岐路に立つ気候変動対策 〜米大統領選後の展望と希望〜
【1】【最速解説】トランプ、歴史的勝利の「5つのポイント」
【2】米国選挙結果:地図とグラフで見るトランプ氏の勝利
こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は2022年4月にスタートして、今年2月からは新しい配信サービスtheLetterにおいて730名を超える方に購読頂いてます。2023年9月から配信をスタートしたLinkedinニュースレターでは1,050名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。
日本語圏以外の方にも数多く登録頂いているのですが、DeepLやGoogle翻訳等ご利用の上眺めていただけたら嬉しく思います🙂。ご登録がまだの方は以下からご登録をお願いします。
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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
今週はなんといっても米大統領選の結果が大きな話題になりました。予想を覆すトランプ氏の圧勝は気候変動政策に暗雲をもたらすのでは、ということで様々なメディアやSNSで懸念、今後の見立てなどが共有されています。
個人的には気候変動対策推進という点で民主党に淡い期待をしていたものの、トランプ圧勝をもたらした物価高騰、格差、移民問題などを十分に理解できてなかった自分の想像力の欠如を反省しています。
海外の気候変動推進に取り組んでいるメディア、支援団体、企業、コミュニティからはメンタルケアの気遣い、今後引き続きやるべきことをやるべきだ、という声が挙げられています。国内においてもこうしたサポートコミュニティの必要性を感じます。また、今まで以上に海外の動向を意識的にアンテナを張る必要性も痛感しています。
3年弱運営しているニュースレターではありますが、来年には何らかの形でコミュニティ的な取り組みに力を入れたいと思いを新たにしました。折に触れて気候変動をテーマにディスカッションする機会などを作れたらと考えています。アイディア、運営協力いただける方がいらしたら是非ご連絡いただけたら嬉しいです🙂
来週からアゼルバイジャンで開催されるCOP29ですが、後半の11月18日から23日まで、日頃いろいろな連携をさせていただいている「Media is Hope」チームとして参加を予定しています。現地で起きていることを日本語でも伝えるサポートができたらと思っています。Media is HopeさんのXアカウント「@MediaisHope1」やハッシュタグ「#COP29J」、そして自分のアカウント「@SocialCompany」でCOP関連の発信を予定しています。よろしければこの機会に是非フォローしていただければ幸いです:)
【1】【最速解説】トランプ、歴史的勝利の「5つのポイント」[11/7 NewsPicks🔏]
【🙋】トランプ氏勝利の要因、ハリス氏民主党の敗因分析などが数多くのメディアで連日報道されています。以下の記事は米国の現地の様子を動画取材し、今起きていることを分かりやすく伝えられていて参考になりました。
2024年アメリカ大統領選挙でトランプ氏が予想を覆して圧勝。主要な勝因として、インフレと移民問題への有権者の不満、YouTubeやポッドキャストなどの新メディア戦略の成功、そしてイーロン・マスクなど有力テック企業家の支援が挙げられる。民主党の地盤であった層からも支持が離れ、特に男性票で大きな差が出た。伝統的メディアよりもソーシャルメディアの影響力が顕著となり、政治コミュニケーションの新時代を示唆している。
【2】米国選挙結果:地図とグラフで見るトランプ氏の勝利 [11/7 Financial Times🔏]
【🙋】Financial Timesの記事によると、ほぼ全州、そして高齢者と大卒女性以外の全ての属性においてトランプ氏支持が前回よりも増えている点に注目です。そして経済と移民問題が重要視されたことが窺えます。気候変動対策は主要な争点として以下の図には含まれていません。
"2024年大統領選でトランプは決定的勝利を収め、主要な激戦州を制し、ほぼ全ての州と人口統計層で得票率を向上させた。ミシガン、ノースカロライナ、ジョージア、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどの重要州を獲得し、民主党の牙城でも躍進。特にフロリダのラテン系有権者間で顕著な伸びを見せ、マイアミデード郡を転覆させた。2004年のジョージ・W・ブッシュ以来初の共和党候補として一般投票でも勝利する見込みで、都市部・地方部ともに支持を拡大。"
image credit: Financial Times
image credit: Financial Times
【3】ピーター・ティールとシリコンバレーがいかにしてJD・ヴァンスの急成長に資金を提供したか - ドナルド・トランプの副大統領候補は、億万長者の投資家からビジネスと政治の分野で資金提供を受けたベンチャーキャピタリストだった。[7/17 Financial Times🔏]
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Dヴァンスの政界とテック業界での台頭は、ベンチャーキャピタルNaryaと上院選挙に数百万ドルを投資したピーター・ティールの影響力が大きい
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ヴァンスのVC経歴は、シリコンバレーのリバタリアン派とトランプのMAGA運動の連携を示し、Rumbleなど右派向けプラットフォームへの投資がその例
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39歳でのトランプ副大統領候補指名は、ティールの政治的影響力を拡大し、イーロン・マスクなどのテック界の支持を獲得
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テック政策では「小規模テック」を支持し、暗号通貨を推進する一方、Googleなどの解体を主張
【🙋】今回の選挙で争点となっていたインフレ・物価高騰などに困窮する白人労働者の怒りと悲哀を描いた作品として話題になった『ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち』という回想録があります。現在40歳という若さで副大統領に就任した著者であるJDバンス氏を一躍有名にしたきっかけの小説です。既に2028年の大統領候補として注目されている人物像とその生い立ちがとても気になります。映画化された作品を以前観たことはあるものの、今回改めて書籍を手にしてみようと思ってます。今週X上で話題になっていた元日経新聞の高井宏章氏が2019年にnoteに書かれた記事、『「日本のヒルビリー」だった私』も併せておすすめです。
【4】トランプ大統領の再選は気候変動に広範囲な影響を及ぼす [11/6 Axios]
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トランプ氏の大統領復帰は、米国の気候科学と研究インフラに重大な脅威をもたらす。国立気象局の民営化やNOAAの再編成を含む連邦機関の抜本的な改革と、化石燃料生産の増加が予想される。科学的独立性やデータの完全性への政治的干渉、政府機関からの気候科学者の流出が懸念される。これらの変更は、極端な気象現象が激化する重要な時期に、気象予報の精度と気候研究に影響を与える可能性があるが、民間部門が一部の役割を担う可能性もある。
【5】トランプ氏の勝利はCOPサミットを前に気候変動対策への打撃とみられる [11/6 Financial Times🔏]
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トランプ氏の当選により、アゼルバイジャンで開催予定のCOP29への影響が懸念されている。多くの主要指導者や金融界の幹部が不参加を表明し、気候変動対策における米国の役割に不安が広がっている。トランプ氏はパリ協定からの離脱と4,500億ドルのクリーンエネルギー投資を生み出したインフレ削減法の撤廃を約束している。しかし、気候変動対策の専門家らは、クリーンエネルギーの競争力と経済的インセンティブを理由に、世界の脱炭素化の勢いは継続すると楽観的な見方を示している。
【6】トランプ大統領の復帰で気候変動関連のスタートアップへの投資が復活 [11/9 Bloomberg🔏]
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トランプ氏のクリーンエネルギー支援削減計画にもかかわらず、投資家は気候テック分野に機会を見出している。連邦支援は減少する可能性があるが、民間投資家は初回トランプ政権時と同様に資金格差を埋める準備をしており、2021年までに気候テック投資は300億ドルに達した。現在の投資環境は変化し、気候テック投資は50%減少しているものの、投資家は持続可能性よりも雇用や製造業などの超党派的優先事項に焦点を当てて、楽観的な見方を維持している。
image credit: Bloomberg
【7】生物多様性COP、成果の一方で議題持ち越しも 会場去る国が相次ぐ [11/3 朝日新聞🔏]
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国連生物多様性条約締約国会議(COP16)は、定足数不足により異例の中断となり、重要議題の合意が持ち越しとなった。ただし、生物資源のDNAデータ(DSI)利用による利益の扱いについては、大企業からの国際基金への拠出を求める合意が成立。参加登録者は過去最多の約2万3千人を記録し、企業の参加も目立った。日本は生物多様性情報開示枠組み「TNFD」に約50万ドルを拠出することを発表し、国際的な取り組みへの積極的な姿勢を示した。
*生物多様性条約締約国会議(CBD COP16)閉幕 残された課題多く [11/7 WWF Japan]
【8】米国がトランプ大統領の2期目を見据える中、持続可能性関連の仕事が急増 [11/8 Inc.]
【🙋】選挙結果に関わらず、大きなトレンドとしての再生可能エネルギー産業の成長、人材の需要は継続していきそうです。日米で同じタイミングで同じようなレポートが公開されています。
LinkedInの新しいグローバル・グリーンスキル・レポートによると、2024年の持続可能性関連の職種とスキルへの需要が増加し、米国では環境人材の採用が全体の採用率を80%上回っている。トランプ氏の当選と政策変更の可能性にもかかわらず、専門家らは世界市場の需要により再生可能エネルギーへの移行は継続すると予測。2030年までにグリーン職の5分の1で適格な人材が不足する可能性があり、Z世代の関心は高いものの、企業の経験者優先傾向が参入障壁となっている。
*デロイト トーマツ調査:日本の労働市場におけるGX人材の割合は8.5%、今後のGX業務関与意向は56.7%にとどまる [10/31 デロイト・トーマツ]
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GX人材の市場規模やキャリアの志向性、リテラシー標準の保持率やリスキルの実態を分析
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GX人材はワークライフバランスや挑戦機会を大事にし、領域をまたいだリスキルを行う傾向
GX人材は254万人、平均年収700万円 EV・電池分野に多く [11/1 日経GX]
【9】将来を決める分岐点に立つという危機感を背景にした海外の報道連携 [11/1 NHK放送文化研究所]
【🙋】21ページに渡って、気候変動報道を通じて効果的なストーリーを届けるための海外の実践例が紹介されています。今回の米大統領選の結果を振り返る中で、また日本の衆院選を通じて、国際交渉や外交の話よりも、多くの人が直面しているのは日々の暮らし、経済であることがまずまざと明らかになりました。特にメディアに関わる方にとってはおすすめの記事と感じました。
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近年気候変動報道における国際的な連携が活発化している中で、主要な連携ネットワークとして、Covering Climate Now、Oxford Climate Journalism Network、Climate Centralなどがあり、それぞれ異なるアプローチで気候変動報道の質と量の向上を目指している様子が紹介されています。これらの連携は、気候変動を単なる環境問題ではなく、政治・経済・社会のあらゆる分野に関わる緊急課題として捉え、メディアの垣根を越えた知識共有と協力を通じて、より効果的な報道を実現しようとしていると伝えられています。
【10】気候変動を食い止めろ! - 気候危機を解決するカギを握る「気候テック」と呼ぶテクノロジー。都市を変革する日本発の新技術に迫る2回シリーズ
NHKの番組で「気候テック」⚡🚀が、しかも2回のシリーズで取り上げられるとのことです。キャスター には江守 正多さん( 気候科学者 東京大学未来ビジョン研究センター教授)が登場されるとのこと、深夜での放送ですがNHKプラスやNHKオンデマンドでも視聴可能とのこと、期待しています🙂。
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NHK総合(1)都市のCO2を減らす新技術 2024年11月18日(月)午前0:55~1:44 ※17日(日)深夜
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NHK総合(2)都市のリスクに備える新技術 2024年11月18日(月)午前1:44~2:33 ※17日(日)深夜
私も関わっているCIC Tokyoの環境エネルギーイノベーションコミュニティが企画しているイベントにも江守さん始め気候変動の専門家が集い、議論が行われる予定です。私も参加予定です。ご興味ある方は是非ご参加ください🙂
日時:12月3日(火)16:00
【🙋】「ネイチャーポジティブに関するイベントは今週11/13に名古屋のSTATION Aiにて開催予定です🙂
ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇♂️🙂[ハッシュタグ: #ClimateCuration ] みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。
*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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