温度差のある報道:日本と世界の気候変動ニュースの違いを探る

【1】韓国政府の気候変動対策は一部「違憲」 アジア初の司法判断
【2】テレビの猛暑報道、99%が「温暖化」語らなかった―各局に報道姿勢を聞いてみると…
【追記1】:日経電子版における気候変動関連キーワードを含む記事掲載頻度の傾向
市川裕康 2024.08.31
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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

"韓国の憲法裁判所は29日、政府の温室効果ガスの削減目標などを定めた炭素中立基本法の一部について憲法違反だとする判断を示した。裁判官9人全員一致の判断。同法が2031~49年の削減目標を示していないため、将来世代の環境権などを保護していないと指摘した。原告の弁護団によると、政府の気候変動対策を違憲とする司法判断はドイツなどで例があるが、アジアでは初めてという。"

【🙋】世界的に広がりを見せる気候訴訟の動きがアジアにも及びつつあることを感じるニュース。今後の台湾、日本への広がりも指摘されています。更に気になったのはこのニュースを国内で報じているのはNHKと毎日新聞/TBSのみのようです。海外では広く報じられているようです。こちらのnote記事にまとめてみました→『"韓国気候訴訟"報道の国内外の違いから感じること

【🙋】連日の猛暑、熱中症に関する報道がされる際、温暖化や気候変動との関連性が十分に説明されてないのではないか、という点が最近よく指摘されています。実際にNHKと民放キー局に質問状を送付され、それらの回答を踏まえた記事。テレビを観る際に意識しておきたい視点と感じます。

私もXで記事をシェアした際、以下のようにコメントしてみました。「『まだぴんときていない層の視聴者』に対して上から目線にならず、誠実に、分かりやすくどう伝える事ができるか、腕の見せどころになりそうですね。メディアの方のみに委ねず、スポンサー企業、マーケター、そして著名人やインフルエンサー、視聴者も参加しながら盛り上がっていくことを期待です🤞」この問題、みなさんはどう考えますか?

《台風10号について、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは30日、人為的な気候変動によって最大風速が7.5%増した可能性があるとの暫定的な分析結果を発表した。台風10号のような強い暴風を伴った台風の発生頻度も3割近く高まっているという》

【🙋】コンピューターシミュレーションで特定の気象現象に対する気候変動の影響を分析する「イベントアトリビューション」という手法を用いることでこのようなことがタイムリーに報道できるようになりつつあるようです。私も昨年初めてこのことを知りました。

【🙋】以下のような政策、新技術の取り組みもいろいろ進んでいるようです。

【🙋】先日来「気候テック」投資熱が冷えつつあるのではないか?という報道が続いてます。とはいえ、記事の見出しだけ、特定の調査結果データのみで判断しにくいのではないか、ということも感じます。

【6】米「インフレ抑制法」から2年、気候テックにもたらした確かな変化 [8/27 MIT テクノロジーレビュー🔏 / ギフトURL🎁]

【🙋】記事内で紹介されている具体的なインパクトの大きさに驚かされます。国の政策により家計も恩恵を得つつ気候変動対策に取り組んでいることが窺えます。

「個人に対する税額控除もある。5月下旬の時点で、およそ300万世帯が2023年分のインフレ抑制法の税額控除を申請したことが明らかになった。太陽光発電パネル、バッテリー、ヒートポンプに加え、断熱材などの住宅エネルギー効率化テクノロジーを対象に、合計約80億ドルの税額控除が認められた。この税額控除は人気があり、その支出額は当初予想額のおよそ3倍に達した。」

米インフレ抑制法が成立してから2年が経過した。巨額の補助金や税額控除の恩恵を受けた気候テック分野では、その効果が着実に現れ始めている。

  • 米インフレ抑制法により気候変動対策テクノロジーに大規模な資金が流入

  • 影響は米国内外の企業の投資行動から各国の政策にまで及んでいる

  • インフレ抑制法の今後は大統領選の結果に左右される可能性

【7】多くの気候政策が排出量削減に苦戦していることが判明 - 世界の1,500の政策を調査した結果、最も効果的なものは、単独のアプローチではなく、いくつかの排出削減戦略を組み合わせたものであることがわかった[8/22 New York Times]

【8】アフリカではグリーン投資へのシフトが進行中 - アフリカ大陸におけるベンチャー・キャピタルの活動の約半分がグリーン案件[8/22 The Economist 🔏/ ギフトURL 🎁]

【🙋】欧米の気候テック投資は減速気味かもしれないものの、アフリカでは長期的なビジネスは全て「気候テック」的な要素が含まれる異なっているようです。

「気候変動がより広く浸透するにつれ、長期的なビジネスモデルのほとんどが気候変動への対応を組み込まなければならなくなるという現実も反映している。」

  • アフリカのベンチャーキャピタル活動の43%がグリーンな投資案件が占めている

  • 気候変動に焦点を当てた開発金融と緊急の環境課題への対応の必要性がこの変化を推進

  • 東アフリカがグリーンエネルギーと農業技術革新をリードする立場にある

image credit: The Economist

image credit: The Economist

【🙋】ブルームバーグによる日本の液化天然ガス(LNG)関連ビジネスについての長尺特集記事。普段馴染みのない世界ではあるものの、いかに日々のエネルギーが世界からもたらされているかの理解が深まる記事でした。英語の記事のほうが日本の気候変動政策に対して厳しい目線を投げかけられているようです。こうした記事のSNS(FB&X)でのシェア&いいね数が日本語版で約500であるのに対し、英語版の記事では2,000以上であることも意識しておきたい点です。

【英語版】日本はいかにして気候批判を無視し、世界的な天然ガス帝国を築いたか - 専門家が自然エネルギーへの転換を早めるよう促す中、化石燃料への依存を定着させる一方で、日本のガス擁護は昨年140億ドルの利益を生み出した。[8/30 Bloomberg🔏/ ギフトURL🎁]

image credit: Bloomberg

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【10】気候変動・気候テック関連の映像番組・イベント等

【見逃し番組・ポッドキャスト】

【イベント】

備忘録的に測定可能なメディアでの気候変動関連キーワードを含む記事の掲載数を調べてみました(日本経済新聞、Financial Times、New York Times)

日経電子版の検索機能を利用して得られたデータを元に筆者が作成

日経電子版の検索機能を利用して得られたデータを元に筆者が作成

【追記2: 】クライメートテックの国内外注目トレンドと有力企業20社を紹介 [8/28 アドライト・ジャーナル]

先日登壇の機会を頂いたウェビナーの様子を丁寧にレポートにまとめて頂きました。

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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇‍♂️🙂[ハッシュタグ: #ClimateCuration ]  みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、台風にお気をつけて、よい週末をお過ごしください🙂🙋

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