気候テック冬の時代?トランプ関税の衝撃と若者たちの反撃

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで790名以上、Linkedinニュースレターでは1,090名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。
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先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol.148」の概要
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国際的な圧力の中で日本の経済情勢が変化しています。トランプ政権はLNG取引と連動した関税削減を示唆しており、三菱はアラスカのパイプラインプロジェクトに注目しています。一方で、自動車関税は福岡県苅田のような日産に依存する地域社会を脅かしています。フォックスコンが日本のEV市場に参入し、近いうちに提携が予想されています。PM2.5汚染が日本に年間数十億円の損失をもたらすなど、環境問題は依然として重要課題です。また、気候変動対策の不作為により企業幹部が責任を問われる可能性もあります。特筆すべきは、ほとんどの日本の銀行がNet-Zero Banking Allianceから撤退したことであり、これは米国の政策に対応して優先事項が変化していることを反映しています。
*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 3.7 などの生成AIツールを使用しています🙂
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🌍 貿易戦争がグリーン移行に与える影響:現状分析 [4/5 Bloomberg Green]

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トランプ大統領が全ての国に最低10%の一律関税を発表し、中国には34%、ベトナムには46%など高率の関税を課すことになった。BloombergNEFのアナリストによると、この関税により中国は低・中所得国へのクリーンテック輸出を増加させ、太陽光パネル市場は大きな影響を受ける。インドは相対的に恩恵を得る可能性があるものの、最終的にはエネルギー移行が遅れる懸念がある。また、CDCの気候健康プログラムが解体され、気候変動関連健康リスクへの地域支援が停止した。
【2】❄️ トランプ関税、気候テックに大打撃 「冬の時代」到来か [4/7 MIT テクノロジー・レビュー]
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トランプ大統領が発表した広範な関税政策により、米国のクリーンテック産業は深刻な打撃を受ける可能性がある。中国製品への54%の関税はリチウムイオン電池などの部品コストを押し上げ、EV産業などに影響する。政策の不確実性により、すでに約80億ドル相当のクリーンエネルギープロジェクトが中止・延期・縮小されており、ベンチャー投資も冷え込んでいる。専門家は米国のクリーンエネルギー分野での国際競争力低下と、温室効果ガス削減の遅れを懸念している。
【3】🇺🇸 アメリカがクリーンテクノロジーと気候分野におけるグローバルリーダーシップを危険にさらす5つの方法 [3/31 Cipher News]

Read more about all five ways here: nt-z.ro/3FPTcmg Five ways America risks global leadership on cleantech and climate - Cipher News The Trump administration’s war on clean energy, from solar p nt-z.ro
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トランプ政権のクリーンエネルギーに対する政策が、アメリカのクリーンテクノロジーと気候変動対策における世界的リーダーシップを脅かしている。関税政策による価格上昇と競争力低下、インフレ削減法(IRA)などの連邦投資の削減、新規製造プロジェクトのキャンセルリスク、NOAAなどにおける科学研究の削減、そして米国のパリ協定からの撤退によるグローバルな気候協力の阻害という5つの面で影響が出始めている。中国がEV市場などで既にリードする中、米国の政策変更は国内産業と世界の気候対策に悪影響を及ぼす恐れがある。
【4】🌎 関税、貿易戦争、そして気候テクノロジー #240 [CTVC by Sightline Climate]

🔋 US tariffs on Chinese lithium-ion cells +64.5%
☀️ Tariffs 36-46% on SE Asia tariff imports
💽 Semiconductors: Exempt for now, but future ones possible.
Plus deals, jobs, events & full story: ctvc.co/tariffs-trade-… 🌎 Tariffs, trade wars, and climate tech #240 The tariffs' toll, explained sector-by-sector www.ctvc.co
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トランプ大統領が発表した大規模な関税政策は、クリーンテック産業に深刻な影響を与えている。全輸入品に10%の基本関税、中国には実質54%の高率関税が課され(*その後145%に)、市場は混乱している。グリッドバッテリー、電気自動車、太陽光パネルなど、ほぼすべての脱炭素技術が輸入部品に依存しており、コスト急上昇に直面。特に中国のレアアース輸出規制は風力発電やEVに打撃を与え、プロジェクトの遅延や中止を招いている。短期的には国内製造へのシフトよりも、開発コスト増加や国際競争力低下が懸念され、気候テック産業の成長と米国のリーダーシップが脅かされている。
【5】⚡ 報告書:2024年の世界の電力の40%をクリーンエネルギーが供給 - シンクタンク:太陽光が過去20年間で最も成長の速いエネルギー源も、水力発電には及ばず [4/8 The Guardian]
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2024年、クリーンエネルギーは世界の電力需要の40%以上を担い、1940年代以来初めてこの割合に達した。エネルギーシンクタンクEmberの報告によると、この成果は太陽光発電の急成長によるもので、過去3年で設備容量が倍増した。太陽光発電は20年連続で世界で最も急成長しているエネルギー源となっている。水力発電は依然として14%と大きな割合を占め、風力は8%、太陽光は7%だった。クリーンエネルギーの成長は電力需要の増加を上回っており、化石燃料の使用減少につながると予測されている。一方、2024年の電力部門からの排出量は、熱波による需要増加により過去最高を記録した。
【6】🏦 ネットゼロ銀行同盟は唯一の日本メンバーを維持できるか? - 過去1ヶ月で日本メンバー6行中5行が脱退 [Financial Times]

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過去1ヶ月間で、みずほフィナンシャルグループを含む6社中5社の日本の銀行がNet-Zero Banking Alliance(NZBA)から脱退し、三井住友トラストグループ(SMTG)のみが残っている。脱退の主な理由は米国ビジネス拡大の優先事項とトランプ政権下での化石燃料開発への注力だが、ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー安全保障懸念も背景にある。資源の乏しい日本にとって、化石燃料の安定供給確保は重要課題だ。日本の銀行はNZBAに加盟中でも世界の主要な化石燃料投資家だった。NZBAはパリ協定の1.5℃目標への整合性要件削除など、規則緩和を検討している。
【7】⚖️ 気候訴訟、東アジアの若者に拡大 韓国では初判断「社会変えられる」 [4/10 朝日新聞]
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東アジア各国で気候危機に対する若者主導の訴訟が拡大している。韓国では2020年、10代の若者19人が温室効果ガス削減目標の不十分さを訴え、2024年に憲法裁判所が違憲判断を下した。これを機に台湾や日本でも同様の訴訟が進行中で、若者たちは法的手段を通じて政府や企業に気候変動対策の強化を求めている。この動きは単なる訴訟ではなく、社会変革のムーブメントとして位置づけられている。
【関連記事・イベント詳細(動画アーカイブ)】
*映画「パラサイト」災害が現実に 韓国気候訴訟、初の違憲判断の背景 [3/16 毎日新聞]
*2025年3月8日(土) 気候訴訟で社会を変える—動き出した東アジアの若者たち—[3/28 気候ネットワーク]
【8】📊 電通、第16回「カーボンニュートラルに関する生活者調査」を実施 [4/8 電通]
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電通の「カーボンニュートラルに関する生活者調査」によると、脱炭素社会実現に向け普段から取り組む人は全体の22.7%で、15~19歳が36.2%と最も高く、前回から8.6ポイント増加し過去最高となった。一方、取り組みの「必要性」を感じる人は68.9%と前回から7.1ポイント減少し過去最低を記録。特に30~40代で必要性意識の低下が顕著だった。COP29の開催認知率は全体で45.4%、70代で70.4%と最も高かった。この世代間ギャップについて、調査担当者は学校教育の影響と生活優先の現実的判断の差を指摘し、無理なく楽しみながら参加できる仕組みづくりの重要性を強調している。

Image Credit: 電通
【9】🤖 AIが気候変動対策に貢献する可能性 - 脱炭素化が最も困難な産業の変革をAIが支援 [4/10 The Economist]

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AIのエネルギー消費は増加しているものの、世界の電力消費の1.5%程度に留まり、その多くはAI以外の用途によるものです。AIは複雑なパターン認識やデータ分析能力により、脱炭素化が難しいとされる鉄鋼、輸送、エネルギー生産などの産業で効率化や排出削減に貢献しています。例えば、海運業では待機時間を20%削減、鉄鋼業では排出量を3.3%削減、電力網ではキャパシティを20-30%増加させるなどの成果を上げています。AIのエネルギー消費量の計算は複雑で、効率は向上していますが、推論モデルなど新たな用途も生まれています。政策立案者は透明性向上、データセンター運用の見直し、環境への約束の遵守を通じて、AIの気候変動対策への貢献を最大化すべきです。
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日本環境ジャーナリストの会とMedia is Hopeの共催による緊急シンポジウム『危機に立つ気候変動対策』が2025年4月19日に開催。気温上昇が1.5℃を超え、トランプ政権の科学軽視・化石重視の風潮がある中、世界の89%の人々は気候変動対策強化を望んでいるというデータに基づく対応を議論。メディア関係者、科学者、若者が登壇し、アースデイ直前の重要な議論の場となる。現地参加は90名、オンラインは300名まで無料参加可能。申込締切は4月18日。
【10-2】📅 【イベント】ウェビナー「2025年の気候変動動向と政府予算の分析」 [Climate Integrate]
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Climate Integrateは、2025年4月21日に「2025年の気候変動動向と政府予算の分析」ウェビナーを開催します。このオンラインイベントでは、2025年の気候変動情勢と「日本の気候・エネルギー予算2025」レポートを解説します。前半は気候変動の動向、後半は政府の気候・エネルギー分野への歳出とGX投資の内訳分析結果を紹介。平田仁子代表理事ほか専門家が登壇し、参加は無料(要事前登録)です。

Image Credit: Climate Integrate
【編集後記】今週はなんといってもトランプ関税がもたらす影響の分析記事に注目しました。トランプ政権下で米国が日本や韓国などのアジア諸国に対しアラスカの液化天然ガス(LNG)プロジェクトの買収と投資を強く求めていることと、大手金融機関がNet-Zero Banking Alliance(NZBA)から脱退していることがつながっているという解説を目にし、気候変動対策にネガティブな影響が様々なところに連鎖していることを実感しました。
原油の先物価格が4年ぶりに1バレル=60ドルを下回ったことも、短期的に産業界や家計にはプラスかもしれないですが、長期で見れば再生可能エネルギーへの投資圧力の低下、石炭火力依存の長期化に繋がりそうです。
気候変動関連ではないですが今週目にした注目トピックとしてこちらのTEDトークがあります。
2016年のブレグジット(英国のEU離脱)や米国大統領選挙におけるFacebookやデータ会社であるケンブリッジ・アナリティカの役割についての調査報道やTEDトークで注目を浴びたキャロル・キャドウォラダー氏によるものです。今週開催されたTEDトークでの6年ぶりのスピーチでは、「『デジタル クーデター』とはこのような形で現れる」とのタイトルで、預言者的で洞察に満ちた内容から多くのことを考えさせられました。政治はテクノロジーになったと彼女は語ります。日本でも昨年の都知事選、兵庫県知事選を経て、YouTubeやXを始めとするSNSの存在感が高まりつつあります。気候変動政策も政治や民意と切っても切り離せないトピックであることを考えると、行き過ぎたテクノロジーがもたらすネガティブな影響にも意識的になっておく必要があるのでは、と感じます。ご興味ある方はこちらもどうぞ→【玉木雄一郎と分析する、SNS政治のリアル】[4/7 PIVOT]。以上、長文お付き合いいただきありがとうございました。よい週末を🙂
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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。
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*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋🌸
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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