"混迷の"EVシフト / クリーンテック1.0の教訓

【1】 過去最高に暑かった10年 2100年までに1千兆ドル超の被害も
【2】3Mの調査で、気候変動対応に「意見を持っていない」日本の若年層が13%と調査対象10カ国中で唯一10%を超え、関心の低さが明らかに
【3】再エネ賦課金2年ぶり上げ 標準家庭で月836円負担増
【4】米 自動車排ガス規制を発表 段階的に厳しくしEVの普及加速へ
【5】クリーンテック2.0、過去の失敗からの学び
市川裕康 2024.03.23
誰でも

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は2022年4月にスタートして、今年2月からは新しい配信サービスtheLetterにおいて590名を超える方に購読頂いてます。2023年9月から配信をスタートしたLinkedinニュースレターでは980名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。日本語圏以外の方にも数多く登録頂いているのですが、DeepLやGoogle翻訳等ご利用の上眺めていただけたら嬉しく思います🙂。ご登録がまだの方は以下からご登録をお願いします。

【Climate Curation配信プラットフォーム】

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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

"世界気象機関(WMO)は19日、2023年は世界の平均気温が産業革命前よりも1・45度上昇し、直近10年間も観測史上最も暑かったと発表した。今後、気候変動対策を取らなければ被害は2100年までに1千兆ドル(約15京円)を超えるとし、対策をした方が費用を抑えられるとした。WMOによると、2014~23年の平均気温は、1850~1900年より1・2度上回った。"

3月23日は「世界気象デー(World Meteorological Day)」ということもあり、改めて気象・気候に関する発表や関連記事が公開されています。気象庁も22日に「気候変動監視レポート2023」を公表し、昨年7月後半から8月にかけての顕著な高温などについて詳しく分析しています。

なかなか日頃気候変動の脅威を感じる機会が少なく、恵まれた状況にあるからかもしれませんが、改めて「現状認識として知っておきたい」と感じる調査結果でした。

"「気候変動への対応はどの程度重要ですか?」との問いに対し、「とても重要」「ある程度重要」と回答した人は合わせて87%にのぼり、グローバル平均の90%とほぼ横並びでしたが、世代別にみると「特に意見はない/気にしない」と回答した日本の若年層(18-34歳)は13%と、調査対象10カ国の中で唯一10%(グローバル平均5.1%)を超える結果となりました。また、国内の世代別でみても年長者の方が高い関心を示すなど若い世代の気候変動に対する関心の低さが明らかになりました。"

スリーエム ジャパン株式会社「3M State of Science Insights(ステート・オブ・サイエンス・インサイト)」

スリーエム ジャパン株式会社「3M State of Science Insights(ステート・オブ・サイエンス・インサイト)」

「再エネ賦課金」が2年ぶりに上がるとの報道がありました。昨年大幅に安くなり1年前の水準に戻る形ですが、2012年からの推移を見るとなんと約15倍も上がっています。「エネルギー」を考える上でもこの機会に意識してみてはいかがでしょうか?私自身気候変動のことについて興味を持ち始めたことで毎月の電気使用量・料金をグラフで比較できるサービスに登録し、そのことで前年同月のデータと比較しながら節約を以前より意識するようになりました。地域によりサービスは異なりますが、こちらのサイトから「旧一般電気事業者の会員向けの電気代見える化サイト一覧」を参照できます。ぜひお試しを⚡

【4】EVシフトの動向

最近のEVシフトに関しては「EV減速&ハイブリッド好調」という論調を中心に、様々な報道が溢れていて、米国では大統領選挙の争点にもなりそうで交錯している印象です。データを踏まえながら状況を注視していきたいものです。

image credit: Bloomberg

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🚗💨電気自動車のライフサイクルを通じたCO2排出量合計は、ガソリン車やディーゼル車よりも70%少ない可能性があるとするBloombergNEFの分析レポート。

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【5】クリーンテック2.0、過去の失敗からの学び [3/19 MITテクノロジー・レビュー]

MITテクノロジー・レビュー米国版 編集主幹のデビッド ロットマン氏による読み応えのある論考。ブームに沸いたクリーンテック1.0の破綻から10年が経ち、米インフレ抑制法などを背景に気候分野のスタートアップが再び活況を呈している状況を俯瞰し、気候テック の今後についての考察が述べられています。

【6】クライメートテック投資家とは?[3/22 Sightline Climate/Climate Tech VC ]

気候テック分野の人気ニュースレター配信で知られる Sightline Climateが気候テック分野のVCの一覧リストを作成し、公開しています。現在378社が登録されていて、そのうち6割が北米、3割が欧州となっています。日本拠点のものは1社しかリストされてないですが、登録申請もできるとのことなので今後増えていくと投資家がどのようなトレンドをフォローしているかを伺えることが出来ます。

image credit: Sightline Climate

image credit: Sightline Climate

今年の1位はNvidiaに。気候テック関連では19位にEVバッテリー材料の新しいリサイクルに取り組むレッドウッド・マテリアル社、20位にDAC(直接空気回収)の代表的企業であるクライムワークス社がランク入りしています。

サステナビリティ部門では炭素ゼロのセメントを製造するMITのスピンアウト企業のサブライム・システム社、微生物を使って農家の減肥を支援するピボット・バイオ社、気候変動技術プロジェクトの資金調達を支援するクルックス社、衛星を使い企業や政府が宇宙からリアルタイムでCO2排出量の追跡を可能にするGHGSat社などがランク入りしています。

国内ではこうした企業はまだ馴染みはないですが、引き続きwatchしていきたいですね。

テキサス・サミットで、クリーンエネルギーへの移行は失敗しており、世界は化石燃料からの脱却という「幻想を捨てるべきだ」と主張する経営者たち。

エネルギー業界の「ダボス会議」、「スーパーボール」などの形容詞とともに知られる「Cera Week」というイベントが5日間の日程でテキサスで開催されました。石油会社の経営トップらが化石燃料依存から早期に脱却すべきだとの意見に対して断固反対を表明し、石油・ガスを他のエネルギーに切り替えるために社会が支払う代償は非常に大きいと訴えた、と報じられています。カンファレンスのハイライト動画はこちら

"「水のノーベル賞」とも呼ばれ、世界の水資源の持続可能な利用と保護に際立った貢献をした人・組織に贈られる「ストックホルム水大賞」の2024年の受賞者に、東京大学の沖大幹教授が選ばれた。"

【10】▶Climate Career Week [3/25-29] https://www.climatecareerweek.org/

気候変動分野での起業・転職、キャリアシフトを志向している人のためのオンラインイベント、Climate Career Weekが昨年に続き3/25から開催されます。成長著しいClimate Tech業界においていかに人材育成・獲得が重要なテーマであるかが伺えます。日本からは時差もありますが、昨年は全てのセッションの動画アーカイブもありました。後日視聴することも可能と思われます。

image credit: Climate Career Week

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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

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では、どうぞよい週末をお過ごしください🙂🙋

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