データで見る2024年の気候変動報道 - SNSの影響力拡大と新たな課題
こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで750名以上、Linkedinニュースレターでは1,050名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。
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【⭐📰👀2024年に気になったニュース・トピックスの振り返り】
夏にあれだけ「暑い」と言い続けてきた2024年もまもなく終わりを迎えます。気候変動対策、気候変動報道に関しても沢山の出来事があり、それらを報じたり、議論する機会も増えたような気がします。みなさんの周辺ではいかがでしたか?年の瀬、ということで今回はいくつか計測可能なデータを集めて2024年の気候変動報道の振り返りをしてみたいと思います。
【1】2023年から2024年にかけての気候変動報道数の推移
BuzzSumoという分析ツールを活用し、過去2年間の気候変動報道(その他「温暖化」「再エネ」「脱炭素」関連のキーワードを含む記事)の数の推移を示した図が以下になります。FacebookとX上のキーワードを含む記事・コンテンツの数を表示するものであり、多少の誤差があるため厳密な数値ではなく、あくまで目安としての参照にとどめてください。
以下は過去2年間の推移を表したものです。毎年11月頃に「気候変動」を含む記事が増え、全体的には「脱炭素」関連の記事が多くなってます。全体的な記事ボリュームは横ばい、或いは少し増えている印象を受けます。
分析ツールBuzzSumo 調べ
【2】2024年に最もFacebookとXで拡散した記事・コンテンツは?
以下のリストはFacebookとX上で多くのエンゲージメント(いいねやシェア)を獲得した記事の上位10記事です。見てすぐに分かる通り、いわゆる大手報道機関による「記事」は2本のみで、7本が広告収益を目的としたと思われるサイトであることが窺えます。
普段ソーシャルメディアをあまり利用されない方にとっては驚きかもしれませんが、今や日本人のX利用者は6800万人で、検索、そして利用時間において世界1位となっています。「気候変動と誤情報」というテーマは以前から大きな問題となっているだけに、どのような情報と接するか、とても大事な問題と感じます。「自分は普段そのような誤情報と接してないから大丈夫」というレベルの話ではなく、最近では世論形成、分断深化、政策形成や選挙結果にも大きな影響をもたらすことが世界的に顕著になりつつあります。2025年に向けて向き合っていきたいテーマです。
分析ツールBuzzSumo 調べ
【3】猛暑、自然災害も増えている一方、減少が続く気候変動報道
以下のデータとグラフは絞り込み可能な検索機能がついている新聞社のサイト2社(日本経済新聞と読売新聞)のそれぞれのキーワードを含む記事の数を2020年から調べてみたものです。カーボンニュートラル宣言が2020年10月にあったこともあり、2021年に一気に増えたことが明らかな一方で、2021年から2024年は軒並み減少傾向が窺えます。数は減ったものの「科学的知見を盛り込んだ深い分析記事が増えている」という見方もあるかもしれませんが、少し気になる傾向、と感じます。みなさんはどう思われますか?
日本経済新聞と読売新聞の検索結果をまとめたデータ・チャート
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】温室効果ガス、新削減目標の数値ひとまず空白に 政府方針へ賛否続出 [12/19 朝日新聞 ]
12月19日、そして20日に開催された環境省と経済産業省による審議会において、「2035年・2040年を見据えた温室効果ガス削減目標とその達成方策」について議論が行われ、直線的経路(2035年60%減・2040年73%減)や「2035年最低でも66%減」などの削減シナリオ、1.5度目標との整合性、産業競争力との両立など、多岐にわたる意見が交わされたことが報じられています。
image credit: 朝日新聞
2035年度の削減目標を2013年度比「60%減」とする現実的な道筋、そして「最低でも66%」の野心的な気候変動対策を目指す考えについて、専門家がそれぞれの立場からシナリオ分析を示しながら率直に議論を交わす様子が全てYouTubeで公開されています。【12/19の回】 【12/20の回】
*環境NGO気候ネットワークのXアカウントにより、ハッシュタグ「#NDC合同会議」にてに実況中継も行われています。
正直私自身もこの2週間ほどで様々な素案が報道ベースででる中で野心的でない現実的な方向で物事が進む印象を持っていたのですが、若者世代、企業、スポーツ団体、医療界、政党など積極的に声を挙げたことで、とてもオープンで率直な議論が繰り広げられています。「気候変動問題に声をあげる」ことの力をとても感じる出来事です。それぞれの議論は2時間〜3時間と長く、専門的な議論もあり、理解が追いつかない部分もありますが、それぞれの立場からの真摯な議論がしっかり行われている様子を見て、強い希望を感じました。
*野心的なNDCを求める声、医療やアウトドアなど各方面からも [12/13 オルタナ]
ただ、残念に思うのは、こうした議論がされていることに関し、どれだけ私たち一人ひとりが興味関心を持てているか、という点です。YouTubeのアーカイブの視聴者数は本日時点でそれぞれ2,000人前後です(それが多いか少ないかはなんとも言えません。ただ個人的にはとても学びが多い議論でこのテーマに興味を持っている方にはお勧めです🙂)。
上記のデータで示した通り、気候変動関連の報道数が減り、こうした10年、20年先の気候変動政策についての議論が存在していること、それによって自分の生活、仕事にどのような影響が及ぶかを知る機会が少ないまま、大事な政策が決められるのはとても残念に感じます。来週12月24日には最後の審議会が行われるとのことです。ご興味ある方はアーカイブ含めぜひ視聴してみてはいかがでしょうか?
【2】時論公論 新たなエネルギー計画案公表 実現の課題は [12/19 NHK / NHK Plus での見逃し視聴は12/26(木) 午後11:40 まで]
エネルギー基本計画についても素案が示され、注目されています。以下のNHK時論公論では10分間で分かりやすく解説がされています。
【3】再生可能エネルギーを“最大の電源”に 原子力も最大限活用へ [12/17 NHK ]
長文記事ですが様々な側面からエネルギー基本計画について詳しく解説がされている一本です。
"政府は電力需要の増加が見込まれる中、2040年度の再生可能エネルギー割合を4~5割、火力3~4割、原子力2割とする新しいエネルギー基本計画を示し、従来の「原発依存度低減」という文言を外して「最大限活用」へと大きく転換しました。再生可能エネルギーではペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力など新技術への期待が高まる一方、発電コストと安定供給の両面で課題が残ります。原子力はコスト優位性が強調されつつ、建設費高騰や事故リスクなど不確定要素が多く、2040年「2割」の実現は不透明です。"
今回は短めですがここまでとさせていただきます🙇
冒頭国内において気候変動報道が減りつつあるのでは?とお伝えしましたが、海外に目を転じると新しい気候変動関連のメディア、ニュースレター、ポッドキャストなどが次々と誕生し、多様な視点から多くの記事、コンテンツが溢れています。
そんな経緯もあり、最近はニュースレターの分量が多くなってしまったり、どのようなテーマの記事をピックアップをするかなど、逡巡しながら毎週2回、日本語版と英語版のニュースレターを配信しています。
そこで、年末ということもあり、よろしければ以下のリンクからアンケートにご協力いただけないでしょうか?「長い!」「たまに参考になる記事がある」「もっとこういう分野の情報を希望」など、お気軽にご意見・コメントお寄せいただけたら幸いです。また、2024年の印象深いニュースやトピック、2025年に注目していることもぜひお知らせください。今後のニュースレター改善のために参考にさせていただきます🙇♂️。
▶Climate Curation 2024年振り返りアンケートご協力のお願いhttps://forms.gle/d8E1TYB6NprDYwL6A
来週(12/28)、再来週(1/4)はお休みをいただきます。年明けは1/11(或いは1/18)からの配信を予定しています。
ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇♂️[ハッシュタグ: #ClimateCuration ] みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。
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感想、質問、リクエスト、提案なども歓迎です:) *ニュースレターの性質上なかなかコメントを頂く機会も限られていることもあり、文章の量、フォーマット、切り口など、試行錯誤中です。少しでも読みやすく、役に立つ内容に改善出来たらと思ってます。
*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、よい年末年始をお過ごしください🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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