「対岸」でなくなった山火事と気候変動対策 / 【新刊書】これからの地球のつくり方

日本と韓国で深刻化する山火事と気候変動の関連性、ソーラーシェアリングなどの再エネ普及の取り組み、各国の政策動向関連の記事をピックアップ。
市川裕康 2025.03.29
誰でも

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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 146」の概要

  • 日本は西部各県での大規模山火事や6月の気温上昇予測など気候変動の課題に直面しています。産業界も脱炭素化に取り組んでおり、JERAは2026年から季節的な石炭火力発電所の停止を計画し、日本製鉄は製鋼過程で水素を活用して排出削減を進めています。農業と太陽光発電を組み合わせた「ソーラーシェアリング」技術による革新も続いており、2025年の大阪万博ではさまざまな持続可能技術が展示される予定です。政府は専門プログラムを通じて気候テック関連のスタートアップ支援を継続しています。

*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 3.7 などの生成AIツールを使用しています🙂

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

  • 気候変動により日本・韓国の平均気温が2度上昇し、山火事が急速に拡大しやすい環境となった

  • 愛媛県今治市の山火事では約6千人に避難指示が出され、400ヘクタール以上が焼失

  • 韓国南東部の山火事では20人以上が死亡し、被害が拡大している

  • 世界気象機関によると2024年の気温上昇は産業革命前比1.55度に達し、パリ協定の目標を単年で初めて超過

  • 第2次トランプ政権誕生後、世界で脱炭素に後ろ向きな動きが出ており、気候変動対応への積極的関与が求められる

【2】🌡️ 日本の気候変動2025 [3/26 気象庁]

日本の気候変動 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—

日本の気候変動 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—

  • 文部科学省と気象庁は、最新の観測結果や科学的知見を取り入れた『日本の気候変動2025』を公表。この報告書によると、日本の年平均気温は1898~2024年の間に100年当たり1.40℃上昇しているとのこと。特に注目すべき点として、世界平均気温が2℃上昇した場合、工業化以前に100年に一回だった極端な大雨は約2.8回に、極端な高温は約67回に増加すると予測されているそうです。YouTube動画による解説などもあるので目を通しておきたい内容と感じます。

【3】📊 2025年の気候変動をめぐる10のハイライト [3/28 Climate Integrate]

  • 「2025年の気候変動をめぐる10のハイライト」では、2025年の1年を通じた気候変動対策に関する重要な動向が紹介されている。今年はトランプ米政権の気候政策後退や、日本の新たな温室効果ガス削減目標(2035年60%削減、2040年73%削減)などが注目されるとしています。また、パリ協定に基づく各国のNDC提出、洋上風力発電関連法案、GX推進法改正案の審議、建築物省エネ法施行、サステナビリティ情報開示基準、G7サミット、国内選挙、GX経済移行債発行、COP30など多くの重要イベントがまとめられています。

Climate Integrate

Climate Integrate

  • ソーラーシェアリングは農地で農業と太陽光発電を両立させる仕組みで、全国で急速に拡大している

  • 農地一時転用の累計は2013年度の103件から2022年度には5351件に増加、面積も16haから1209haに拡大

  • 農作物にとって太陽光パネルは適度な遮光となり、生育にプラスの効果がある場合もある

  • 小田原かなごてファームは耕作放棄地を活用し、コメの栽培や地元特産品の6次産業化にも取り組む

  • 普及に向けては住民理解や法整備など課題があり、自然エネルギー財団は国の推進策の遅れを指摘

🌍 【地球クライシス 第12弾 気候危機 転換への道しるべ 温暖化を止められるのか!?最新テクノロジーSP】ダイジェスト [3/24 BS朝日]

📺先日放映された番組でも営農型太陽光発電に関して詳しく紹介されています。

【5】⏱️ 数日で崩壊した長年の気候変動対策:その時系列 / Years of Climate Action Demolished in Days: A Timeline [3/26 Bloomberg]

  • トランプ政権は就任から52日間で気候変動対策を大規模に解体している

  • 環境保護庁から国防総省まで気候関連のあらゆる機関が影響を受けている

  • NASA科学者や国連外交官の国際協力が禁止され、州・地方の環境政策にも干渉している

  • トランプ政権は政策撤廃がエネルギーコスト削減や経済成長につながると主張している

  • 実際には再生可能エネルギーのコストは低下し、気候変動による自然災害で保険危機も発生している

  • 21人の若者による「ジュリアナ対米国」気候訴訟は最高裁の上告審理拒否で10年の闘争に終止符

  • 訴訟は政府の化石燃料推進政策が憲法上の権利を侵害していると主張した

  • 第9巡回控訴裁判所は気候変動対策は裁判所ではなく政治の場で解決すべきと判断

  • この訴訟モデルは他の気候訴訟に採用され、ハワイ州やモンタナ州での勝訴につながった

  • 訴訟の名前の由来となったケルシー・ジュリアナ氏は現在29歳の教師として活動中

*「ジュリアナ vs 米国」気候訴訟はNetflixドキュメンタリー『Youth v Gov: 私たちの気候変動訴訟(2020年)』でも紹介されています。

  • 気候団体「Just Stop Oil」は新規石油・ガスライセンス停止が政府政策となったとして4月末で直接行動を終了

  • 同団体は文化財や美術品を標的にした過激な抗議活動で悪名を馳せた

  • 設立から3年間で3,300回の逮捕と180回の投獄があったと報告

  • 労働党政府は既存ライセンスは維持しつつ新規油田探査ライセンスを発行しない政策を協議中

  • 4月に議会広場で最後の抗議を行い、新たな戦略を策定中と発表

  • 「50 STATES FIXES」は、環境問題の解決策が全米各地で実際に機能していることを紹介するプロジェクト。アリゾナではフェニックス近郊で自動車に依存しない持続可能なコミュニティ開発が進み、コロラドでは野生動物の移動を支援する橋やトンネルが動物と人間の命を守っている。ハワイでは地域医療センターで患者やボランティアが荒れた土地を復元し健康改善にもつながった取り組み、アイダホでは地熱を利用したクリーンで再生可能な暖房システムを約500の建物に提供している事例、マサチューセッツでは食品廃棄物対策としてのコンポストコンサルタント制度を紹介している。年間を通じて「解決策」に焦点をあてた連載企画とのことです。

【9】👨🔬👩🔬 会議から消えた「脱炭素」の文字、反・気候変動に萎縮する研究者 [3/27 MIT テクノロジー・レビュー]

  • 米エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)が開催した技術会議では、かつて中心的議題だった気候変動や脱炭素への言及が姿を消し、代わりにエネルギー増産が強調された。ライト・エネルギー長官は気候変動を「現代的世界構築の副作用」と位置づけ、気候政策を非合理的と批判。原子力発電が優先される一方、再生可能エネルギーは不安定性のみが指摘された。トランプ政権下での大規模レイオフや予算凍結の影響で研究者の間に不安が広がり、一部の研究者はジャーナリストとの会話すら拒否する状況となっている。

image credit : Bloomberg Green

image credit : Bloomberg Green

【10】📚【新刊書】これからの地球のつくり方: データで導く「7つの視点」 [3/19発売 早川書房]

これからの地球のつくり方 データで導く「7つの視点」/ ハナ リッチー (著), 関 美和 (翻訳) [早川書房]

これからの地球のつくり方 データで導く「7つの視点」/ ハナ リッチー (著), 関 美和 (翻訳) [早川書房]

  • 英国の気鋭データ科学者ハンナ・リッチー氏は新著「これからの地球のつくり方(Not the End of the World)」で、人類が持続可能な未来を築ける可能性を説く。かつては環境問題に絶望していた彼女だが、多くの指標が改善していることを示すデータに触れ、楽観的な見方に変わった。気温上昇は以前の予測より改善し、再生可能エネルギーコストも大幅に低下している。「1.5度目標」達成は難しいと認めつつも、それを超えても「世界の終わり」ではなく挑戦を続けるべきだと主張。極端な終末論的表現よりも、多様なメッセージの共存が重要だと訴える。

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  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋🌸

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