「排出削減目標(NDC)60%削減」案の行方と日本の気候政策 / CDR技術の台頭
【5】大気から二酸化炭素を回収する事業 日本企業の参入相次ぐ
【8】気候テック新興の調達、過去4年で最低 投資先選別鮮明
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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
🙋先週から今週にかけて『NDC(Nationally Determined Contribution)』(パリ協定における各国の温室効果ガス削減に向けた具体的な取り組みを示す枠組み)についての議論が急速に進んだ1週間でした。
大きな流れとして、日本政府は2025年2月までに「2035年度の温室効果ガス削減目標(NDC)」を国連に提出予定となってます。環境省・経産省は2035年度までに2013年度比60%削減、2040年度までに同73%削減を提案していますが、この目標値はIPCCが示す世界平均の必要削減量を下回っているとして批判の声が挙げられています。
科学的な観点から1.5度目標との整合性を確保するには、2013年度比で最低66%以上の削減が必要と言われています。独立系科学的プロジェクトであるClimate Action Trackerは、日本の歴史的排出量や技術力、経済力を考慮すると、81%削減が適切としています。
より野心的な目標設定は、化石燃料依存からの脱却による海外資金流出の抑制や、再生可能エネルギーの主力電源化によるエネルギー自給率向上につながるとして、COP28でも2035年までの大幅削減の必要性が確認され、イギリスや欧州委員会も高い目標を掲げています。
以下は関連する主要な反応・動きです。
【1】日本のNDC案は1.5℃目標に整合せず、国内外から批判相次ぐ [12/6 オルタナ]
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「1.5℃目標」達成に向けて、各国の排出削減目標(NDC)の提出期限が迫る
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日本は、「2035年までに2013年比で60%減」とする案で審議が進む
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これに対し、国内外から「1.5℃目標」に整合しないとの批判が相次ぐ
【2】気候変動は命の問題なのに…どうして日本は目標が低い? 霞が関で「ホンキのCO2削減」を訴える若い世代 [12/10 東京新聞]
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日本の若手活動家たちが、より野心的な気候目標を求めて声を上げている。政府が提案する60%削減に対し、2035年までに81%削減を主張。健康被害の実態を踏まえ、日本の不十分な気候変動対策の強化を訴える若者たちの切実な要求が広がっている。
【3】温室効果ガス削減、上積みせず 自民調査会、首相に提言へ [12/6 共同通信]
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自民党環境・温暖化対策調査会は、2035年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比60%減とする提言をまとめ、月内に石破首相へ申し入れる予定。企業や環境団体からは「目標が低すぎる」との指摘があったが、政府案からの上積みは見送られた。政府は来年2月までに国連へ新目標を提出する。現行目標は2030年度46%減、2050年実質ゼロ。
🙋環境NGO、スポーツ団体、若者団体、国内外の気候科学者の批判がある中、上積みは見送られ、「2035年までに2013年比で60%減」という案でNDC策定が進んで行くことになりそうです。
こうした動きの中でメディアが、そして一人ひとりが自分ごととして議論の推移に興味を持ち、声をあげることができていたか、以下の審議会のYouTubeでのアーカイブ動画を観ながら思いました。
NDCやエネルギー基本計画などの温暖化対策に関する議論は各種審議会で行われ、YouTubeで公開されてますが、視聴数は本日時点で2,259回とあまり視聴されてないようです。以下、最後の30分の箇所[2:25:20 〜]を視聴することで、どのような温度感でこうした議論がなされているかが窺えます。ご興味ある方は是非視聴してみてはいかがでしょうか。
【4】気候変動取り組む賞に日本人女性 環境シンクタンク代表の平田さん [12/3 共同通信]
🙋本ニュースレターでも作成されたレポートなどを折に触れて紹介させていただいる「Climate Integrate」の平田仁子氏が「クライメートブレークスルー賞」を受賞されたとのこと、おめでとうございます🎉 データやファクトに基づいて健全な議論が行われるよう、更なるご活躍を期待しています。
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気候変動問題に取り組むリーダーを支援する「クライメートブレークスルー賞」を選定する米国の団体は3日、今年の受賞者に日本の環境シンクタンク「クライメート・インテグレート」の平田仁子代表を選んだと発表した。活動の支援資金として3年間で計400万ドル(約6億円)が贈られる。
🙋欧米においては過去1〜2年ほどCDR(炭素除去=Carbon Dioxicide Reduction)に対する注目が高まっていたのですが、今週は日本において一気にCDR、CCUS、DACなどの報道が増えたと感じます。大事な技術や取り組みであることは認識しつつも、まるで何か合図があったかのように関連報道が増えている点が少し気になりました。COP29においてパリ協定第6条であるクレジットに関する国連ルールが最終合意に至ったということもありますが、NDCやエネルギー基本計画に関する議論や進捗についても興味を持って注視していきたいと思います。
【5】大気から二酸化炭素を回収する事業 日本企業の参入相次ぐ [12/5 NHK]
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大気中のCO2を直接回収するDAC技術の実用化が日本で進展している。双日は九州大学やJA全農と共同で特殊膜を用いた回収装置を開発し、回収したCO2を農業用ハウスで活用。植物の生育促進効果も確認。三井物産、三菱商事、JAL、商船三井も米企業と連携し参入を決定。脱炭素化に向けた新たな取り組みとして注目される。→ 詳細:カーボンエクストラクト社
【6】三井物産や三菱商事、米国でCO2回収に参画 新興へ出資 [12/4 日本経済新聞 🔏]
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三井物産、三菱商事、JAL、商船三井の4社が、米スタートアップのエアルーム・カーボン・テクノロジーズに総額約230億円規模の出資を決定。同社は大気中からCO2を直接回収するDAC技術で、石灰石を活用した低コストの回収システムを開発。2023年にカリフォルニア州で年間1000トンの商業施設を稼働させ、2026年にはルイジアナ州で1.7万トン規模の2号施設、さらに100万トン規模の3号施設を計画中。日本企業は炭素クレジットの調達や技術ノウハウの獲得を目指し、脱炭素化への取り組みを加速させる戦略。米国政府の手厚い支援もあり、DACは質の高い炭素除去手段として注目を集めている。
【7】Jークレジット、DACも対象に 国内での事業化後押し [12/6 日経GX🔏]
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経済産業省はJ-クレジット制度にDAC由来のクレジットを追加する方針を示し、具体的要件は2025年度以降に確定予定。
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発電事業者や商社など33社が参画する大規模CO2貯留実証が11月末に開始。京都から北海道まで液化CO2を輸送。
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DACなどの炭素除去技術は実質排出ゼロ達成の重要技術。IEAのネットゼロ・ロードマップでは、CCUSが2050年の排出削減量の8%を占める見込み。
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DAC由来クレジットのJ-クレジット制度への追加により、2026年度から本格運用される排出量取引制度での活用が期待される。
【8】気候テック新興の調達、過去4年で最低 投資先選別鮮明 [12/6 日本経済新聞 / CB Insights]
🙋気候テックはインフレや人工知能・AIに押され投資額が減少しつつも、核融合やCCUS/DACには依然注目が集まっているようです。
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気候テック投資の減少: 2024年第3四半期、気候テックスタートアップの資金調達額と件数が4年間で最低水準に。
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AI投資へのシフト: 投資家は、開発・商用化が速いAI分野に重点を置き、高コストな気候テックから移行。
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地域別の動向: 米欧では調達額の中央値が増加し、投資家の信頼が維持されている。
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政府の重点支援: 特に米国で、核融合エネルギーやDAC技術のような初期技術への支援が活発。
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EVとCCUSの選択的投資: トゥエルブ社のSAFプロジェクトのような大規模案件は引き続き注目される。
image credit: 日本経済新聞 / CB Insights
🙋以下2本はThe Economistが毎年年末に出版している翌年の姿を占う『The World Ahead』の記事からピックアップしました。中国と系統蓄電池システム、注目です。
【9】中国はグリーンイノベーションの次の段階を主導することを望んでいる - 水素、炭素回収、その他の技術をリードすることを目指している [11/20 The Economist / The World Ahead 2025🔏]
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中国の現在の優位性:補助金と競争を背景に、コスト効率の高い太陽光パネル、バッテリー、電気自動車の生産で世界をリード。
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対応が難しい分野への挑戦:セメント、鉄鋼、航空など、排出削減が難しい産業向けのグリーン技術開発を2025年の重点課題に。
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炭素回収技術の革新:炭素回収貯留(CCS)技術の特許で世界をリードし、2025年までに年間100万トンのCO₂を回収する実証プロジェクトを推進。
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グリーン水素への注力:再生可能エネルギーを活用した「グリーン水素」製造コスト削減を目指し、電解槽製造での優位性と豊富な再生可能エネルギーを活用。
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世界的な影響:中国の技術進歩は国内のカーボンニュートラル目標達成と輸出市場拡大に寄与する一方、世界的な依存度の増加が貿易パートナーの懸念を招く。
【10】系統規模の蓄電システム、エネルギー技術で最も急成長 - 大規模バッテリーから圧縮ガスまで―広がる多様な蓄エネルギー技術 [11/2 The Economist / The World Ahead 2025🔏]
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系統規模のエネルギー貯蔵は急成長を遂げており、2021年から2025年までに8倍の80GWまで増加する見込みです。この急成長は、太陽光・風力発電の普及拡大、中国のバッテリー製造過剰による価格下落、AIデータセンターの電力需要増加、革新的な貯蔵技術の台頭という4つの要因に支えられています。従来のリチウムイオン電池に加え、ナトリウムイオン電池、重力ベースのシステム、圧縮ガス貯蔵など新技術が台頭しています。IEAは2025年までに、太陽光発電とバッテリー貯蔵の組み合わせが中国の石炭火力やアメリカのガス発電よりも費用効果が高くなると予測しています。
【イベントご案内・報告】
今週は2つのイベントの登壇・運営の機会がありました。また、12/9には名古屋で開催予定のサーキュラーエコノミーに関するイベントの運営に伺います。もしお近くでご興味ある方いらしたら是非お気軽にお立ち寄り(或いはオンライン視聴)いただけることをお待ちしています🙂
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12/9 持続可能なビジネスへの変革 〜サーキュラーエコノミーの可能性を探る [CIC Tokyo / 環境エネルギーイノベーションコミュニティ ] @愛知・名古屋
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12/2 メディア向けCOP29報告会 / イベント終了後の記念写真[Media is Hope X投稿]
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12/3 環境エネルギーイノベーションサミット "LEEP SUMMIT 2024" 〜持続可能な未来へ:産業横断的シナジーの創出 [ CIC Tokyo / 環境エネルギーイノベーションコミュニティ ]
イベントレポート - 環境エネルギーイノベーションサミットLEEP SUMMIT 2024 開催レポート
ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇♂️🙂[ハッシュタグ: #ClimateCuration ] みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。
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では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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