本橋で開催。桝太一氏司会で気候変動科学の専門家による講演、トークセッション、打上げ映像視聴を実施。現地参加80名・YouTubeライブ配信も。専門知識不要で学生・子供も参加可。JAXAロケット専門家の解説やプロジェクトマネージャーからの限定メッセージも。参加無料。*ニュースレター購読者の方からご案内いただきました。ご興味ある方はぜひ🛰️🧑🚀

🎟️詳細&お申し込み:https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/news/2025/06/06/11044/

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  • ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋

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