CO2排出量開示本格化 / 系統用蓄電池への注目 / IEA EV予測レポート

【1】温室効果ガス排出量などの開示求める国の制度 本格的に始まる
【3】「このままではサッカーもできなくなる」 Jリーグの気候変動対策が動き出す
【4】欧州の炭素排出量は急速に減少 - 実際に機能する価格メカニズムのおかげ
【7】世界のEV販売、2035年に新車の5割超 IEA見通し
市川裕康 2024.04.27
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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

▶一見地味な扱いの記事という印象ですが「CO2排出量の見える化」がじわりと進みつつあると感じ、トップにピックアップしてみました。

"企業などに温室効果ガスの排出量や、化石燃料に依存しない電力の使用割合の開示を求める国の制度が、今年度から本格的に始まりました。情報の“見える化”により脱炭素や省エネを企業に促すとともに、先進的な企業への投資を呼び込むねらいです。去年4月に改正された「省エネ法」では、エネルギーを多く使用する大規模な企業などおよそ1万2000の事業者を対象に、温室効果ガスの排出量や、化石燃料に依存しない電力の使用割合など10項目について、毎年国に報告するよう求めています。"

相対取引が中心だったカーボンクレジットや非化石証書といった「環境価値市場」が拡大しており、enechainCarbon EXは取引量と参加企業数で大幅な成長を見せていると報じられています。環境価値市場の成長に伴い、企業のCO2排出削減への取り組みが加速していく兆しがここでも感じられます。

▶雪不足でスキーができなくなるということでスキー選手が気候変動対策の重要性を訴える報道などを目にした方も多いかもしれません。今回サッカーJリーグが本格的に気候変動対策に取り組まれるということで様々なメディアで情報発信が行われています。競技人口やファンの規模、スポンサー企業の広がりも含め、社会的にも大きなインパクトがあるのでは、と感じます。Jリーグ公式YouTube動画では著名サッカー選手が登場し、気候変動専門家の江守正多さんが分かりやすく現状を示す構成になっていて優れたコンテンツになっています。江守さんがX(旧Twitter) アカウントを開設されたのも個人的には今週の重要ニュースです:) ぜひフォローを🙂!→ @seitaemori

▶CO2排出量を見える化し、減らすことにビジネスインセンティブをもたらす仕組みとして知られるカーボンプライシング。日本でも少しずつ議論がされ、法整備も準備されつつある段階ですが、欧州においては排出量削減に大きな役割を果たしているようです。

"2023年、EUの炭素排出量が15.5%減少。電力・産業部門の削減と風力・太陽光発電の記録的な増加が主な要因。 排出量削減に貢献した3つの重要な要因は、EUの効果的な炭素価格制度、ウクライナ戦争のエネルギーコストへの影響、中国からの低価格のグリーン技術。 さらなるEU気候政策は、ネットワーク効果の促進、市場統合の改善、EU全体でのルールの調和を目指すが、コストと調整の課題が残る。 "

image credit: The Economist

image credit: The Economist

【5】G7、電力貯蔵の6倍拡大を目指す - バッテリーやその他のソリューションは、風力、太陽光、水力を貯蔵し、断続的な供給を補うことを目的としている。[4/26 Financial Times]

4月28〜30日にかけてG7気候・エネルギー・環境大臣会合がイタリアで開催されます。G7諸国は2022年の230GWから2030年までに電力貯蔵容量を約6倍の1,500GWに増やすことを目指すとされてます。日本は野心的な移行に抵抗し、石炭火力の段階的廃止に関する議論は依然として論争の的となっています。バッテリーのコストが15年間で90%以上下落したため、新規貯蔵の90%を占めると予想されています。

▶国内においては「G7気候・エネルギー・環境大臣会合」についての報道はまだ見る機会は少ないですが、世界の動きに合わせる形で「系統用蓄電池」に注目が集まっている様子が伺えます。

"住友商事は2000億円を投じて全国に蓄電池を設置し、太陽光や風力発電の電力を貯めて必要に応じて放出する。これにより、再生可能エネルギーの出力制御を減らし、安定供給を目指す。伊藤忠商事やENEOSも同様の取り組みを進めている。"

"24年度からは電力の需給を調整して報酬を得る「需給調整市場」が全面解禁され、需給に応じて高い価格で売電できるようになった。蓄電池網の費用対効果が上がり、住商は30年に年数十億円の利益を生めるとみている。"

image credit: 日本経済新聞

image credit: 日本経済新聞

今週は北京モーターショー開幕、IEAの 「EV Outlookレポート」発表など、注目の関連ニューストピックが多くありました。楽観的な傾向を示すと言われるIEAの報告所によると、2035年にEVが世界の新車販売の5割超を占めると予測しています。中国メーカーを中心とした低価格車がEV市場が拡大することが予測されています。

image credit: 日本経済新聞

image credit: 日本経済新聞

【8】連載:エネルギー基本計画の論点[4/23-25 日本経済新聞]

【9】人類の将来に影響、プラスチック汚染条約の焦点 - 生産制限、問題プラの禁止めぐり交渉が山場 [4/23 東洋経済オンライン]

"「プラスチック汚染」を終わらせるための条約制定に向けた政府間交渉が、山場を迎えようとしている。2024年4月23日から29日にかけてカナダの首都オタワで、プラスチックの生産削減や有害プラスチック対策など重要なテーマについての議論が行われる。条約の主だった内容について、年内の合意を目指す。"

image credit: 東洋経済オンライン

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1月末に開催された、気候変動問題の解決に求められる報道のあり方を考える「気候変動メディアシンポジウム」での発言、その後のインタビュー等を通じて気候変動とメディアに関しての様々な視点が紹介されています。こちらのイベントには私も参加させていただきましたが、メディア連携の可能性を感じ、当日の様子をブログ記事としてかかせていただきました。よろしければ併せてご覧ください:)イベント当日の様子のアーカイブ動画も公開されています。

*追記:継続的な情報収集とリサーチツールの共有について書いてみました。よろしければ🙂👇

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ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

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では、どうぞよい週末をお過ごしください🙂🙋

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