LAの山火事と1.5度を超えた地球温暖化の現実

明けましておめでとうございます!気候変動やClimate Tech関連のニュースレター「Climate Curation」、今年も週次で配信してまいります。より読みやすい情報提供を目指し、今週から厳選した7本のニュースをお届けする新しい形式でスタートしています。
市川裕康 2025.01.11
誰でも

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで760名以上、Linkedinニュースレターでは1,070名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。

2025年初めての配信になります。どうぞ今年もよろしくお願いいたします!

【Climate Curation配信プラットフォーム】

*英語版は毎週火曜日配信です。併せてご覧ください📬

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【⭐📰👀2024年に気になったニュース・トピックスの振り返り】

年初にこのニュースをピックアップするのはとても胸が痛むのですが、米ロスアンゼルス近郊の大規模な山火事が甚大な被害をもたらしています。一刻も早い鎮火と復旧を願ってます。

山火事は自然現象だけではなく、人為的な気候変動による影響を強く受けているとして、特に欧米のメディアではそうした関連についても明確に伝えている記事が多い印象です。温暖化、降雨パターンの変化、乾燥化、およびサンタアナ風(山岳地帯から海岸へ吹き下ろす強風)などの複合的な要因が相互作用し、これまで以上に頻繁かつ激しい山火事を引き起こしていると言われています。なお、こうした状況は今後も継続する可能性が高く、緊急かつ持続的な気候対策が求められているとのことです。

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は10日、2024年の世界の平均気温が産業革命前に比べて1.6度高くなり、2年連続で史上最も暑い年だったと発表。また、米航空宇宙局(NASA)は10日、2024年の地球の平均気温が1880年の観測開始以降で最高になったと発表。2年連続で最高記録を更新し、1951〜80年の平均をセ氏1.28度上回ったほか、産業革命以前の1850〜1900年の平均より1.47度上昇、24年は半数以上の月で産業革命前に比べ1.5度以上、上昇した、と伝えています。

以下のグラフやビジュアルを目にするにつけ、改めて気候変動対策の重要性を感じさせられます。

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」

日本の2035年温室効果ガス削減目標は科学的根拠や具体的施策が不十分なまま、国民不在の政策決定プロセスで進められており、気候変動対策として実効性に疑問が残る状況である、と専門家が指摘しています。

国の気候変動対策を決める法案が昨年審議され、年末には議論の方向性を巡って注目を集めました。年末年始の休暇に入るタイミングで政府案が提示され、現在パブリックコメントを募っている段階です。ただ、報道でこうしたことが取り上げられることは極めて少なく、またそれぞれの政策案の素案を読み込むのも難易度が高いためか、あまり話題になってないようです。

環境NGOの気候ネットワークによる様々な切り口からの政府案の解説、課題の指摘などがされ、パブリックコメントを記入する際のヒント、資料、動画が提供されています。

政府案に「物申す」ことに対して(自分も含め)躊躇しがちな方もいらっしゃるかもしれません。気候変動の影響を目の当たりにする中での「自分ができること」として、まずは「知ってみる」こと、そして共感した際にはパブコメで「声を届ける」ということも試してみてはいかがでしょうか?

【5】気候テック関連のスタートアップに逆風が吹いている?専門性の高い投資家による質の向上?

気候変動対策の手段として欧米を中心に注目を集めているクライメートテック(気候テック)スタートアップのことが主要メディアであまり取り上げられる機会がないことも課題と感じます。

以下は同じに日に日本経済新聞に掲載されている気候テックの資金調達環境を伝える記事ですが、1つ目はCBインサイツのデータを踏まえ「逆風が吹いている」と指摘し、2つ目はSightline Climate のデータを参照し、「エネルギー・炭素除去系スタートアップへの資金調達は増え、銀行融資も増え、専門性の高い投資家による質の向上」と真逆の指摘がされています。「気候テック」と「気候変動テック」と表記のゆらぎがあるようにも窺えます😅。

日本が誇る優れた技術力を活かしたビジネスを通じた気候変動対策はこれからも期待がますます高まっているだけに、欧米の気候テック関連の市場動向は冷静に、客観的に見極めることが大切なのではないかと改めて感じます。

全42ページのレポート、「Climate Tech Investment Trends 2024 」[Jan. 2025 Sightline Climate]はこちらからダウンロードが可能です。気候テックの市場動向に興味のある方は必見の資料です。

「Climate Tech Investment Trends 2024 」[Jan. 2025 Sightline Climate]

「Climate Tech Investment Trends 2024 」[Jan. 2025 Sightline Climate]

上記レポートでも注目が集まっていると指摘されれているDAC(直接空気回収) / CDR(炭素除去)分野の最近の盛り上がりを示すニュースとして、気候テックスタートアップのHeirloomへの日本企業4社による投資に関して報じられています。

*NHK「おはよう日本」でも「アメリカ 気候変動対策の最前線」として、同社のことが紹介されています。

商船三井、日本航空、三菱商事、三井物産の4社が米DAC企業エアルーム・カーボン・テクノロジーズに出資を決定。商船三井は2030年までにCDRクレジット220万t調達を目指し、三井物産はDAC技術を活用したDACCS事業の展開を計画。現在DACクレジットは1t当たり約800ドルで取引され、主に米テック企業が市場を牽引。政府も排出量取引制度でのDAC活用を検討中だが、コスト低減の実現性が課題となっている。

【7】環境省主催「ジャパンクライメートテックネットワーキングイベント」

*環境省主催によるクライメートテックのピッチイベントも来週開催されるそうです。ご興味ある方は是非🙂

▼イベント概要

  • 日時:2025年1月17日(金)15:00~18:00(14:30開場)

  • 形式:ハイブリッド開催(会場参加・オンライン)

  • 会場:Tokyo Innovation Base(〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-8-3)

  • 参加対象者:Climate Tech企業及び同領域に関心のある企業・金融機関・その他支援者等

  • 費用:無料

  • 詳細・申し込みフォーム:https://forms.office.com/e/SPUmbaxXFa

***

以上、当面はニュースのピックアップ数を10本から7本を目安にしてみます。昨年はニュースレターの文字数が増えてしまっていたこともあり少し減らしてみることにしました。その代わりにX上で定期的な記事のキュレーションに少し力を入れてみたいと思います。よろしければXのアカウント X (@SocialCompany)のフォローをお願いします。

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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇‍♂️[ハッシュタグ: #ClimateCuration ]  みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、では、よい2025年を、良い連休をお過ごしください🙂🙋

市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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