気候金融の岐路と日本のGX投資:2025年予算分析から見る脱炭素戦略の現実

📊 日本の気候予算の現実(化石燃料38%、再エネ4%)、世界の金融界は歴史的転換点に。気候変動問題に対して行動を起こしている日本人は22%に留まり、インドネシア・シンガポール(約60%)と比較して著しく低いという調査結果も。
市川裕康 2025.04.05
誰でも

こんにちは。新規登録の皆様、ありがとうございます。気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の週間ニュースレターを配信している市川裕康です。「Climate Curation」は2022年4月の創刊以来、theLetterで780名以上、Linkedinニュースレターでは1,090名を超える方にご購読いただいております。心より感謝申し上げます。毎週直近の1週間の間に気になった記事やコンテンツをダイジェストでお届けしています。

【Climate Curation配信プラットフォーム】

*英語版は毎週火曜日配信です。併せてご覧ください📬

先週の英語版ニュースレター「Japan Climate Curation vol. 147」の概要

  • 日本は新たな対策を講じなければ、2100年までに気温が4.5℃上昇するという深刻な気候変動の課題に直面しています。みずほや東京海上などの主要金融機関は、国際的な傾向に倣って世界的な気候同盟から撤退しています。政府の4.7兆円の気候予算は再生可能エネルギーよりも化石燃料を優先する一方、IEAは原子力発電所の再稼働を促しています。また、日本は壊滅的な巨大地震が発生する確率が80%という状況にも直面しています。

*免責事項:要約、翻訳、編集の際にClaude Sonet 3.7 などの生成AIツールを使用しています🙂

🌸お知らせ:先日受験したGX検定アドバンストに合格しました🙌 環境省認定『脱炭素アドバイザー アドバンスト』として、ニュースレターも今後より充実させていきたいと思います。どうぞ引き続きよろしくお願いします。同検定受験希望や脱炭素に関するコンサルティングにご興味・ご関心ある方はどうぞお気軽にご連絡ください。

***

【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

  • 地球温暖化は桜の開花に大きな影響を与えている。昨年の九州では花が少なかったが、今年は冬の気温が平年並みで通常の咲き方が期待される。40年間で東京の開花日は10日以上早まり、従来の南から北へ進む「開花前線」に異変が生じている。温暖化により広範囲で一斉に開花する傾向があり、今後は休眠打破がうまくいかず開花しない地域も出る可能性がある。専門家は温暖化対策の重要性を強調している。

  • 農水省が畜産農家の脱炭素取り組みを星1~3の3段階で評価する新制度を導入予定。牛乳・肉牛が対象、飼料調達や排泄物処理などから温暖化ガス排出量を計算。国内農林水産分野排出量の約31%が家畜由来で、25年度から運用開始予定。環境負荷削減商品にラベル表示し、先行事例では売上が1.7倍に増加。世界では家畜由来温暖化ガスへの課税も検討中だが、日本は消費者選択型アプローチ。

  • 一般社団法人Earth Companyの調査によると、日本のビジネスパーソンは気候変動問題に対して極めて無関心であることが判明。気候変動問題に対して行動を起こしている日本人は22%に留まり、インドネシア・シンガポール(約60%)と比較して著しく低い。「影響実感」「関心」「自己効力感」「責任感」の4つの意識指標すべてを持たない日本人は64%に達する。要因として、短期的利益重視の企業文化と低い自己効力感が指摘されており、環境対応が重視されるグローバル市場での競争力低下が懸念される。

Image Credit: 一般社団法人Earth Company

Image Credit: 一般社団法人Earth Company

Climate Integrateが発表した「日本の気候・エネルギー予算2025」レポートによると、2025年度の気候・エネルギー予算は4兆6,710億円で前年度より増加。しかし、予算配分では化石燃料が38%を占める一方、再エネは4%と少ない。経産省が予算の7割以上を占め、GX推進対策費は前年度から減額。また、GX経済移行債の発行額は年々減少しており、エネルギー転換の優先度に疑問が投げかけられている。

Image credit: Climate Integrate

Image credit: Climate Integrate

  • アル・ゴア元米副大統領は、トランプ政権が気候政策を解体し環境保護を後退させる中、活動の焦点を海外にシフトしている。トランプ大統領が再生可能エネルギー許認可の停止やUSAIDの削減、EPAの使命改訂などを行う一方、議会を迂回して既に法制化されたインフレ削減法の資金凍結を試みていることに懸念を示す。ゴア氏は2006年に設立したClimate Reality Projectを通じ、パリ、リオデジャネイロ、ナイロビなど世界各地でトレーニングを実施。米国外の市民の声を通じて政府や企業に排出削減の緊急行動を促す戦略に注力している。

  • クライメート・リアリティ・プロジェクト(The Climate Reality Project/略:CRP)・ジャパン ウェブサイト:https://climaterealityjapan.org/

【6】💵 気候金融、歴史の転換点に立つ [4/2 Bloomberg Green]

Bloomberg Green
@climate
Wall Street is scrambling to ditch the green transition for short-term gain. But in the long run, the reversal could prove to be expensive trib.al/Uk0JeHM
Climate Finance Finds Itself at a Pivotal Moment in History Wall Street is scrambling to ditch the green transition for trib.al
2025/04/02 19:02
5Retweet 9Likes
  • トランプ再選後の2024年末、ゴールドマン・サックスを皮切りに米国の主要銀行が「ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から相次いで脱退した。この動きは、気候科学に批判的な新政権への配慮だけでなく、「2050年ネットゼロ」という目標を「ますます非現実的」と見なす銀行内部の不満も反映している。実際、科学者たちは地球が1.5℃の気温上昇を超える20年間の期間に入っていると結論づけ、国連は今後のコースでは3℃(パリ協定目標の2倍)の温暖化を警告している。この現実が銀行にとって複雑な選択を迫っている。銀行は厄介なジレンマに直面しており、脱炭素戦略を追求すれば短期的に収益減少とバランスシート縮小のリスクがある一方、気候戦略を放棄すれば将来の政策転換時に座礁資産を抱える危険性もある。あるアナリストによれば、現在の政治環境下では「化石燃料から撤退する」と宣言する銀行CEOは収益性の低下により翌日に解雇されるだろうとのこと。この動きに呼応して、米国のグリーンボンド市場も急激に縮小し、2025年の発行は過去10年で最低水準となっている。かつてAppleやWalmartなども発行していたが、共和党議員からの批判を避けるため企業は環境関連債券から撤退している。

  • ブラックロックCEOラリー・フィンクの2025年年次書簡は、投資、プライベート市場、退職金に焦点を当てる一方、かつて重視していたESG投資や多様性の取り組みには一切触れなかった。トランプ政権下で金融業界全体がサステナビリティや多様性政策から撤退する流れを象徴し、「企業サステナビリティの終焉」を印象づけている。

The Atlantic
@TheAtlantic
Trump’s “Drill, baby, drill” mantra extends beyond fossil fuels. His administration is embracing geothermal energy, which is primed for a very American boom, @AlexCKaufman reports: theatlantic.com/science/archiv…
The Hottest Thing in Clean Energy Little of America’s energy comes from geothermal sources, bu www.theatlantic.com
2025/04/04 22:30
6Retweet 11Likes
  • 米国では地熱エネルギーは現在電力の0.5%未満しか供給していないが、大きな成長可能性を秘めている。トランプ政権は太陽光や風力に懐疑的ながらも地熱を支持。石油・ガス産業のインフラとフラッキング技術を活用し、2030年代初頭までにデータセンターの新規電力需要の64%を地熱でまかなえる可能性がある。24時間稼働可能な再生可能エネルギーとして、アメリカ独自のクリーンエネルギーブームを牽引する見込み。

  • エネルギーセクター(特に原子力・核融合)が四半期最大の取引を占め、データセンターの需要増加と中国への競争優位性が追い風に

  • VC取引数は減少したが、プロジェクトファイナンスは増加、特にエネルギー分野では後期ステージの平均取引規模が健全に維持

  • 企業買収が主な出口戦略となり、大企業が価値ある資産を低コストで獲得する傾向が強まる

  • Northvolt(バッテリー)やPlenty(垂直農業)など著名企業の破産が前年からの下降トレンドを継続

  • 気候関連ファンドは310億ドル以上が組成され、EQTとRidgewood。日本の大手企業によるCVCファンド 丸の内イノベーションパートナーズ株式会社Hitachi Ventures の存在感も

Image credit: CTVC by Sightline Climate

Image credit: CTVC by Sightline Climate

【10】5月開催予定のイベントご案内

【開催日 5/7&8 】日本最大級のディープテックカンファレンス「TECHNIUM Global Conference 2025開催決定。産官学のトッププレイヤーが結集し、日本発ディープテックを世界のイノベーションの中心へ [2/14 プレスリリース]

  • ディープテック分野のスタートアップ起業家、投資家、専門家が集うカンファレンスとして注目です。招待制とのことですが、登壇者も公開されていてトレンドを伺うことができます。

【開催日 5/8〜10 】SusHi Tech Tokyo 2025

  • 脱炭素、気候テック、エネルギー分野のセッション登壇者も多数。詳細が順次公開されています。

  • 🎟️参加希望でチケット購入がまだの方はニュースレター読者の方限定で80%ディスカウントのコードをお渡しすることが可能です。どうぞお気軽にご連絡ください🙂。

***
  • ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、XなどSNSで「いいね」や「シェア」をお願いします。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです。

  • *気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋🌸

市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

▶Twitter: @SocialCompany / BlueSky: socialcompany.bsky.social

▶📬Climate Curation配信プラットフォーム

無料で「クライメートキュレーション|Climate Curation」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
「対岸」でなくなった山火事と気候変動対策 / 【新刊書】これからの地球...
誰でも
温暖化の逆説:気温過去最高で記録的大雪・三菱UFJ脱炭素枠組み脱退・再...
誰でも
地方から広がる共創型脱炭素:中小企業11社が挑む炭素クレジット共同購入...
誰でも
三井住友FG、NZBA脱退へ:トランプ政権下で加速する金融機関の潮流変...
誰でも
自分ごと化する気候変動対策:マイクロGXからネットゼロ・ダッドまで
誰でも
気候変動の現在地2025:政策・技術・投資 - グローバルトレンドと日...
誰でも
深まる政策ギャップと新たな潮流~仏メディアの挑戦、核融合計画前倒し、『...
誰でも
観測史上最も暑い1月、相次ぐNDC目標提出延期、揺れる洋上風力